第28話 始まりました!
勇者パーティおよび、王族と双葉イツキを除いた五大ギルドマスター、北条ユウヤ、神崎ソウスケ、一ノ瀬キョウヘイといった猛者たちが集い、魔王幹部と激闘を繰り広げていた。
双葉イツキがこの世界に訪れる前にリリス達は一体の魔王軍幹部を討伐しており、勇者リリス達にとってこれで2度目の決戦だった。
どんよりした曇り空の中、勇者の村でアリス・アリスタは自身の娘であり勇者であるリリス・アリスタが帰ってくるのを信じて明日の夕食の買い出しをしていた。
「アリスさん! 今日も綺麗だね! いい食材が入ったんだが見ていかないかい?」
お魚屋さんの店主がアリスを呼び止める。
アリスはふと以前リリスが今度は海老フライが食べたいといっていたのを思い出した。
品揃えを見ると新鮮そうでぷりぷりした大海老が並べられていた。
「あら、お上手ね。せっかくだから見ていきますね」
その瞬間、空に大きな穴が空いた。
その穴は雲すら切り裂いており、底が見えない闇のようなものだ。
「えっ、あれ何?」
「お母さんー!! お空に穴が空いてるよー」
「な、なんだぁ、ありゃ!?」
村人たちはあの穴を見てひどく混乱する。
様々な負の感情が村を支配していた。
そんな村人達をあざ笑うかのようにそこから、紅い稲妻が雨のように降り出し、落ちたところから1万体ほどの魔王軍のモンスター達が現れた。
「み、皆んな逃げろー!!」
誰がそう言った。
だが、それを合図としたかのように一斉に魔王軍が村に襲いかかった。
その瞬間、村人全員が今から起こりうる最悪の惨劇に絶望する。
泣き叫びながら逃げまどう村人とそれを嬉々として追いかける魔物たちはまさにひ弱な兎と飢えた狼のようだった。
アリスも逃げるために地下通路へと向かおうとしたが、その足を止めた。
「助けて! ママ!」
アリスの目の前には幼い女の子がベヒーモスに襲われようとしていた。
走っていた方向を変え、女の子の元に駆け出し、庇った。
怯えて泣いている女の子にリリスの感じてしまったのだ。
「リリス………ごめんね」
アリスは死を覚悟し、目を閉じた。
これは魔王軍幹部の策だった。表向きは魔王軍幹部である黒王と勇者リリス達との戦い。
しかし、本命は別にあった。
黒王と戦いの最中同じく幹部の一人である賢王が勇者の村を強襲し、村を壊滅させ、勇者リリスの心を折る。
誰にも絶対に邪魔されない。
男達は嬲り殺され、女子供達は慰めものにされるそんな絶望的な決まっていた運命。
ベビーモスの巨大で鋭利な爪が無惨にアリスの体を女の子もろとも引き裂こうとした瞬間、まるで雷が降ったような轟音が村中に鳴り響いた。
その刹那、ベヒーモスの短い悲鳴が聞こえた。何かが突如、ベヒーモスを胴体丸ごと斬り伏せたのだ。
(……え?)
アリスは不思議に思い、目を開けるとそこには赤のジャージを風にたなびかせ、右手に剣を持っている双葉イツキが立っていた。
「……イツキくん?」
「あ、リリスのお母さん! おはようございます」
聞き覚えのある声に反応して目を開けて顔を上げると笑っている双葉イツキの姿があった。
イツキは魔王軍の大軍を気にもせずにいつも通りアリスに話しかけている。
「あ、うん。おはよう。そうじゃなくて! これは一体?」
あまりに自然に挨拶をされたものだったからついついアリスのいつも通りの感じで挨拶を返してしまった。その様子は魔王軍に襲われているように見えないほどだ。
しかし、一瞬で正気に戻り、アリスはイツキに説明を求める。
なぜ魔王軍がこんなところに来ているのか? イツキと共に現れた角が生えた人たちは?
さっきのベヒーモスはイツキくんが倒したの?
アリスの頭の中は次々と疑問点が湧き上がってくる。正直、多過ぎてパンクしそうだ。
「これは魔王軍の策らしいっす。今戦ってくれているのは鬼神族って言ってめっちゃ強い戦闘民族です。味方なんで安心してください」
「ああ、なるほど?」
アリスはひとまず、イツキが鬼神族の方と私たち村の人達を助けに来てくれたとだけは理解できた。
未だ黒鬼に受けた傷が治っていないながらも助けに来てくれた15人の鬼神族が村人を守りつつ1万程の魔物達を狩り尽くしていた。
イツキはアガレスに夢を見せられた日からドワーフの村に行き、ドワーフと鬼神族に事情を説明し、助けを求めていたのだ。
「大将……指示通りドワーフの奴らが誘導してほぼ全員の村の奴らが地下道に入っていった。ネルトに着き次第、向こうのドワーフが合図を送るそうだ」
白い短髪に鋭い眼、白羽織を着た鬼神族の若頭である白鬼がイツキに報告した。
イツキは白鬼の報告を受け、いつもの陽気な表情とは考えられないほど真剣な顔で頷いた。
「さあ、お母さん、その子を連れてネルトに向かってください。ネルトの方が断然ここより安全なので」
「イツキ君は?」
「ここでこいつらを倒します」
「………また、会える?」
「もちろん、今度、ご馳走食べさせてくださいよ。」
にかっと笑って答えたイツキに深くうなづき、アリスはネルトに続く地下道へとかけていった。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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