第48話 アイスを食べる事になりました!
「あなたはレギス・チェラムの方なんですか?」
人目のつかない路地裏を使い、レギス・チェラムを目指し歩いているとキャメロッツが聞いてきた。
「ああーまぁそんな感じかなー」
「やっぱり! あの、レギス・チェラムのマスターって本当に実在されるのですか?」
実在も何も俺がレギス・チェラムのマスターなんだけど。
ここで俺がそうだよと言って仕舞えばいいのだが、なんでそんなことを聞くのだろう。
「まぁ、一応……」
意図が分からないのでここは黙っておくことにした。
「本当ですか!?」
大声で食い気味に聞いてきたキャメロッツにびっくりしながらおおうと頷く。
びっくりしすぎて体がびくって飛び跳ねってしまった。
「な、なんだよ。やけに食い気味じゃないか」
「それはそうですよ。この世界に5人しかいないグランドの名を冠するマスターの一人であるにも関わらず、影も形も掴めない謎の人物。謎すぎて伝説にもなっているんですよ?」
で、伝説!? なんかすごいことになってるじゃん。
「あと、グランドって何?」
なんか前にヒロムが同じことを言っていた気がする。
「5大ギルドのギルドマスターの事です。彼らはこれまでの偉業を讃えられ、国王にグランドの称号を授けられます。グランドマスターとは世界中に存在している冒険者たちの頂点でもあり、勇者パーティに並ぶこの世界の最高戦力です」
「まじかよ……」
「まじです。なのでレギス・チェラムのグランドマスターを名乗る偽物が現れるくらいなんです」
「はえー」
俺の偽物……めっちゃ有名人になってるじゃん。
正直、悪い気はしないねぇ。
むしろ優越感がふつふつと湧き出てくるんだけど!!
(なぁ、なぁ! バエル! やばくない!? 俺ってば伝説になっちまったよ! それに最高戦力だってさ! めっちゃ有名なんですけどっ!!)
(本物はこんなちゃらんぽらんなのにね……)
(君さぁ。仮にも僕は君のご主人様なんだよ? 失礼過ぎん?)
「あと、キャメロッツはやめて下さい。私のことはエレナでいいです」
「じゃあエレナ、この先はどうしても大通りの道じゃないとレギス・チェナムには着かないから周りに気をつけて行くぞ」
「わかりました」
コクリとエレナは頷き、路地裏から大通りの道にでた。
ここまでくればレギス・チェラムまでは2〜3分で着くだろう。
俺が前に出てエレナはそれを追う形で歩いていると。
「……!!」
後ろから袖をくいくいと引っ張られた。
「……ん? なんだ?」
「あのっ! あれはなんでしょうか?」
エレナが指さした先には最近できたシャーベット屋さんだった。
「ああ、シャーベットって言ってな。なんと言ったらいいのか、あれだ氷菓子みたいなもんだ」
「氷菓子……」
目を輝かせながらじっとシャーベット屋さんを見つめているエレナは無邪気な子供のようだ。
いや、子供なんだけども。
やっぱり第一王女……って感じがしないんだよなぁ。こいつ。
「ギルドもあと少しだし、寄ってくか? ここはお兄ちゃんが奢ってあげよう」
「えっ、いいんですか?」
再び袖をくいくいと引っ張られる。
「あ……いや、でも」
「はいはい見つからないうちにさっさと買ってしまうぞ。GO! GO!!」
「えっ……ちょ、ちょっと!」
(どうしたの? いきなり優しい人ムーブかまして。金髪碧眼美少女を餌付けするつもりなの?)
(そんなんじゃないやい!! なんというか、純粋に彼女の喜ぶ顔が見たかっただけさ)
(マスターが言うと下心があるように聞こえるね)
(おい)
シャーベットを選び、お金を放って近くにあるベンチに横並びに座る。
エレナは嬉しそうに鼻歌を歌いながらシャーベットを見つめていた。
そんな姿にシャーベット1つで大袈裟だなとついつい微笑んでしまう。
「それじゃ、食べようか」
「は、はいっ」
エレナは興奮した様子でシャーベットを掬って口元に運んだ。
「わ、わ、わ!」
目を白黒させ、顔を輝かせる。
「すごい! 冷たいです! 甘いですよ! ぶどうの味がします!」
「それはよかった」
えへへと彼女ははにかむように微笑み、ぱくぱくとぶどうシャーベットを食べる。
「貴方のは何のしゃーべっとなんですか?」
「俺のは桃だな」
「へー……」
そういつつエレナは俺の桃シャーベトをじっと見つめている。
いや、分かり易すぎ。
「……一口だけだぞ」
「!! あ、そ、それじゃあ私もも一口どうぞ!」
はいと言いながらシャーベットが乗ったスプーンを俺の口元まで差し出した。
いや、これはちょっと……恥ずかしいというか、間接キスにもなるしあまりよくないと思うんですが。
「どうしました?」
戸惑っている俺を不思議そうに見るエレナ。
あれ、俺が意識しすぎなんだろうか?
そ、そうだよな。たかがあーんと間接キスだ。ガキじゃあるまいし気にする方がおかしい……のか?
「あーいや。いただこうかな」
心を落ち着かせ、エレナのスプーンに向かって顔を近づける。
あむとエレナのぶどうシャーベットを頂く。なんだろう……色々意識してしまってイマイチ味に集中できない。
「それじゃあ、今度は私ですね。あーん」
エレナはそう言いながら口を開けてぐいっと自身の顔を近づけて来た。
「…………」
スプーンをエレナの口元まで運ぶとつめたっと嬉しそうに桃のシャーベットを食べた。
なんだか、雛鳥に餌をやっている気分になる。
「これはどうやって作ってるのでしょうか?」
「ああ? それはあれだよ。果実を魔法でいい感じに凍らせるんだよ」
この世界にはケーキなど様々は洋菓子があるがアイスなどの氷菓子は存在していなかった。
このシャーベットも1週間前にソウスケに協力してもらいながら作ったのだ。
まぁ、氷属性の初級魔法であるブリザードで果実を凍らせただけなんだけども。
「今度、王城で作って貰おうかな? それか王都に輸入してみるのもいいかも……」
真剣にシャーベットを見つめぶつぶつと何やら考え込んでいる。
シャーベットを食べ終えて二人同時にベンチから立ち上がる。
「さて、そろそろ行きますか」
「はい!」
俺とエレナはレギス・チェラムに向けて再び歩き出した。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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