第43話 新たな仲間ができました!
「イツキさーん、起きて。もう10時だよ?」
聞き覚えのある女の人の声、体を揺さぶられている。それにより、ぼんやりではあるが意識が覚醒する。
「んー?」
ぼやけた視界、目を擦りながら気怠げな体を起こすと目の前には頬を膨らませ仁王立ちしたレイアがいた。
こげちゃ茶色のセミロングの髪、ぱっちりした目、天真爛漫な雰囲気は若干ギャルっぽい印象を与える。
「おはようイツキさん。もう、自分で起きないとだめだよ?」
「……すいません」
もうと言いながら少し怒っている様子のレイアさんにペコリと頭を下げる。
昼前にレイアに起こされて怒られるこの流れはいつものことで毎日こんなやりとりをして俺の1日が始まる。
ただ、今日はいつも違っていた。
それは
「いつもは昼前くらいに起こしてくれるのにまだ朝の10時だぞ? 何かあったのか?」
「実はね、このギルドの入団希望者が来たの」
なんとこのギルドに入団希望者が!
まぁ、5大ギルドだからな。当然と言えば当然なのだろうか?
「別に俺を通さなくいてもいいのに。余程変な奴ではない限り入れてもいいと思うけど?」
「これもギルドマスターのお仕事なんだからそんなめんどくさそうな顔しちゃだめ」
「………そんなに顔に出てたか?」
「私にはわかるの」
……なんか、最近になってレイアに俺の性格とか色々把握され始めている気がする。そんな事を思いながらベッドから降りる。
「あっ、イツキさん大丈夫?」
「ああ、ありがとう。大丈夫だ」
「このままいくね」
心配そうにレイアは俺の体を支えてくれた。
俺は魔王軍最高幹部である賢王との戦いの後2週間も昏睡状態に陥っていた。
その結果、全くと言っていいほど動かしていなかった身体の筋肉が落ち、全体的に少し痩せ細ってしまい、体が思うように動かなくなっていた。
ベッドで寝転びながらもできるリハビリから始め、足踏み運動を得て、やっと一人でも歩けるようになったのだ。
レイアに支えて貰いながら部屋を出て階段を降りる。
その先に小柄で細く、丸い眼鏡をかけた黒い短髪少年が落ち着かない様子で立っていた。
「あ、あのっ!!このギルドに入りたいっと思ってきました!! ヒロムといいます!!」
こちらに気がついたヒロムはぺこぺこと頭を下げた。
「お、おう。そんなに頭下げなくても………何でこのギルドに入ろうと思ったんだ?」
「それは、ここは有名な五大ギルドの一つで、皆さん強くって、憧れて。僕もそんな冒険者になれたらって思って!!」
意気軒昂に語るヒロムになぜかは分からないがほんの少し違和感を覚えた。
なぜかは分からない。だけどその言葉は心からの言葉とは思えなかったのだ。
「……まぁ、いいんじゃね? レイア、入団手続きをしてあげてくれ」
ここでこいつの言ってることに違和感があったからと入団を拒否したらあまりにも理不尽すぎるので何も言わず、入団の許可を出した。
「? うん」
レイアは俺の反応に違和感を感じたような顔をしながら手続きの為カウンターへの中へ行った。
「これからよろしく頼むよ。俺はここのギルド!! マスター!! の双葉イツキだ。」
(うわぁ、めちゃくちゃギルドマスター強調するじゃん。)
「え、ええええええええええええ!!」
ヒロムはぎょっとした顔で俺を見て叫んだ。
いや、そんな信じなれないって顔で叫ばんでもええやん?
「あ、貴方が伝説のグランドマスターの一人、双葉イツキさんですか?」
グランドマスター? 何じゃそりゃ? なんか強そうな称号だな。
「ああ、そうだ」
なんか知らんけど、とりあえず肯定しとこ!!
「あ、あの!! 100万の魔物の大群を一瞬で壊滅させたり、魔王幹部と一対一で1週間の激闘を繰り広げたり、勇者や王族とも交流を持ている噂って本当なんですか!?」
「……………ホントウダヨ!!」
「す、すごい!!」
(あっれれー? おかしいぞぉ? 私、この世界に来てからずっとマスターと一緒だったけどそんな事あったけなー?)
バエルの声が聞こえてくるがおそらく幻聴だろう、うん、そうに違いない。
「それじゃあ、ギルドカードを作りますのでこちらへどうぞ」
「あ、はい!!」
ヒロムはレイアに案内され、恒例の職業決めをするため受付でギルドカードを受け取った。
忘れもしない、この俺を遊び人扱いしやがったクソカードだ。見るたびにギルドのみんなにバカにされ、笑われたあの時の事を思い出す。
「……………」
「あ、あの。マスターが鬼のような形相をしているのですが……」
「気にしないでいいよ。はい、このカードを持ってインストールと唱えてください」
レイアは俺を見てあはは……と困ったようにヒロムに説明する。
「い、インストール」
ヒロムが若干緊張しながら唱えた瞬間、カードが銀に光り出し宙に浮き回転し始めた。
(ふむ、銀色ということはユニーククラスではないな)
(よかったじゃん。ネタみたいなクラスはなさそうで)
(お? テメェ俺の事ディスってるな?)
(正当な評価だと思うけど。ねぇ? 遊び人)
(……もうそのいじりやめて? 傷が深いんだよ)
「はい、あなたのクラスは魔法剣士です」
「ま、魔法剣士ですか?」
「はぁ!? 魔法剣士ぃ!? 剣もつかえて魔法も使えてめっちゃかっこいい奴じゃん!! う、羨ましいっ!! 俺の遊び人と交換しろオラァ!」
「ひぃ!? すすす、すいませんっ!?」
嫉妬のあまり俺はヒロムの胸ぐらを掴み、前後に首を揺さぶっていた。
だってさ、あまりにも理不尽だろ?
扱いが違いすぎじゃん?
だから悪いのは俺ではなくヒロムなんだぁ。
「ちょ、ちょっと! イツキさん!?」
レイアが慌てた様子で俺の背後から抱きつき、羽交い締めをしてヒロムから引き離した。
「ちくしょう……ちくしょう……俺なんて、俺なんてぇ」
「もーイツキさんは大丈夫だよ。イツキさんもか、かっこいいよ?」
「……ほんとぉ?」
「ほんとだよ」
レイアのあったけぇ言葉に心が落ち着き改めてヒロムを見る。
最後にボソリと多分と言っていた気がするが気にしないことにした。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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