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第55話 剛の剣



「……騎士王」


緊迫した空気の中、思わず呟いた。

まずい、非常にまずいぞこれは。

前に戦った賢王よりやばいのではないだろうか?


正直、成長途中の竜王だけならこのまま押し切るとこは出来た。

しかし、突然に姿を表した騎士王……こいつはやばい。


しかもこっちは体調最悪の状態だ。

いや、万全の状態でも勝てないかもしれない。


ガチャと鎧音を鳴らしながら兜の顎を触り何やら考え込んでいる。



「名はなんという?」



重々しい声で騎士王は俺に聞いてきた。



「……双葉イツキ」



剣を構えながら答える。

思わず剣を握る力が強くなった。



「イツキ……あの賢王を倒した人間か」


騎士王はそういった瞬間、奴の殺気を感じとる。


目には見えない速さでナイフのような大きさの剣を投擲してきた。

最小限の動きで小剣を避け、本命に備える。

その瞬間、地面を削る音と共に騎士王はこちらに駆け剣を振るってきた。



「っ!!」



強烈な金属音が再び鳴り響いた。


絶妙な角度で激突した剣がお互いの威力を抑え込む。

音一つない世界で双剣は交差状態で静止した。


みしみしと身体中が悲鳴をあげている。


騎士王の剣はとてつもなく重く一撃一撃の重さが以前ドワーフの村で戦った黒鬼の比ではない。


しかし、速さの点でいうのなら黒鬼に軍配が上がるがろう。

黒鬼を流の剣とするなら騎士王は剛の剣と言える。



「ふむ今の一撃で屠るつもりだったのだが…… なるほど。賢王が討たれたのは本当の事のようだな」


騎士王は意外そうに言った。

騎士王にはまだ余力があるように見える。

こっちは結構必死なのに。



「……天道!!」


賢王が使っていた天級魔法である天道を発動させた。

天道を使うことによって魔力で生み出した斥力で騎士王を吹き飛ばそうとする。

この均衡がいつまで保てるか分からなかったからな。吹き飛ばして体制を立て直さないと。


天道の威力は衝撃波のように風を切り裂き、大地を抉った。


しかし騎士王は微動だにしなかった。



「……まじかよ」



俺やキョウヘイ、竜王でさえも吹き飛んだこの魔法が……一切効いていない。


魔力で防がれた?

いや、こいつはここにきて一度も魔力を発していない。ということは自力で耐えたのか?




「今のは……天災級の魔法。賢王が使用していた魔法だな」



拮抗した鍔迫り合いの中騎士王が感心したかのように言う。



「そうだよ。普通は吹き飛ぶんだけど。あんたはなんでそうならないんだ?」


「ふむ……私には魔力が一切ないからな。そういった類で防ぐことが出来ん。ただ踏ん張った…それだけのことだ。私の武器はこの肉体と剣のみ」



ぐっと一気に力を入れ、押し返してきた。



「っ!?」



カンという金属が叩く音とともに後ろへ吹き飛ばされかける俺に向かって怒号のような気合とともに強烈な突きを放ってきた。


兜の奥から赤い眼光がこちらを捉える。


これで屠る。


奴の剣はそう語っていた。


そう簡単に……やられるかよ!!


ギリギリで騎士王の剣の軌道を逸らす。

剣と剣が擦り合い、火花が散った。


浮いていた両足が地面についた。

右足を前に叩き付けるように踏み出し、右手で剣をなぞるように騎士王に向けて剣を振るった。


再び甲高い金属音とともに擦れ合う刀身から火花が散る。



「いけぇぇぇぇ!!」


「甘い!!」



騎士王はそう言って俺の剣を片手で掴んだ。



「なっ!?」



騎士王はもう片方の手で剣を振り下ろそうとする。

奴の剣より早く、左手で最短の動作で騎士王の顔面に掌底を放つ。



「!! やるな!」


騎士王は自身の剣より、俺の拳の方が速いことをすぐさま察知し、顔を逸らした。

その瞬間、わずかだが騎士王の剣の軌道が逸れ、剣を振りおろす速さが落ちた。

ほんの少しだったが、なんとか騎士王の剣をかわす。

地面に衝突し深い孔を穿った。


一旦、距離を離し、再び剣を構える。

騎士王はそんな俺を無言で見つめていた。



「見事だ」



騎士王からの賞賛だった。

嘘偽りのない純粋の言葉。

だから戸惑いが生まれた。



「真に脅威となるのはどうやら剣聖でも、勇者でも、第一王女でもなく双葉イツキ貴様だったのだな。ここは退かせていただこう」



「……ここで俺を仕留めた方がいいんじゃないのか?」


「それは得策ではない。私がここにきたのは竜王の救出のためだ。今本気を出せば竜王も貴様も……私もただでは済まないだろう」



「………………」



それにと騎士王は言葉を続ける。



「双葉イツキは万全の状態で正々堂々……真剣勝負で決着をつけたい。そう心から思わせる男だったということだ」


「……気づいていたのか」


「一度刃を交わせば分かる事。少なくとも今は全力を出せる状態ではない」


「………………」



「また会おう双葉イツキ」



竜王は咆哮とともに朧げながら飛び去っていき、騎士王は大地を揺らしながら跳躍し、どこか姿を消した。






「……ふぅ。大分マシになったな」



二つの王が姿を消してから数十分が経ち心臓の痛みも落ち着き出した。


「っこほ、こほ」


そう思ったら今度は咳が出始める。

手で口を押さえ、咳が収まった後、手にひらについたものを見る。


「……」


(……マスター大丈夫?)


(問題ない)


(マスターがそういうならこれ以上は突っ込まないよ)


(……助かる)


(で、竜王を撃退出来たのはいいんだけど。こっからどうするの? こっからネルトまで距離あるけど歩きで帰るの?)


(ふっ、それについては心配ご無用だ! なんたって俺にはテレポートのスキルがあるからな!!)


(あぁ、あのネタスキルのこと?)


(ネタじゃないし!!)


(いや、テレポートなんて格好よく言ったけど性能的にはネタでしょー)



ユニークスキル

逃げる



効果、自分の設定した拠点に逃げる(テレポート)する事が出来る。クエスト中に逃げたい時におススメ。


実はこのスキル、何回かは使ったことがある。


以前賢王がネルトを襲ってきた時に勇者の村からネルトに向かう時もこのスキルを使っていた。

難点は登録先にしかテレポート出来ないことと行ったことがないところは登録出来ないところだ。



(うーん、この説明文 ネタ要素の塊だね!!)


(………そうだね)



バエルの言葉に何も言い返えせませんでした。

俺は無言でユニークスキル逃げるを発動させた。


目の前の景色がアニメやドラマの場面変換のように切り替えられる。









「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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