第44話 教育係になりました!
ヒロムのギルドカード作成を終えふと思う事があった。
「最初のうちは誰かについて貰った方が良くないか?」
ヒロムはギルドについては右も左も分からない赤ちゃんだ。まぁ俺も人のことは言えんけど。
こういうのは慣れるまでたくさんの経験を持った実力者が教育係としてつきっきりで見てあげた方がいい気がするんだよなぁ。
「確かに。そのほうがいいね。問題は強くて、引き受けてくれそうな面倒見のいい人なんだけどー」
レイアはうーんと考え込んでいる。
誰が適任なのか悩んでいるのだろう。
このレギス・チェラムは数こそは少ないが実力者ばかりが揃っている。
しかし、教育係となると実力だけではなく、ヒロムとの相性も考慮しなければならない。
少し、いや、大分気が弱そうなヒロムに優しくかつ丁寧に教えてくれそうな実力者……
「あっ、マスターおっす」
声をかけられ振り返るとリーシャが煌びやかに輝く長い銀髪を揺らしながら手のひらを前に出していた。
その姿にギルドにいる者全員が目を奪われてしまう。
それは彼女の優れた容姿と見るものを惹きつけてしまうオーラがそうさせてしまうのだ。
「お、リーシャおっすー」
そんな彼女に俺も同じように手の平を出して挨拶を返した。
彼女の名前はリーシャ・ミカエル。我がレギス・チェラムの一員だ。
色素が薄い銀色の長髪に青空のような目力が強いアクアマリン色した瞳とボンキュボンな体が彼女のトレードマークである。
その姿はまるで天使を連想させるようだ。
なんかいきなり翼が生えてきても違和感ないな……
彼女もヒロムと同じ魔法剣士でありその実力はレギス・チェラムの中でも5の指に入ると言われるほどだ。
「珍しいね」
「ん? ああ、こんな時間に起きてる事か? 入団希望者が来たから手続きのために起きてきた」
「へーやるじゃん」
「だろ? もっと褒めて貰っても構わんよ? リーシャこそこんな時間になんじゃい?」
「あーこれ」
はいとリーシャがレイアに馬鹿でかい黄金の大角を差し出した。
何かの魔物の素材か?
「はい。受け取りまし……ん?」
黄金色の大角受け取ったそう言って受付センターの中へと入っていった。
(ギルドの達成報告として対象モンスターの素材を納品することもあるんだよ)
(えっ!? はっ!? し、しっ知ってたし!!ちゃんと知ってたし!? だってギルドマスターだし?)
(いや、絶対知らなかったでしょ。もう駄目だぁこのマスタ〜)
ごまかすようにこほんとわざとらしく咳払いをいした。
「ねぇねぇ。話、終わった?」
リーシャがツンツンと脇腹を突いてくる。
「え、あ、ああ」
「あのさ−」
「り、リーシャさん!? この素材、討伐モンスターののやつじゃないよ!?」
リーシャが何か言う前にレイア険しい顔をしながら戻ってきた。
「え」
「いや、え。じゃないんだが……」
美しい外見と纏っているオーラと実力からしっかり者と勘違いされるがリーシャは……ポンコツである!!
初めて出会った日から半月経って分かったのだが、彼女を簡単に説明すると何か考えているようで実は何も考えてない。
言い方を変えると天然というか自然体とマイペースいうか……いやただのアホだな。アホの子だ。
「依頼の人にはこれでいいって。……あ」
リーシャは何かを思い出したかのように手紙を取り出してレイアに手渡す。
「……えっと、リーシャさんが討伐したモンスターは依頼したモンスターたちの主だったらしくて、依頼してたモンスターが一斉に逃げ去って行ったからこれで依頼達成でも大丈夫ですって書いてある」
「まじかよ」
「いえーい」
リーシャはどやと言いたげな顔をしながらピースをする。
「……えっと、イツキさん。どうしようか?」
「まぁ、依頼主がこれでいいって言ってるんだし、いいんじゃないか?」
「わ、わかった。手続きしてくるね」
そう言いながらレイアは再びカウンターの中へと戻っていった。
「さっき、レイアちゃんと何話してたの?」
「え? ああ、実はなーこの度このギルドに新人が入ってきたんだ」
くいくいと袖を引っ張りながら聞いてくるリーシャに説明する。
よ、よろしくお願いしますとヒロムはリーシャにペコペコと頭を下げた。
「それでな、この期待のルーキであるヒロム君の教育係は誰がいいかなって」
「へー」
リーシャは感情がこもっていない平坦な声で返し、何か考え込んだように一点をじっと見つめた。
もしかしてやってみたいのだろうか?
「やってみるか? 教育係」
そんなリーシャに笑いながら冗談混じりで言ってみる。
「えっ、うーん。マスターと一緒にやるなら……いいよ」
「え?」
予想外の言葉に驚いてしまう。
いやいやいや、俺と二人がかりとはいえ入って即ギルド内でも美少女と有名なリーシャに教育係をやってもらう?
なんだそれは、ラノベ主人公か?
そんな事あきません。許しません。
それに俺は教育係という面倒臭いことをする気なんてこれっぽぉーちもない!!
「いや、俺は」
「よし、じゃあ、行こう」
リーシャは俺の言葉を遮り、うんと頷きふらーとギルドの扉に向かって歩き出した。
どうやら彼女の中で俺とリーシャで一緒にヒロムの教育係をすることになっているらしい。
俺はまだ何も言っていないのに……こいつほんとマイペースな奴だな!!
「あ、おい。ちょっと待てよ! ああくそ!! 行くぞ! ヒロム!」
「えっ、あ、は、はい!!」
このまま放っておく訳にも行かないので仕方がなく、ヒロムを連れてリーシャの後を追った。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです!
何卒よろしくお願いいたします!