第45話 武器を買いました!
「あ、そっちじゃないこっちだって」
「え、そうだったけ」
こういうふうに道を間違えるリーシャに突っ込みを入れながらリーシャを先頭にして俺とヒロムは街を歩いていた。
ざわざわと人の声が聞こえる。周りを見ると老若男女リーシャに見惚れていた。
他の人たちにはどう写ってるのだろうか?
美少女と使いパシリAとBとかかな。
なんか自分で考えて悲しくなってきたぞ。
(うーん。この全ての人を魅了するオーラ俺にもあればなぁ)
(持っていてもプラマイで0になるだけだよ)
(ひどい)
「あ、あの……僕たちはどこに向かっているのでしょうか?」
ヒロムがおずおずといった感じで質問してきた。
「え、あれだよ。あれ」
そんなヒロムにリーシャは答えになっていない返答をする。
いや、あれじゃわかるわけないですやん。
「あ、あれですか?」
ヒロムはえっ?とリーシャの言葉にますます困惑している。
でしょうね。
「武具屋だろ。多分」
見かねて横槍を入れる形で俺が答えた。
「あ、それだ」
「あ、なるほど……」
ヒロムは納得した顔をした後、何か言いたげな顔をしながら俺の顔を見つめてきた。
「なんじゃい。何か聞きたいことでもあるんかい?」
「いえ……リーシャさんは何も言っていなかったのにどうして武具屋ってわかったのかなって」
「え、なんでって? う〜ん。わからん。強いて言うとなんとなくかな?」
確かに考えてみるとなんでわかったんだろう? 直感?
そこは自分でもよくわからない。
「ふふ、息、合ってるから」
ヒロムとの話を聞いてなんだか嬉しそうにリーシャは言った。
「ちょっとやめてくれよ。まるで俺とリーシャが似た者同士みたいじゃないか。俺はリーシャほどポンコツじゃありませーん」
「えー」
声は平坦だったが顔は不服そうに横腹を突っついてくる。
地味に痛いからやめて欲しんだけど。
結局武具屋に着くまでリーシャの突っつき攻撃は止まらなかった。
武具屋の中に入ると騎士のような鎧、バトルアックス、槍、ロングソード、杖など様々な武器や防具が飾られていた。
その光景は生前ゲームで見ていたそのものだった。
うん。
何度きてもテンションが上がるな!!
ワックワックが止まらねぇ!!
しょうがないね!!
男の子なんだもの!
「ど、どれがいいんでしょうか!?」
キョロキョロと武器を見渡すヒロムの顔はなんだか輝いて見えた。
楽しそうだなぁ。ふふ、わかるぞ。職業が決まる時もそうだけど、武器を選ぶこの瞬間もまた至高のひと時なんやぁ。
「バッカ、ヒロムバッカ、魔法剣士を言えば剣しかないだろうが!」
若干うざいテンションでロングソードを手に取り、興奮しながらヒロムに手渡す。
「う、剣て結構重いんですねっ」
ロングソードを両手で持ちながら言った。
持っているだけでやっとだと言わんばかりに両腕……いや、全身がプルプルしている。
この様子だと剣を振るうのは夢のまた夢なんじゃないか?
「うーんこれは一体どうすれば……リーシャはどう思う?」
「んーあ、これいいね」
リーシャが飾られていた何かを手に取り「はい」とヒロムに渡した。
これは……
「ダガーですか?」
「なるほど、ヒロムは力があまり無いからな。リーチも魔法で補えるしいいんじゃないか?」
遠距離、中距離が魔法、超至近距離になるとダガーで対応する。
うん。わかりやすくていい感じじゃん?
「これなら僕でも使えそうです」
軽快そうにダガーを振るヒロムを見て改めてこれが正解だと思った。
「やるじゃん」
「いえーい」
またどや顔でピースとしてくるリーシャさん。
認めたくないが、かわいい。
「それじゃあこれにします」
「あ、待って」
ポケットから財布を取り出そうとするヒロムをリーシャが止めた。
「奢るから。マスターと」
いや、俺もかい。
「教育係だから……ね」
ちらっとこちらを見ながら微笑むリーシャさん。
マスターもヒロムの教育係でしょ? ということなのだろう。
やれやれしょうがねぇなぁとため息をつきながら頷いた。
「どうせだったらこの店の一番強いダガーを買おうぜ」
「いいね。グー」
「えっ!? そ、そんな!? い、いいんですか? 買っていただくだけでも悪いのに……」
「気にするな。教育者としてギルド入団祝いだ」
「こ、これでございましゅー」
武具屋のお爺さんが杖をつきながら装飾の付いた箱を持ってきた。
そこにはシンプルな作りだが、その刃は美しく光り輝いていた。
お、これいいね。
「おお、これは」
ヒロムも息を呑みながらダガーを見つめる。
「10万ギルでございましゅ」
「じゅ、10万ギルですか!?」
あまりの金額にヒロムは驚き、大声を出しながら腰が抜けそうになっていた。
「それじゃ俺とリーシャで5万ギルずつな」
「りょーかい」
お互いに頷きながらポケットに手を入れ財布を取り出し始める。
「そ、そんなっ! い、いいんですか?」
「おうよ。ここは俺達に気持ちよく奢られてくれ」
「あ、ありがとうございますっ! やっぱりマスターはすごいですね」
嬉しそうに深々と頭を下げ感謝を伝えてくるヒロムをみるとたまにはこんなことするのも悪くはないかなと思う。いや、むしろ良い!!
(マスターどうしたの? ふっとっぱらじゃん)
(ふふ、こう見えて俺、超リッチなんだ)
ギルドの野郎どもと高難易度のクエストとか行きまくったり、ギルドマスターとしての収入とかで金だけはめっちゃ持ってるんだよなぁ。伊達に5大ギルドマスターをやっていないんでね。
それはリーシャも同じで彼女も結構稼いでいるのだろう。5万ギルという数にものともしていない。
……ていうか、あれ? これ。
「「―あっ」」
リーシャと声が重なった。
「…………」
「…………」
お互いに顔を無言で見つめ合う。
「あの……お二人ともどうされたんですか?」
ヒロムの問いにふふっと笑い合って正面を一斉に向きながら
「「財布、忘れたわ」」
「帰れ」
武具屋のおじいちゃんのマジトーンが怖かった。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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