第57話 夜空の下で
「ふぅ……」
ぎしっとふかふかな自室のベッドに飛び込んだ。
0時前、ヒロムの歓迎会が終わり、各ギルドメンバーは自分の部屋に戻っていた。
あー疲れた。目蓋が重いー体が動かないー意識が遠のくーこのまま眠ってしまおう。
コンコン
…………眠いから無視で。
「あれ? マスター寝てる?」
扉で混むっているがこの声はリーシャか……悪いけど明日にしてくれ俺は眠いんだ。
そんな思いも虚しく、ガチャと扉を開けた音がした。
……開けるならコンコンする必要ないのでは?
まぁいいや、このまま狸寝入りさせて貰うよ。
「……ふぅ」
「あひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
耳に息を吹きかけられ体がビビクッと跳ねた!
か、体がっめっちゃゾクゾクする。そのせいで一気に目が覚める。
「あははっ。なんか魚みたい」
「あははじゃないんだけど」
眠たいところを起こされて少しモヤモヤしている。
だからそっぽを向くし、言い方も少し冷たい感じになってしまった。
「……ごめんね。かまって欲しくて」
そんな俺の態度に袖を掴み、しおらしく謝ってくるリーシャ。
まぁ、俺の態度も良くはなかったかな……
「まぁ……えと、何か用か?」
そういうとリーシャは心底安心したように微笑む。
「ん、これ、一緒に飲もうよ」
リーシャはドヤ顔でそう言いながら酒瓶を見せびらかす。
おお、この酒瓶は高級シュワサワーじゃないか!?
「それ滅多に手に入らないやつだろ? どうしたんだよ」
「前に貰った。なんか。」
リーシャはクエストに行く度に必ず誰かに貢がれるように何かをもらって帰ってくるらしい。
この高級シュワサワーもその一つなのだろうか?
まぁ、せっかくなので頂く事にしよう。
あ、そうだ。
「せっかくだからテラスで飲むか」
「いいね」
せっせと机をテラスに運ぶ。次に椅子を2つ運ぼうとしたが待ってと止められた。
「こっちにしようよ」
「長ソファーか? まぁ別にいいけど」
リーシャと一緒に長ソファーをテラスに運び、酒瓶とグラスを机の上に置く。
「よいしょ」
長ソファーに腰掛けると目の前には満点の星と綺麗な満月が浮かんでいた。
おお、雰囲気出てていい感じじゃん。
「乾杯」
隣に座ったリーシャと乾杯して一口頂く。
おお、なんか高級って感じがする!! 気がする。
「今日は楽しかったね。色々とさ」
ちびちびとシュワサワーを飲みながらリーシャは言った。
その姿は月あかりに照らされ、さまに見えた。
「ん? ああ、そうだなぁ」
「宴も、私は楽しかった。たくさんの人間に囲まれてさ、和に入ってどんちゃん騒ぎして疲れて寝て。なん
か……いいね。この感じ」
そう話すリーシャの口元は嬉しそうに歪んでいた。
「それに、マスターのことも沢山知れたし……ね」
ふふ、とからかうように笑う。
思い出してみると恥しか晒していないような気がするんだが?
うわぁ、なんか恥ずかしくなってきた。
「美味しいね。これ」
「ん? シュワサワーか? 高級だから美味しいよな」
正直、俺には違いが分からないけどな!
「違うよ。美味しいのは隣にマスターが居るから」
「……よせやい」
「あ、照れてる。かわいー」
あああああ!!
顔が熱い、酒が回っている分余計に恥ずかしいっ。 ていうか、そんな恥ずかしいセリフよく言えるよな。
顔がいいせいで全然キザに見えないのはある意味ずるいと思う。
思わず顔を背けた。俺は女子か?
「……ねー」
「なんだ……ふぐっ?」
両手で顔を掴まれ、強引に振り向かされた。
いきなりだし、なんか顔近いし、いい匂いするし、心臓が飛び跳ねるようにドキドキする。
お、落ち着け……こういう時は深呼吸すればいいんだっけ? 般若心経唱えればいいんだっけ?
頭がぱっぱらぱーパニックになっている俺にリーシャは今まで見たことのないような真剣な顔をしていた。
アクアマリンの瞳があれをじっと見つめる。
思わず息を飲んだ。
「私のモノになーれー」
??? いきなりそんなことを言い出した。
「…………」
「…………」
沈黙が生まれる。
「どう?」
「いや、どうって……別に何も」
「うーん……それじゃあ、私のことを好きになーる好きになーる……なった?」
「いや、ならんけど」
「やっぱ、だめかーそっか、そっか」
パッと手を離してふーとため息をついた。そのくせその表情はとても嬉しそうで、ずっと探していたものがやっと見つけたような顔をしていた。
「ねー二人の時はさ、いっくんって呼んでいい?」
「はっ? まぁ……いいけど」
いきなり?
な、なんで?
「私の事はリーシャじゃなくてミカって呼んでよ」
「えっ!? いや、それは……」
「ダメなの?」
「いや、ダメじゃないけど……」
普通に恥ずかしいんだけども。そもそもいきなりなんで?
「ど、どうしたんだ? いきなり」
「初めてここで会った時もしかしてって思った。それで今、やっぱりって思った。いっくんはさ。私の願いを叶えてくれる唯一の存在だって」
今、そう確信したんだ。だからもっと仲良くなりたいとリーシャは言う。
「意味が分からないんだけど」
「分かるよ。いずれさ。この言葉の意味も私の気持ちも」
夜空を見ながら、リーシャは言った。
その表情は自信に満ち溢れその声はまるで確信を得ているようだった。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです!
何卒よろしくお願いいたします!