第40話 勇者リリスの独白
魔王最高幹部戦及び、村とネルトが襲撃されて2週間が過ぎようとしていた。
魔王最高幹部戦に勝った私達人間は領土が拡大した。
それを維持するための砦の制作などの後始末がひと段落ついたので私はネルトに来ていた。
壊滅してしまった私の村は現在、村のみんなやネルトのギルドメンバーさん達と一緒に復興を測っている。
村のみんなは復興が終わるまでネルトに滞在している。
ママとネルトで暮らし始めて今日で丁度7日目だ。
村のみんなの手伝いをした後、にネルトにあるギルド、レギス・チェラムに向かっていた。
夕焼けに照らされている屋敷のように大きなギルドに着いた。
五大ギルドなだけあってやっぱり大きいなぁ……
「お、お邪魔します……」
きぃと大きな扉を開くと大きなクエストボード、受付カウンター、酒場にたくさんの人たちが居た。
とても賑わっており、雰囲気がとても暖かい。
「お、リリスちゃんがきたぞ!!」
「ほんとだ!! リリスちゃーん!!」
「勇者さまじゃねぇか!!」
うぉぉぉぉぉぉ!! とギルドのみなさんがなぜか歓声をあげる。
「あ、みなさんこんちわっ。お、お邪魔してます」
みんなの様子に気後れしつつ挨拶をする。それに大してみんなおかえり! とか色々挨拶や話しかけてくれた。
今まで用事でたくさんのギルドに行ってきたけれど、これほどアットホームなギルドは見たことなかった。
これも……イツキさんがマスターだからかな?
「む、リリスか」
私の前に黒の衣服をきた黒髪に鋭い目つき、幽鬼のような白い肌した男の人が話かけてきた。
「あ、ユウヤさん。こんにちは」
ユウヤさんは私の仲間である剣聖であるルイちゃんと仲が良く、二人で話しているのを見かけたのをきっかけに話すようになった。
彼だけではなく、神崎ソウスケさん、一ノ瀬キョウヘイさんの3人は私たち勇者パーティとは王都によく用事で来ている時や八王との決戦の時など何かと交流がある。
イツキさんが言っていたお友達がユウヤさん達だったことを知った時はすごく驚いちゃった。
「すまないな。毎日来てもらって」
「いいえ! 好きでやっていることですから……」
「……そうか、そのまま上がっていってくれ」
「はい」
ユウヤさんに許可を取り、マスターの部屋に向かって階段を駆け上がって行く。
イツキさんは八王の一人である賢王ミストの戦いから昏睡状態に陥り、今だに目覚めていない。
何故昏睡しているのか未だに判明していない。
色々な人に見てもらっても身体自体は特に問題はなく、魔力も枯渇しているわけでもない。至って健康体らしいんだけれど、イツキさんは目を覚めない。
原因が不明なため、いつ目覚めるかわからないと言う。最悪の場合、一生目が覚めないことも言われてしまった。
私はこうして朝と夕方イツキさんの様子を見に来ている。
ちなみ私だけではなく、ユウヤさん達ギルドの皆さんやママや村のみんな……色々な人がイツキさんの様子を見る為足を運んでいる。
それだけではなく、おじいちゃんやズングリット君を始めとしたドワーフ族、若頭さん達鬼神族のみんなも来ていたらしい。
階段を登り切り、イツキさんの部屋のドアを開けると未だに目を閉じて眠っているイツキさんがいた。
身体を動かしていないせいだろうか、筋肉が落ち以前より痩せ細くなっている。
毎日、色んな人がイツキさんを訪ねる時は様子を見るだけではなく、昏睡しているイツキさんに向かって話しかけている。人は意識がなくても声や音は聞こえている場合もあ流からだ。私たちの声がキッカケになって目を覚ます可能性もあるらしい。
「……イツキさん。私ね、ずっと頑張って来たんです。聖剣に選ばれて、勇者になって、凄い人達と出会って仲間になって……でもそれはつもりでした。みんな自分の力に目覚めて、神器も使いこなして一人一人が力をつけてこの世界を守るってわかってるつもりでした。」
言いたいこと、今まで貯めてきた自分の気持ちが一度出したら止まらなくなる。
駄目だと頭ではわかっていても止まらない、止めれない。
「みんなと一緒に頑張ってるつもりでした。でも、でもみんなはどんどん力をつけて頼も少なって行くのに、強くなって行くのに、私だけが……できなくてっ。だから私には……何もなくて、何もできないんじゃないかって、怖くて……そんな時、勇者パーティのみんなが一度村に帰ってリフレッシュしてきたら? って言ってくれて」
あの時は私自身追い込まれていた時期だったから、顔にも出てしまっていたんだと思う。
そんな私に気を遣ってくれたんだと思う。そう頭では理解はできていたけれど……
「みんな、私なんか要らないんじゃないかって、そう思ってしまって……そのうち、村のみんなも私から離れて行っちゃうんじゃないか、誰も私の傍に居てくれないんじゃないかって怖かったんです」
それに
「頑張っても、もう駄目なんじゃないかって……自分のこと、怖かったんです。だから大丈夫だって自分に言い聞かせていました」
村で頑張っても聖剣の力は出すことは出来ず、落ち着いていた心にジワジワと不安と焦燥が侵食していった。
そして、ズングリット君が助けを求めてきて、腐蝕の結界に閉じ込められて……みんなボロボロなのに私は聖剣を力を出せなかった。
私がやるしかなかったのに、ただ手を振るわせることしかできなくて……もう自分は駄目なんだって思った。
「あの時、私は誰かに大丈夫だよって言って欲しかった……でもあなたが言ってくれた。私の手を握って優しい笑顔で大丈夫だよって、傍にいるよって言ってくれた。あの時は本当に嬉しかったなぁ」
イツキさんの手をぎゅっと握った。じっと握られた手を見つめる。
「そして、今度は私の大切な世界を守ってくれた。イツキさんには本当に助けてもらってばっかりですね」
本当に、私がもう駄目だって、助けて欲しいと心から願った時に来てくれて、助けてくれて……
「始めてあった時は少し変わってる頼りない同い年くらいの男の子って思ってました……だけど今は……ちょっと違います。あなたは私の」
「……私の?」
「私の……えっ?」
声がして顔をあげると目を覚まして微笑みながら私を見つめているイツキさんがそこに居た。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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