第41話 貴方は私の
「おはよ−」
「っ!!」
今の話をどこから聞いていたとか、恥かしさとか、みんなに知らせなきゃとか、目が覚めてくれて嬉しかったとか、様々な感情が噴水のように吹き上がった。
だけど、思わず私は彼が何かを言おうとしていたのを無視してイツキさんに抱きついた。
「えっえと? リ、リリスさん? ど、どどどどうした? だ、大丈びだよ? そんなくっついても俺はどこにもいいいかないからさっ」
イツキさんの声がすごく震えていた。動揺してるのかな?
そうだよね……いきなり抱きつかれたらびっくりするよね……
「はい……」
そう言いつつも、私はイツキさんから離れようとはしなかった。
イツキさんの顔が見れないくらい恥ずかしいのと、目が覚めないかもしれないと言われていた中でちゃんと目を覚ましたことへの安堵感からもう少しだけ、もう少しだけこうしていたいと思ったから。
「だ、大丈夫……か?」
離れない私に対してオロオロしながらイツキさんは言った。
「……すいません、大丈夫じゃないのでもう少し、このままで……」
「あ、はい。」
まるで人形のように固まったイツキさんに一つだけ質問する。
「あの……話、どこから聞いてましたか?」
「え、えっと。本当についさっきだよ。俺のこと最初は全然頼りない糞雑魚ヘタレ野郎って言っていたあたりから……」
「そ、そこまで言ってないですよ!?」
ばっとイツキさんから離れて声をあげて反論する。
「あれ? そうだったけ?」
あははーととぼけながら笑うイツキさんにひどいですよもう……と思わずそっぽを見いてしまった。
「はは……悪い悪い。それであなたは私の何なんだ?」
子供のようにワクワクとした顔で私が言おうと思っていた言葉を聞いてきた。
「意地悪言う人には教えませんっ」
「えぇー」
ぶーぶーとただを捏ねだした瞬間、きぃと部屋の扉が開いた。
「イツキー起きてるかって……えっ!? 起きてんじゃん!?」
クエストから帰って来たのであろうソウスケさんが驚きながらさっきの私より何十倍の大きな声で叫んだ。
「おー誰かと思えばイツキ十字軍特攻隊長の神崎ソウスケ君じゃないですかーっておい! お前……今日はちゃんと服着てんじゃねぇか!?」
「久しぶりの再会なのにそんなこと言うなよ!?」
「いやだって、お前がギルド内で服を着てるの見たことなかったからさ……」
「…………」
「おい、何とか言えよ。リリスも引いてるじゃないか。」
え!? 私に降るんですか?
思わぬ巻き込みがこっちのもやってきた。どう答えたらいいのだろうと考え込んでいると
「マスター目を覚ましたんですかい!?」
「おお、マスター!!」
ソウスケさんの声がしたにも聞こえたのかギルドの人たちが次々と嬉しそうにして部屋に入ってきた。
「イツキさん、おはよう」
そんな中レイアちゃんがイツキさんの手を握って微笑んだ。
「おはよー。イツキさぁん!とか言って飛び込んできてくれてもいいんだぞ?」
「はいはい……そんな冗談が言えるってことは元気いっぱいなんだね。」
「さすがレイアさん。わかってるっすね。」
もうって言いながらレイアちゃんは笑った。
「よぉ、マスター気分はどうだ?」
金髪の逆立つ短髪の大きい男の人が前に出てイツキさんの状態を確認するように見つめた。
「あ、ラクス。大丈夫だよ。みんなをまとめてネルトを守ってくれたようだな。お前に任せて本当によかった……ありがとな。」
イツキさんはラクスさんに深々と頭を下げた。
「……よ、よせよこんなとこで」
そう言ったラクスさんは少し照れていて、嬉しそうだった。
「相変わらずねぼすけだね。イツキ」
キョウヘイさんが安心したようにイツキさんに話しかける。
「はは……まぁちゃんと起きたから許してくれよ」
「全く……」
話している二人の空気は何だか穏やかで、独特の空気感があった。
叱っているけれど、それだけではいような……少ともお互いのことを信用しきっていなければ作れない感じだ。
何だか、いいなぉこういうのって思ってしまう。
すると遅れてやってきたユウヤさんがイツキさんも前まで出てきた。
「……イツキ」
「……おう」
二人はただ黙って互いの握り拳をこんと叩きあい、クスッと笑った。
そんなひたりは背中を任せあう相棒のようだった。
たくさんの人たちが次々とイツキさんに対して話しかけてくる。それに対して嬉しそうにそれでいて忙しそうに返事をするイツキさんを見て少し驚く。
村と一緒にいたイツキさんは他人のことを怖がっていたから。
それもギルドの人たちだからかな?
そう思うと同時に私ってイツキさんのことについて何も知らないんだなって思った。
……イツキさんのこともっと知りたいな。
「どうした? リリス?」
「え?」
「いや、えっじゃなくて袖いきなり掴んできたからさ。」
はっと気がすくとどうやら無意識にイツキさんの袖を掴んでいたみたいだ。
「あれ? あ、す、すいませんっ。」
「おやおや?リリスちゃん。もしたら無意識のうちにイツキのことを求めて?」
「ち、違うんですっただ……イツキさんのこともっと知りたいなって思って」
ソウスケさんの質問に答えるとみんなはえーと苦い顔をした。
「えーやめときなよリリスちゃんぶっちゃけ駄目駄目な男だから幻滅するだけだよ?」
「リリス、この世界には知らなくてもいことがたくさんある」
「ソウスケくん、キョウヘイくん、君たち後でちょっとお話ししようか?」
「そうだよ? イツキさんって一緒にいるたびに駄目なところしか見えてこないよ?」
「れ、レイアまで……」
そんなイツキさんの反応を見てみんなクスクスと笑っていた。
イツキさんは人の輪の中心に居て、周り人達の表情を明るくして笑顔にさせていた。
とっても暖かな空気を作り出している。
すごいなって思う。
「そ、そんなことはないぞ!? し、信じてくれ!!」
イツキさんが必死に訴えかけてきた。
「大丈夫です。例えイツキさんのダメなところを絶対勝手に幻滅なんてしません!」
多分と最後に自信なさげに呟いた。
「えぇ!?」
少し涙目になっているイツキさんを見て少しおかしくなって笑ってしまった。
本当に大丈夫ですよ。幻滅なんてしないもん。
だって、あなたは私のたった一人の勇者なんだから。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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