第52話 トロール
遺跡のような建物が沢山ある場所に着いた。
情報によると遺跡の入り口付近に出没するということだったが……
「あ、ようやく遺跡につきましたね」
パァと明るい表情でヒロムは躊躇いもなく遺跡に足を踏み入れようとした。
「待て」
「え?」
それを俺は止める。
どうしてと疑問を浮かんでいるヒロムにいいかと指をピンと立てて語り始める。
「そしてこういう所は決まって何かしらのトラップが仕掛けられている。」
「トラップ?」
「こういう建物には古代からある罠がいまだに機能している場合がある。例えば落とし穴とかスイッチを踏んだら矢が飛んできたりとかな。だから油断してると……」
カチッ
あっ……なんか踏ん
ザクッ
「こうなるからっっっ!!」
床の隙間から生えてきた図太い針が俺の足を貫通した。
い、いてぇ!! 超いてぇ!! いかん、痛すぎて涙が出てきたっ。
(あーあ、これは痛そう。血めっちゃ出てるじゃん)
「おーこれはざっくりといったね」
「イツキさんー!? だ、大丈夫ですか!?」
「だだ大丈ぶい、へへへ……」
「顔色が悪くなってますよ!?」
心配してくれているエレナに笑ってピースをしたが、逆効果だったらしい。
いかん、なんか頭がぐわんぐわんと回っている。視界が揺れる〜インフルエンザにかかった時と似てるな。あはは。
(これは針に毒が塗ってあるねー)
「ひとまず、安全なところにっ!!」
ヒロムに担がれて建物の裏に移動し、建物にもたれかかる様に座った。
めちゃくちゃ痛いし、毒状態になって苦しいし、なんでこんな目に合わなきゃならないんだっ!!
この遺跡建てた奴死ね!! それで俺に謝れ!! 土下座しろ!! あ、ダメだ。なんだか眠たくなってきた。
これ、目閉じたら2度と起きない奴じゃん。
「あ、あったあった。はい。これ解毒薬。あーんして」
「あ、あーん」
朦朧とした意識の中リーシャに解毒薬を飲ませて貰う
「ふふ、よく出来ました」
(……トラップにかかるのも悪い事ばかりじゃないのでは?)
(おい)
「それにしても、マスターのアイテムポーチ回復アイテムが沢山ありますね。解毒薬や状態異常を回復するアイテムまで……」
感心するようにヒロムが俺のアイテムポーチの中身を見ている。
「冒険者たるもの様々なイレギュラーを予測しておくものなんだ。冒険に一番大切なものは力やレベルじゃなくて念入りな準備なのさ。」
「なるほど……流石です! マスター!!」
(なんかさっきの失態を上手いこと誤魔化してない?)
(えっ!? そ、そうかなぁ!?)
「……さて、身体も動ける様になったし探索を再開するか。みんなすまなかったな、世話をかけた。」
手足をうごかして感覚を確かめる。
うん、問題はないみたいだ。
「さっきは油断してしまったが、二度はない。ここからは……本気で行かせてもらう。さぁ!! 着いて来たまえ!!」
(本気とは?)
リーシャは楽しそうに微笑み、ヒロムとエレナはあはは……と苦笑い浮かべながら立ち上がった。
一歩前に足を出した瞬間カチッという音と共に嫌な感触が足裏に伝わってきた。
あ。落とし穴だぁ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ま、マスター!?」
ヒロムの悲鳴と共に俺は奈落の底へと落ちていく。
(速攻落とし穴にかかるとか最早ネタかな?)
(いや! そんなこと言ってないでどうにかしてくれー!!)
(大丈夫、なんとかなるさ。多分)
(ああああああああああああああ!!)
「へごっ!?」
床に叩きつけられ身体中に衝撃と激痛が走る。
(いだだだだだ!! 絶対肋骨逝った!! バエル助けてくれぇ!!)
(……そんなに身体をクネクネ出来てるんだから大丈夫でしょ)
(少しくらい心配してくれても良くない?)
塩対応されたことにショックを受けながらも身体の状態を確認し辺りを見回す。
壁の所々に火の灯がついているが気休め程度で暗くてあまりを視認で把握出来ない。
暗く、密閉された空間……まずい、ここはダメだ。嫌な思い出が蘇る。
と、とりあえず、灯りを頼りに進むしかない。こんなところさっさと抜け出そう。
そう思い、歩き出した瞬間コツと足先に何か当たった。
ん?
気になったので当たった何かを拾って灯りの近くに移動し、何かを確認する。
(ば、ば、ば、ば、バエルさん、これってまさか……)
(頭蓋骨ですなぁ)
(ヘア!!!?)
思わず放り投げてしまい、頭蓋骨は音を鳴らし、暗闇の中に消えてしまった。
(ず、ずずずずずっ!?)
(大丈夫? 生まれたての子鹿並みに震えてるけど……)
(大丈夫なわけないだろ!? ず、頭蓋骨なんだぞ!?)
や、ややややばいやばい。逆にふ、なんだ頭蓋骨かと済ませる方がイかれてると思うんだけど!?
「おーい。生きてるー?」
小鹿のように震えていたら天からリーシャの声が聞こえた。
その声はひどく弱っていた心にとても染みた。
見上げると灯りを持ち緩やかに落ちてくるリーシャ、ヒロム、エレナの姿があった。
ま、まさか。みんなっ俺を心配して来てくれたのか!?
うっ、うー!! あったけぇ! レギス・チェラムはあったけぇよ!!
「あ、どうやら大丈夫そうですね」
ほっとした表情でエレナが近づいてくる。
「まぁな。自分、レギス・チェラムのギルドマスターなんで」
なんて、さっきまでびびっていたのに見栄を張る。
「はいはい。そうですね。すごいですね」
「おい待てぇ。なんだその子供をあやす様な感じは」
エレナの返事に突っかかっているとリーシャにねぇねぇと後ろから肩を叩かれる。
「マスターも安否の確認できたし、進もっか」
リーシャの一言に俺たちは頷き、先に進んだ。
だた真っ直ぐに続く一本道を同じ景色が淡々と流れる中でひたすらに突き進む。
「……あの、イツキさん」
そんな中エレナが俺に話しかけてきた。
「ん? なんだい? エレナちゃん」
「どうしてさっきからずっと手を繋いでくるんですか? 手汗がすごいんですけど」
「えっ!? これはっあれだよ! ここ暗いからさぁ! 怖くないかな〜? って思って!! 親切的な!?」
「いや、灯りもありますし、大丈夫ですよ。だから離してもー」
「その手ぇ離したら殺すで!!」
「えぇ……」
エレナが俺の必死な叫びに困惑しているとリーシャが俺に手を差し伸べて来た。
「繋いであげよっか?」
「え?」
「い、いやいや、ここで手を繋いでしまったら俺が怖がってるみたいになるじゃん? それは恥ずかしいというか、誤解がね? 起きちゃうだろ? 気持ちだけ受け取っておくよ」
「ふふ、めっちゃ強く握ってくるじゃん。手」
どうやら体は正直だったようだった。
右手にエレナ左手にリーシャ、この状況……両手に花だな! ははっ!!
……はぁ、あまりの情けなさに死にたくなってきたよ。
(震える両手を女の子2に握ってもらう……う〜ん。我がマスターながら情けなさすぎる。まさに生き恥)
(やめてくれ、事実が一番ささるんだよ)
「あ、出口が見えてきましたよ!」
ヒロムが指を指す先には光が差し込んでいた。
「よっしゃ! 出口までダッシュじゃオラ!」
握った両手を離し、お外目がけて走り出した。
暗い、暗い地下遺跡の細い一本道を抜け、外を出た。
青い空、白い、眩しい太陽が俺たちを照らした。
目の前にある長い階段を登ると大きな円状の広場に着いた。
(なんか、ボスが出てきそうな所だな笑)
(知ってる? それってフラグっていうんだよ)
バエルが何やら不吉なことを言っているが、ここが遺跡の最奥層になるのだろうか。
「ここがこの遺跡のゴールっぽいね。構造的にあの落とし穴はここにくるための唯一の道だったのかも」
「え? ということはあのまま普通に進んでも意味がなかったということですか?」
ヒロムの言葉にうんと頷き返すリーシャさん。
「マスターお手柄だね」
「ふ、計画通り……」
「……本当ですか? あいた!? 何するんですか!? 頭を叩くなんて! 無礼ですよ!?」
「うっさいわ!! お前の方が無礼じゃボケェ!」
ガミガミとエレナといがみ合いをしていると
「ほう……ここに人間が来たのは始めてだな」
低い、男の声が聞こえた。
ローブを纏い、肌は色白く、鼻は無理やり切り込みを入れたように潰れ、瞳はまるで切り裂いているように鋭い。
クエスト情報と完全に一致している。
今回の討伐対象であるトロールがそこに立っていた。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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