第46話 第一王女に出会いました!
「うーん!! 今日も一日がんばるぞい!!」
ギルドマスターイツキの朝は早い。
バルコニーに出て、朝日を浴びながら身体をグッと伸ばした。
深く、深く深呼吸をする。なんだか空気の新鮮さの度合いが違うな。
とても清々しい気持ちになる。
「ふぅ〜」
「およ、どうしたのさ? いつもなら昼前まで寝ているのにまだ7時だよ?」
気持ちよく息を吐いていると、バエルが不思議そうに実体化してベッドの上で胡座をかいていた。
ふわぁ〜と眠そうに欠伸までかいている。
「おお、バエルか! 今日はちと外に出ようかなって思ってさ!!」
「え、どうしたの? あれなの? 一応冒険者の様に振舞って頑張ってます! アピール的な事をしに行くの? 無駄だと思うけど。」
「ははは、お前まじで張っ倒すぞ。」
なんだこのロリ悪魔、マスターに対して失礼過ぎんか? 賢王の時は珍しくデレていた癖に。
「ほら、俺って寝たきりだったから筋肉が落ちちゃっただろ? だから散歩でもしてリハビリでもしようかなと」
昨日、ヒロムとリーシャの3人で武具屋に行った時も少し歩いただけなのにしんどかったからなぁ。これを期に体力を取り戻さなくては。
「一人で大丈夫? 誰かに連れて行った方がよくない? 介護必要でしょ」
「いや、お前、おじいちゃんじゃないんだからさ……何かあれば助けてぇ〜バエル〜するからお前が俺を介護するんだよ」
「えっ、なにそれめんどくさ」
「うるせぇ! 僕はっ! お前のマスターなんだぞっ!」
「な、なんだこいつ」
困惑と呆れが混ざった様な表情をしながらバエルは俺の身体の中に戻って行った。
なんだかんだで一緒に来てくれるようだ。
部屋を出てると賑やかな声が聞こえてくる。
そんないつも通りの賑やかさに安心感を抱きながら大階段を降りる。
「えっ? イツキさん!?」
降っている途中、こちらに気づいたレイアが慌てながらこちらに走ってきた。
「お、レイア。おはよー」
「あ、おはよー、ど、どうしたの? こんな時間に起きてくるなんて珍しいね」
レイアはそう言いながら寄り添うように俺の体を支えてくれる。
「ああ、リハビリにちょっと外に出て散歩でもしようかなと」
「えっ、なら私も一緒に行くよ。イツキさん一人じゃ心配だしっ」
ぎゅっとレイアの掴む力が強まった。
心配してくれているレイアに甘えたくなるがこの時間帯はみんなクエストを受けにくる時間だからなぁ。
「気持ちはありがたいけど、この時間はレイア忙しいだろ? 昨日は武具屋までちゃんと歩けたし、大丈夫だよ。心配してくれてありがとな」
「……確かにそうだけど、でも昨日はリーシャさんとヒロム君がいたから安心してたし……まだ一人で歩くのは心配だよ。あ、そうだお昼休みの間だったら私も」
「いやいや、それこそ悪いよ。大丈夫だって。ほんと、すぐ帰ってくるから!」
「むー。……わかった。気をつけてね? 出口までは支えるから」
あんまり納得していなさそうな顔をしながら出口までついて来てくれた。
心配のされすぎで介護されている人みたいになってるよ。
「あ、財布は持った?」
「いや、散歩するだけだし今回は持って行かない」
「そっか。うん、寄り道出来ないからそっちの方がいいかもね。いってらっしゃい。あ、そうだ! 知らない人について行っちゃダメだよー!」
「わかっとるわい!!」
小学生にいうような台詞を言われ思わず突っ込んでしまった。
(全く! 子供じゃないんだからさ!)
(まぁまぁ、マスターが心配だから言ってくれてるんだよ。レイアちゃんの気持ちも分からなくはないし)
(え? そうなのか?)
バエルも俺のこと割と心配してくれている節があるもんな。そう思うと何だか少し照れ臭くなってくる。
(マスターってそこらへんに落ちてるものとか食べて泡吹きながらぶっ倒れそうな危うさがあるからね)
(ねぇ、それって俺のことディスってない? ねぇ?)
そんな会話をしながらネルトを目的地もなくゆっくりと歩いていく。
うーん。やっぱり少し歩いただけでもなんか疲れるな。
5分ほど歩き、大きな噴水がある広場へと行き着いた。
「……ふぅ」
ひとまず休憩のため噴水に座りぼーと辺りを見渡す。
(少し歩いただけなのに息が切れてるね)
(それな、これは思った以上に体が鈍ってるのかも)
気のせいか、心臓が少し痛いような……この感覚はまるで。
嫌な予感を振り払うように空を見上げた。
青い空はいつ見ても綺麗で……前の世界にいたときのことを思い出す。
(マスターってさぁ……空見ながらぼーとするの好きだよね)
(ああ、なんかさ……空を見ているとー)
(あ、なんか面白くない上に長くなりそうだからいいや)
(ひどい……)
そう思いながら周りを見渡すと子供やおじいさん、冒険者の格好をした男女、さまざまな人が朝から歩いている。
この人たちは今から何をするんだろう?
何かの用事の最中なのかな?
今から仕事か?
などそんなどうでもいいことを考えているとふと思った
そういえば、前までは他人の目線とかが怖かったのに、今は別にそんなことないな。
あの時……勇者の村に初めて訪れた時、リリスが他人の目線が怖くてが震えていた俺の手を握ってくれたあの時からか?
……俺も少しは変われたのかな。
(何一人でニヤニヤしてるの? 気持ち悪いよ?)
(どうしてそんなことを言うの?)
バエルと話していたら、周りからわざざわと人の声が聞こえ始めた。
「何かあったのかしら?」
「どうしてーが?」
「どうやら–らしいぞ」
「そ、それは–」
何かあったのだろうか?
まぁいい。そろそろ休憩も終わりにして歩き出すか。
立ち上がり、再びふらふら〜と歩いていると後ろからドンと衝撃が走った。
「ふぐっ」
誰かにぶつかられたのかコケそうになるのをなんとか踏ん張る。
あっぶねマジでこけかけたんですけど!
(誰だよ! しばき倒すぞこの糞ガキがー)
「す、すいませんっ」
か細く、穏やかで優しさに溢れた声がした。
その声に思わず振り返るとフードを被った女の子が深々と、頭を下げて、顔を上げた。
フードで顔は隠れてはいるが僅かながらでもわかる。とても顔が整っている。そして色白なせいかどこか儚げな印象がある。
幼いな……13、12歳くらいだろうか?
「大丈夫だよ。君こそ怪我はないかな?」
(マスター……)
(いや? 向こうも謝ってるし? それにまだ中学生くらいの女の子に怒鳴り散らすような男ではないんで)
なんでだろう……バエルにすごく冷たい目で見られているような気がする。
「あ、えっと、大丈夫……です。本当にすいませんでした! それでっ!?」
ローブ少女はいきなり顔を強張らせる。
ガシッ
「へ?」
ローブ少女に手を掴まれ、建物の狭い隙間道へと駆けながら連れ込まれた。
??? 何が起こってるんだ?
ま、まさか。恐喝? やべぇよ。今日そんなにお金持って来てないよ。ジャンプしろとか言われてしまうのだろうか。
「あの、この街の人ですよね?」
「え、まぁそうですけど」
お? どうやら恐喝とか、そういった系統のものではないようだな……よ、よかったぁ。
女の子の質問を聞いて胸を撫で下ろした。
「お願いします。私を……レギス・チェラムまで案内してくれないでしょうか? できれば人が少ない道で」
「……へ?」
またもや予想外の言葉を飛び込んできて呆気に取られてしまった。
案内? 別にこんなところでお願いしなくてもいいんじゃあないのか?
それになんで人が少ない道に限定してくるんだ?
人に見られたら何かまずいことでもあるのだろうか?
さまざまな疑問が次々と溢れてくる。
すまん、俺の鳥頭じゃあこんな急展開ついて来れないよぉ。
「報酬はきちんとお支払いします。どうですか?」
「いや、待て待て。その前にだな。お前は一体何者だ? フードかぶって顔も知らない奴に事情も聞かされないまま案内なんて出来ないぞ」
「む……それは確かにそうですね」
少女はそう言いながら顎に手を当てた。
しばらく一点を見つめて思考し、分かりましたとフードを外す。
現れたのはサファイヤのような美しい碧眼に綺麗に煌めく金色のセミロングの髪、そして儚げな雰囲気を纏った正統派美少女であった。
「私は、キャメロット王国第一王女、エレナ・フォン・キャメロットです」
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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