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第32話 集結




「ほう、ほざきよるわ」



イツキはそんな賢王の言葉を無視して巨神兵の頭から飛び降りて今にも倒れ込みそうなラクスの元へと向かった。



「わりぃ待たせちまったな。」



傷だらけの体、皮膚は火傷によって爛れ、所々、黒く焦げている。そのラクスの体は先ほどまで命懸けで戦ってきた証だ。


きつかっただろう。心も折れかけたであろう。しかし、ラクス・クルスニクは今この瞬間ギルドマスターとしてまで戦い続けた。


周りのレギス・チェラムのみんなだってそうだ。今もボロボロになっての歯を食いしばって無数とも言える魔物達と戦っている。



「マスターすま」


「俺が来るまでよく耐えた。あとはまかせろ」



ラクスが何かを言い切る前にイツキはラクスの頭をぐいと手で引き寄せた。



「何人かはラクスと共に結界の中へ。手が空いている者は魔物達と戦っているやつを援護し、共に撤退しろ」


「えっ? それじゃあマスターが一人に……」


「大丈夫だ。行け」



イツキの言葉に頷き、レギス・チェラムはネルトの中へと撤退を始めた。



「ほう。貴様一人でこの状況をどうにか出来ると思っているのか?」



そんなイツキの様子を見て賢王が再び問いかける。

ラクスはレギス・チェラムでも確実に上位に入る実力だった。先ほどまでは自身が最前線に立ち、このギルドの精神的柱になっていた。そんなラクスを重症とはいえ、退かせるのはかなりの痛手ではなおのだろうかそれに他の者も体力こそ限界には近かったがまだ戦えてはいたのにと考えたからだ。


賢王であれば、その体が動く限り働かせ続ける。たとえその後に命を落とそうともだ。

イツキは振り向き、賢王を見上げた。



「出来るから、今この場にいる」


「なるほど、では絶望を再び抱かせてやろう。せいぜい派手に散ってくれ」


賢王がトンと杖を叩いた瞬間、、レギス・チェラムを一掃させた赤子が10体、ネルトを滅ぼすほどの力を有する巨神兵が賢王の左右に一体ずつ出現し、隊列を組み軍隊のようにこちらに侵攻してきた。



「さぁ、双葉イツキ。お前一人ではどうにでもなるまい。わしの行方を阻むのなら容赦はしない」



賢王は嘲笑いながら手を振り下ろす。その瞬間、赤子の軍団が一斉に剛力を倍以上に膨らませイツキに襲いかかる。


そんな中、イツキは眉ひとつ動かさず、自身に向かって拳を振り下ろしている赤子にではなく、その先で見下ろしている賢王から目を離さなかった。



「お前こそ、賢王だかなんだか知らないが俺たちのギルドに手を出してタダで済むと思ってるのか?」



双葉イツキは動かない。それはまるで何かを待っているようだった。



「そうだろ?」



イツキがそう言った瞬間、轟音と共に目の前の剛腕を振り上げていた赤子の体が縦に真っ二つになった。



「!?」


残った赤子たちは動きを止め、イツキではなく真っ二つになった個体の方を向けた。

赤子の頭に聳えるのは黒く分厚い鉄の塊のような大剣。


そして、その柄の上に黒いブーツを履き黒の軍服のような黒のコートをたなびかせた北条ユウヤが立っていた。


「すまない。遅くなった」


「いや、助かったよ。それと信じてた」


双葉イツキと北条ユウヤは互いの瞳を見つめる。

この二人には多くの言葉は不要だった。



「あぎゃあああああ!!」



そんな二人の会話を張り込むように赤子はユウヤに向かって襲いかかった。

赤子の本能が告げていたのだ。この男は危険だと。抹殺すべき対象に向け、赤子達は己の拳を振り下ろした。



「一つ言い忘れていた。頭上注意だ」



ユウヤが赤子達に警告した瞬間、天空から炎熱の槍が降り注いだ。

炎熱の槍は赤子達を容易く、頭から撃ち抜きまるで炎の柱のように燃え上がった。赤子達は悲鳴を発する暇も与えられないまま一瞬で灰と帰した。



「来てくれたんだな」


「ああ、ズングリットという少年が状況の説明と魔道具でこの近くまで転移させてくれた」



イツキはドワーフ達に村人の誘導及び誘導完了の合図だけではなく、王都に招集され、勇者と共に魔王最高幹部の城に攻め込んでいるユウヤ達にネルトの状況を説明し、連れて来て貰うように頼んでいたのだ。



「……さて、それじゃあ今から目の前にわらわらとした魔物の群れを一掃するか」



イツキが到着する前にある程度は数は少なくなっているとはいえ、未だ1万余りの魔物達が残っている。それに加え2体の巨神兵、その間にいる八王の一体である賢王が控えている。



「ふぅ……敵大将が遠い」



イツキがボソリと呟いた。これは別に悲観的になってのではなく、今から始まる激戦への覚悟を決めたのだ。

現在、こちらの戦いと同時進行で魔王軍最高幹部である八王の城に攻め込んでいる。


人類にとっても重要な戦いの中、勇者パーティに匹敵すると言われている北条ユウヤ、神崎ソウスケ、一ノ瀬キョウヘイの3人が一斉に戦場を抜け出しネルトに来てくれる事は賭けに近かった。

彼らには彼らの戦いがある。本来であれば誰も来なくても不思議ではないのだ。



「大丈夫だ。問題ない」


「え?」



ユウヤが人差し指を右方向の空に向かって差した直後、イツキ達の上空にひときわ強烈な緋色の閃光が空に現れた。


その緋色の閃光から一直線に爆炎を伴った地を這うレーザーが放たれる。その爆炎は大地を引き裂くほどのものだった。


一瞬で半分以上の魔物が突如発生したレーザーによって消滅する。



「……え?」



あまりにも突然の出来事にイツキは呆然としていた。

それは魔物達も同様であり、その光景に恐怖し、完全に動きが止まってしまっている。

空を見上げるとベージュ色のフードを被った外套を着込んだ男が右手に大杖と左手に魔導書を開きながら宙を立っている。


やがてフードの男はパタンと魔導書を閉じ、イツキ達の目の前に緩やかに降りていた。

前に進みながらフードを外すと派手すぎる金髪が姿を表す。



「よぅ。ソウスケ、最高幹部の拠点に攻め込んでたんじゃなかったのか?」


「ん? バックれたよ。そんなん」



ソウスケはさも当然に語りながら背伸びをする。



「……ははっ。そっか。ありがとな」


イツキはそんなソウスケを見て笑った。

ソウスケらしいなと思っていたら自然と口元がニヤけたのだ。



「別に、僕はやりたいことをやってるだけだよ。それよりもひっくり返そうか。全てを」



神崎ソウスケはいつものように飄々と言う。



「カッコつけちゃって〜」



イツキはニヤニヤとしながらウリウリと肘でソウスケを突く。



「う、うるさいなっ! いいじゃんちょっとカッコ付けるくらい!」



そんなやりとりを2人がしているのを暖かく見守るユウヤ、それはいつも通りの光景だった。どこにいてもどんな状況かでも彼らは変わらない。


しかし、それは巨神兵によって終わりを告げた。


巨神兵は咆哮しながら右手を掲げ、ラクスが命懸けで止めたあの雷の槍を創り出した。その核兵器並の威力を有する。ネルトと勇者の村ともども消滅させる為イツキ達に向け投擲した。


3人は武器を構え、ソウスケは防御魔法を発動させるために魔導書を開いた瞬間



「俺が行くよ」



聞き覚えのあるその声と共に突風がイツキ達を突き抜けた。

吹抜ける旋風に目蓋を細めながらも吠えるような風の音と共にイツキは確かに見た。

白のポンチョを身に纏い、栗色の髪、中性的な顔立ちの糸目の少年がこちらに向かって張り付いたようなおだやかな笑顔を見せた一ノ瀬キョウヘイを。


キョウヘイは大地を蹴り、雷の槍に向かって放たれる一本の弓矢のように真っ直ぐ、力強く、空に向けて跳んだ。



「っ!!」



キョウヘイは空中で雷の槍を蹴り上げ、上に弾いた。

その光景を見た巨神兵は口を大きく開け、無限に生えている口から魔力のエレルギー波を放とうとしていた。レギス・チェラムを絶望に叩き落としたあの砲撃に強烈な橙色の粒子が集まっている。



「このまま返すよ」



縦回転しながら落ちてくる雷の槍を巨神兵の顔面に向けて蹴り飛ばした。

音を置き去りにし、旋風を纏いながら放たれた雷の槍は巨神兵がエレルギー波を射つ前に巨神兵の頭を貫く。


貫かれた巨神兵の頭は地軸もろとも引き裂くような爆発音を発しながらを爆裂した。


膝をつき、前に倒れ込む巨神兵と背景にキョウヘイはイツキ達の元に降り立つ。

こうして、異世界転生をした4人が戦場に集結した。










「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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