第35話 決めるのは
(この膨大な魔力。あの金髪、時を操る前の数秒で魔法を発動させていたのか!)
ソウスケのライトニングをくらって賢王の体はダメージを負った。
身体が痺れ、一切の行動が不能になる。
(しかし、この程度数秒の足止めにしかー)
賢王はありえないものを目の当たりにし驚愕した。
(ありえない、確かに心臓を貫いたはず、動ける状態ではないはずなのに)
賢王の前に朱い宝石がついたネックレスを輝かせ、負傷している箇所を炎と共に再生させながら空を唸らせ旋風を巻き起こしながら大剣を振ろうとする北条ユウヤの姿があった。
(この力、こやつ神器を2つ所持していたか!)
賢王は天道を発動させ、斥力でユウヤの再び吹き飛ばそうとしたが、ユウヤはその場で踏ん張った。
「うおおおおおおおおおおお!!」
それどころか、雄叫びを上げながら一歩ずつ前へ前へ進み出した。全てを弾きかえす天級魔法である天道の中で。
「黒炎!!」
その姿を見て若干の焦りを見せた賢王は右手に闇のような黒炎を生み出し、ユウヤに放つ。
賢王が放った黒炎はどのような力の干渉があったとしても相手が塵になるまで消えない、闇の炎、消すには賢王本体を倒すしかない。
本来ならば黒炎を受けた者は数秒で塵になる。
北条ユウヤは2つ目の神器である不死鳥の原石により魔力を使い、体を超再生させていた。
だがそれは絶え間無く炎に焼かれる激痛を味わうということ。
常人ならばその激痛で心が折れ、ショック死するレベルである。
しかし、北条ユウヤにとって痛みとは激痛を身体で味わう事ではない、痛みとは心に刺さり、大切なものを失い苦しみ続けること。
(この体に走る痛みはそのうち消える。しかし、このまま折れて大切なものを失っていく心の痛みは一生消える事はない! だから立ち止まるな!! 進み続けろ!)
ただの痛みだけでは北条ユウヤは止まらない。
ユウヤは黒炎を纏いながら突き進んだ。
「いい加減、諦めろ。貴様らの運命は終わったのだ」
「それを決めるのはお前じゃない。俺たちだ!!」
ユウヤはそう叫びながら振りかざした大剣に炎を纏わせ、賢王に向けて叩きつけた。
「いいだろう。左腕はくれてやる」
賢王はそう言いながら左手でユウヤの大剣を受け止める。ジュウウという音と共に左手が焼き切れていく。
「はぁぁぁぁ!!」
ユウヤはまるで出し切るように、ここで賢王を仕留めるという気迫が更に剣撃の威力を高めた。
しかし、賢王は紫色の怪しげに輝く右手でユウヤの体に触れようとしていた。
それは賢王の使用する魔法の一つであるマジックドレインだった。
マジックドレインとは対象の魔力を吸収し、自身の力に変えるいう特殊な魔法だ。賢王はユウヤの魔力を吸い取り、自身の魔力に変換しようとしていた。
ユウヤは今、自身の魔力を消費して神器の力を使い生きている。つまり彼の魔力が尽きてしまうということは神器の力が失われ、彼が一瞬で塵になってしまうこと意味していた。
ユウヤ自身はマジックドレインを知らず、賢王の意図に気づいていない。
賢王の右手がユウヤに触れる直前
「っ!?」
どこからか賢王の体に衝撃が走り、右手が弾かれた。
(この魔力……一ノ瀬キョウヘイか!?)
キョウヘイが賢王に放った拳は魔力を込めたものだった。
しかし、拳の自体の威力はそんなに高くはならなかった。なぜなら本命である魔力による衝撃は遅れてやってくるように調整していたからだ。
(この変則的な攻撃……タイミングを狙っていたか、やってくれるな!!)
ユウヤの大剣を左手で受け、苦痛の表情をさせながら賢王は魔法を放った。
「天道!!」
天道によって吹き飛ばされたユウヤは顔を伏せて膝を付いていた。
「っ!! はぁ……はぁ……」
その姿は疲労しているのが明らかだった。
「ふん、そうだろうな。貴様にはもう戦う力は残っていない。残念だが、北条ユウヤ、貴様ではワシを倒せない」
その言葉に反応するかのようにユウヤは顔をあげる。
「勘違いしているようだが、お前を倒すのは俺ではない」
ユウヤの言葉の言葉を聞き、賢王の眉はピクッと動く。
「ほう。では誰がわしを倒すとういのか?」
確信があるわけではない、だが、絶体絶命であるこの状況を打破できるのはたった一人だけ、こいつならなんとかしてくれるという安心感に似た絶対的な信頼、北条ユウヤの脳裏にはある人物の姿が鮮明に浮かんでいた。
その人物はあまりにも自然に思い浮かんでしまったものだからユウヤは思わず、ふっと笑ってしまった。
ユウヤは揺るぎない確固たる瞳で賢王を見た。
「それは五大ギルド、レギス・チェラム……俺たちのギルドマスター双葉イツキだ。そうだろ?」
ユウヤは誰かに問う。
「ああ、当たり前……だ」
賢王は信じられないものを見ている。
膝をついたユウヤの後ろには顔に血が垂れ流れて、左目は潰れ、左腕も無く、心臓を貫かれ、体のあちこちから血が吹きだし、まともな力が入らず、両足はガクガクと震え、唯一残った右腕は力なくぶらりとたれ下がっている。
そんな状態で死の間際に立ってもなお、俯きながら立ち上がった双葉イツキがいた。
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