第4話 最悪の再会でした!
「ようこそ、我がギルド、レギス・チェラムへ」
「キョウヘイさん! おかえりなさい!」
「あっ! キョウヘイさんだ!」
「こっちで一杯飲みませんか?」
「ただいま、今日はやめておくよ。」
ギルドの人達がキョウヘイを見ると話しかけてきた。
(はあー随分慕われるんだな……)
(うーん、マスターとは真逆!)
(うるさい)
「さて、まずはイツキの部屋を案内しようか」
あ、俺の部屋あるのね。
アヒルのようにキョウヘイの後をピッタリとくっついて行くと、大きな階段を登って廊下を渡る。
てかここ広過ぎ。
「1階は酒場やクエストの受付があって、2階からはギルドメンバーの専用部屋があるんだ。で、最上階のマスター専用部屋がイツキの部屋だよ」
「なぁ、さっきからマスターってなんだよ」
「そのままの意味だけど? 着いたよ」
キョウヘイが赤と金の装飾がついた大きな扉を開けるとそこには、大きなベットや豪華そうな家具が一通り揃っている。
しかもルーフバルコニー付きだ。
はは、貴族の部屋かなにかかな? あはははは、笑いが止まんねぇよ。マジで。
「そういえば、他の奴らは ?」
残り2人の転生者である友人の居場所が気になったのでキョウヘイに聞いてみた。
3人でギルドを立ち上げたって言ってたからな。このギルドにはいるだろう。
「ユウヤとソウスケなら今は出てるよ。」
「ほー、冒険者みたいに依頼とかしてるのか?」
「ユウヤはそうだけど……ソウスケは……」
「き、キョウヘイさん!!」
モヒカン頭のおっさんが情けない声でこちらに走ってきた。
ギルドの一員だろうか?
「憲兵がうちのギルドに!」
け、憲兵!? なんで?
「ああ、わかったすぐに向かうよ。行こう」
困惑した俺をよそにキョウヘイは俺に目線を配り、階段を降りていった。
なんか反応が薄くないか? 慣れているというか……
え? 何? このギルドってやばいところなのだろうか?
その瞬間、密売、詐欺、強姦、殺人などの犯罪ワードが俺の頭の中に浮かんだ。
(ば、バエルさん、ヤベェよ、俺の人生オワタ)
(いきなり何言ってるの? 頭大丈夫?)
とりあえず、その背中を追いかけて1階の酒場に着くと先程のモヒカン野郎の言っていたお通り、騎士の鎧をきた憲兵たちが居た。
「ここの最高責任者はいるか!!」
先頭に立っている隊長らしき男が大きな声で言った。
「はあ、イツキご指名だよ。」
「え、なんで俺なんだよ。」
「いいから、ほら」
キョウヘイに背を押されて隊長の前に立つ。
こ、こいつまさか全ての罪を俺に擦りつける気では?
「………一応確認しておくが、神崎ソウスケはここのギルドメンバー間違いないな?」
「え、はい。そうですけど………」
ソウスケの名前が出てきて動揺しながら答えた。
神崎ソウスケとはイツキ十字軍の一人で一緒に転生してきた俺の大切な親友だ。
「あの、ソウスケに何かあったんですか? あいつはアホで間抜けな奴だけど大切な親友の一人なんです!!」
何かのトラブルに巻き込まれているのか? もし巻き込まれているなら一刻も早く助けに行かないと!!
手の握る力が強くなる。少し熱くなっているのが自分でも分かった。
「今朝、酒場の近くで全裸で泥酔した姿を確保した。全く…これで何回目だ?週に3回くらいのペースだぞ」
………………
(大切な親友の一人なんです!!)
(死にたくなるからやめてくれ……)
本当に死ぬほど恥ずかしいんですけど……ああ、ああああ。
「いつもすいません……」
キョウヘイが申し訳なさそうにペコリと頭を下げて隊長に謝る。
「………問題ない、もう慣れた。と言うわけで、来てもらうぞ」
「分かりました。任せたよイツキ」
「え? ちょっと俺が迎えに行かなきゃならないの?」
キョウヘイお前が行けよ。そういうのは君の役目だよね?
「俺はこの後用事があるから……はい、これソウスケの着替え」
強引にどこから用意したのか分からないソウスケの服を渡された。
え? まじで俺がいくの? 嫌なんですけど!! 勘弁してほしいんですけど!?
「ほらいくぞ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
有無を言わさずズルズルと引きづられながら牢獄へと連行された。
連れてこられた牢屋の中にいたのは派手すぎる金髪に間抜けな顔をした少年が座っていた。
「ソウスケ……」
「イツキじゃん、久しぶり。」
「……おう。」
「ははっ酷い顔だね。」
「あぁ、この世界に来て1日もたってないんだが、すでに元の世界に帰りたくなるほどつらい……」
「どんなに辛いことがあっても、現実から目を背けてはいけないんだ……ちゃんと向き合わないと」
「ソウスケ……」
腹が立つほど悟ったような表情で諭してくる。
言ってることは正しいと思う。
だけどさぁ……
「牢屋の中に全裸の友人がいる現実なんて向き合いたくないんだが……」
「いや、本当に申し訳ない。」
俺たちの再会はこんな最悪の形になってしまった。
「おらぁ!!」
「へぶぅ!?」
無理矢理持たされていた着替えをソウスケの顔面に投げつけてやった。
するとソウスケは情けない顔で情けない声を出しながら後ろに倒れた。
ふぅ、なんだか少し気が晴れた気がする。
吐き出すのって大事なことなんだなって改めて思ったよ。
「ほら、お前の着替え持ってきてやったぞ。」
「渡し方雑すぎ!!」
「うるさい変質者、早く服着ろ」
ソウスケはへいへい……と言いながら着替え始める。
神崎ソウスケ、ばか、あほ、間抜け以上。
まぁ、それだけではないんだけど……こいつとは一緒にバカやって笑い合ったり怒られたりとそんな悪友のような関係だった。
ベージュ色のフード付きの外套を着込んだソウスケはムカつくほどに様になっていた。
こいつ普段は間抜け面の癖にシャキッとすればそこそこかっこいいからなぁ。
オラなんだか腹が立ってきたぞ。
「いたっ!な、なんで頭を叩くんだよ。」
「ウルセェ!! お前がかっこいいのがなんか腹が立つんだよ!」
理不尽すぎる! と大声で抗議してきたソウスケを無視して牢屋を出た。
「お! ソウスケ! もう迎えがきたのか!?」
「ひぃ!?」
グラサンをかけて肌黒なムキムキの看守のおっちゃん達が俺達というかソウスケに話しかてきた。
あまりの看守の厳つさ故びびってソウスケの背後に隠れてしまった。
「まぁね、賭けはまた今度って事で。」
「仕方ねぇな。 ま、どうせすぐ帰ってくるだろ!!」
「いやいや、流石にもう懲りたよ」
「お前、3日前も同じ事言ってたよな?」
………
「ん? なんだよ。」
「いや、お前ここの人達と仲良いんだな。」
「まぁね、僕ここの常連だからさ。何回も会ってる内に仲が良くなったんだ。僕を知らない奴なんて居ないんじゃないかな?」
「お前ドヤ顔で言ってるけど全然誇れないことだからな。分かってる?」
そうこう話している内に外に出た。
「くぅー! やっぱりシャバの空気はうまいねぇー」
ソウスケは気持ち良さそうに体をグッと伸ばして空気を吸っていた。
もしかして、こいつは外に出てはいけない人間かもしれない……
「そういえば、イツキはギルドカードを作った?」
「なんだそれ?」
この世界にきてまだ数時間だぞ? 俺の知識量は赤ちゃんと同じなんだ。
つまりは俺は赤ちゃんなのさ。
「まだ作ってないのか……じゃあ僕が色々と教えるよ。」
「えーソウスケに教わるとか不安過ぎるんですけどぉー」
1+1=ミソスープと答えるソウスケに教わって大丈夫なのだろうか……不安しか感じないっね。
「めちゃくちゃ失礼ですねぇ!!」
そんなやりとりをしていると早くも我らがギルドであるレギス・チェラムに着いた。
先ほど見たばかりだが、なんと言ってもデカい!
相変わらずの圧倒的な存在感に思わず息を呑む。
「相変わらずバカデケェな……」
「まあね、ここまでいくのに苦労したよ。」
(それに比べてマスターは……)
(あー!! うるさい! うるさい!)
バエルの言葉に耳を塞ぎ、再び、ギルドの扉を開けた。
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