第30話 防衛戦
始まりの街ネルトは魔王軍との前線から遠い所にあり、周りに生息する魔物が弱いため
数々都市や街と比べて平和で安全な街として知られている。
しかし、その考えは今まさに崩れ去られようとしていた。
「緊急事態発生!! 魔王軍が襲来した模様!! ギルドメンバーは直ちに応戦せよ!!」
予言通り、魔王軍がネルトに襲いかかってきた。
その数はおよそ1万、これは魔王軍が人の都市一つ潰すのに必要とする数だ。その数をただの小さなまちであるネルトを潰すために魔王軍は用意した。
「「「うおおおおお!!」」」
「「「ギキャァァァァ!!」」」
しかし、ネルトの冒険者達はまるで待ち構えていたと言わんばかりに襲いくる魔王軍のモンスター達を迎え撃っていた。
ネルトの地下深くに設置しているクリスタルの力を使いネルト全体に結界を張り、城壁の魔導砲で飛行している魔物をを撃墜しつつ、地上の援護を展開、設備を十分に活かしつつ応戦していた。
五大ギルドの一つであるレギス・チェラムは設備投資など王国からの支援がされており、ネルト全体を守る城壁やその上には魔導砲など防衛設備が充実している。
「お前ら行くぞ!! 絶対にネルトを死守するんだ!!」
ラクスが先頭に立ち、群がるモンスター達を雷光を纏った拳でなぎ払いあとに続いたギルドメンバー達が追い打ちをかけていく。
襲いに来る魔物ははネルトの周りに出没しない比較的強い魔物達だが、ラクスによって極限まで昂ったギルドメンバーの前に何なく倒されていった。
(まさか、本当にマスターが言っていた通りになるとはな。こうして準備をしておいてよかったぜ)
ラクスは心の中でため息を吐きながら臨時マスターとしてネルトを防衛していた。
「よし!数が減って来ている!! このまま片付けるぞ!」
ラクスが皆に激をいれつつ一気に畳み掛けるため前線を引き上げていった。
「おお!!」
「俺の魔法見せてやるぜっ!」
「傷を負ったらこっちに来て!回復魔法をかけるから!」
ラクスの一言で冒険者達は奮起し士気が高まっていた。順調な滑り出しほぼ満点と言って良いほど良い流れをレギス・チェラムは作れていた。
「変だな、妙に強いモンスターが襲いに来てやがる」
「どういう意図かはわからないが、最前線で戦っているモンスター達だろう。レベルも高く、下手すれば一瞬でやられる」
誰1人として、突然の奇襲に慌てることなくモンスターの強さを見極め、冷静に判断している。
「あと少しだ!!踏ん張れ!!」
「おお!!」
この程度ではネルトは落とせないと言わんばかりに迅速にネルトを襲うモンスター達を一掃させた。
普通のギルドで平均1000人、他の5大ギルドは1万人ほど人がいるのだが、レギス・チェラムはギルドメンバーが50人弱と他のギルドと比べて数は圧倒的に少ない。
しかし、それを補えるほどの実力を持った者達が集まっている。
直後、時空に歪みが生まれた。その歪みは穴のようなものであり、底が見えない闇のようなものだった。
そこから、紅い稲妻が雨のように降り出し。落ちたところから大量の魔物が現れる。
「………なるほど、第2波か。みんな構えろ!! くるぞ!!」
ラクスが再び号令を入れると昂った闘気を宿したレギス・チェラムは声を高らかに上げ進撃を開始した。
戦っている最中、レギス・チェラムは先程のモンスター達より強くなっている事に気づく。
そして、今のように敵を一掃したとしてもまた同じように一層強くなったモンスター達がやってくるだろう。
そう考え、冒険者達の動きが一掃する攻めの動きからネルトを崩さないための守る為になった。これ以上、無理に攻めるとこちらが先に力尽きない。
最低限の動きをお互いにフォローをしながら勇者が魔王幹部を倒すまでなの長期戦と考えて動いていた。
順調に押し寄せてくる魔王軍を倒していた中、新たな穴が生まれた。
第三波かとラクスを含め、レギス・チェラム全員がそう考えた。さらに数を増やし、数の暴力で押し切るつもりかと。
しかし、それは違っていた。
突然何かとてつもなく重量感を有したナニカが強烈な衝撃と轟音を轟かせながら落下してきた。
砂煙のカーテンから現れたのは身体中に血管が浮き出て目を瞑り人の数倍以上はあろう巨大な体躯をした赤子だった。
「ん。んぎゅあああああああああああああ!!」
舞い降りた赤子はまるで赤ん坊が放つような産声を発した。
魔王軍は数だけではなく、強さの質も高めてきたのだ。
「んぎゃ!! んぎゃ!!」
赤子は痛みに耐えているような悲痛の叫びを放ちながらその異常に膨れ上がった腕を薙ぎ払う。
「うわぁぁぁ!!」
風を切りながら振るわれた赤子の剛腕は軽々と一気に5人のギルドメンバーを吹き飛ばした。
ゴン!! という鈍い音とともに地面に叩きつけられたギルドメンバーたちは気を失ってなってしまう。ただ腕を振り放っただけで5人のギルドメンバーが戦闘不能に陥った。
その光景を見て全体に大きな衝撃を与えた。
「う、うわぁぁぁぁぁ」
近くにいたギルドメンバーの一人が戦意を完全に喪失し、武器をして背中を丸くし逃げてしまう。
「きゃっきゃっ!!」
その姿を見て無邪気に笑いながら赤子は腕を振りあげ、逃げているギルドメンバーに叩き潰すように振り下ろした。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
全身に雷光を纏い、まるで雷が走るかのようにラクスは赤子に向かって駆けて行った。
逃げているギルドメンバーを守るように振り下ろされた赤子の剛腕を受け止めた。
「ぐあっ!!」
大地を抉るような重撃にラクスの身体が悲鳴を上げた。血管がちぎれるほど膨れ上がり、血が飛び散る。今まで受けたことのないほど重く、力強い一撃にラクスは歯を食いしばり、耐える。
電光石火とはラクスの固有スキルで効果内なる魔力を電撃に変えて肉体を強化し、ラクスの身体能力を技の威力、スピードを急激に増加させるいうもの。
これを使うときは勝負を決めに行く時、つまりはラクスの切り札である。
しかし、電光石火のラクスを持ってしても赤子と互角だった。
赤子の力がさらに増していく、まずいとラクスの本能が警告音を鳴らした。このままでは押し切られる。
(そうは……させるかよ!! もう一踏ん張りだ!! 100%なら120%を引き出せ!!)
レギス・チェラムの一員としての誇りが彼を踏みとどまらせた。
「あああ!!」
ラクスは腹の底から声を出しながら赤子の剛力をなんとか弾き返し、その大きな隙を突くようにガラ空きになった赤子の腹部に堅く握りしめられたラクスの拳が突き刺さる。
「おっえ」
ラクスは唾液を吐きながら後方に吹き飛んだ赤子に向かって右の掌を突き出した。
「雷光波!」
突き出した掌に魔力を集中させ、青く輝く雷光の巨大なレーザを照射した。
「んぎゃああああああああ!!」
ラクスの雷光波に体を飲み込まれた赤子は痛々しい悲鳴をあげる。
その肉体は灰となって消滅するかに思われたが、赤子は消滅する心か少しずつラクスに向かって突き進んでいく。
(このまま近づかれてあの剛力をくらっちまったら確実に死ぬ!! ここで決めなくてはっ! あとがない!)
「最高火力だぁぁぁあ!!」
ラクスは自身の魔力を最後の一滴まで絞り出し、雷光波の出力を一気に底上げさせた。
さらに大きく、蒼く、濃くなった雷光波を受けた赤子は悲鳴と共に完全に塵と化した。
「……はぁ、はぁ」
ラクスは体を大きく上下させるほど呼吸が乱れて膝をついた。
この様子は自身の残っていた力を全て使い果たしたことを意味する。
しかし、赤子に勝利したという事実がレギス・チェラムの熱を一気に高めた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
熱を持った歓声がネルト周辺を包み込んだ。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
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