表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/176

第19話 散歩することになりました!




目が覚めたら知らない天井が見えた。和室の木造的な天井だ。


どうやらお布団で眠っていたみたいだ。


……ここどこ? なんっかめっちゃ広い和室なんですけど。右をみると縁側と枯山水の庭があるし……屋敷か何かか?

それになんか記憶が曖昧だ。ドワーフの村に行って……その後俺何してたんだっけ?



「マスターってさ、ばかなの?」



聞き覚えのある甘ったるい声がして、上半身を起こしてみるとバエルが俺の体を布団の上からまたがっていた。



「寝起き早々なんてことを言うんだ君は」



バエルはそう言った俺のことを心底呆れたような様子でジトッとした目で見ている。



「だってさぁ。無策で腐蝕の結界に突っ込んで行って死にかけるんだもん」



あーバエルの一言がきっかけになって色々思い出して来たぞ。


確か、ドワーフの村で回復薬をみんなに飲ませていた時、急に大きな衝撃と音が村中に響き渡った。

それでバエルがリリスがピンチとか言うからダッシュで腐蝕の結界へと入っていったんだった。



「めっちゃ死ぬかと思った……」


「そりゃそうでしょ」


「ま、あの時もバエルがそんな俺をフォローしてくれてたじゃないか。ありがとな相棒」



おそらく、バエルが呪いの進行を遅せてくれなければリリスにたどり着くまで半身が腐り落ちていただろう。



「……全く、マスターてさ。私がいないと早死にしそうだね」



お礼を言われたことに少し照れてしまったのかバエルはぷいと顔を右に逸らした。

気のせいかもしれないが、頬が少しばかり赤くなっているような気がする。



「お? なんだぁ? お主、照れとるのか〜? ほっほほ、ういやつよのぉー」



ぐしぐし〜と頭を撫でてやる。



「う、ウゼェー」



めっちゃうざそうな顔をして俺の体へと戻っていった。

なんか猫の頭を撫でたらめちゃくちゃ嫌な顔されてそっぽ向かれたことを思い出す。



「おお、こじょー目が覚めたのかのー」



ふと、陽気な声がして前を向くとそこにはずんぐりとした白い髭を生やし、指輪をはめたおじいちゃんがこちらにやってきた。


まるでズングリストをそのまま老けさせたような外見をしている。



(……誰だ?この爺さん?)


(ドワーフの族長じゃないかな?)



ああ、なるほど。

それにしてもドワーフってみんな同じような外見してるよなぁ。一目では誰か分からないぞ。



「体の調子はどうじゃ?刀で斬られたところは神器で治せたと思うんじゃが」


「あ、そう言われると。完治してるよ!え、何これすごい!」


神器の力ってすげぇわ……



「あ、じいちゃん。俺と一緒にきた女の子見なかったか?」



リリスは今どうなっているんだろう? 

腐蝕の呪いに体を蝕まれていたが大丈夫なんだろうか?


緊張感が高まり、胸の鼓動はドクンドクンと大きく躍動した。

そのせいなのか、全身が強張る。


「おお、あの子は無事じゃよ。お主が目覚めるまで村の復旧を手伝ってもらっておる」


「……そうか」


おじいちゃんの一言で一気に肩の力が抜けた。


よかった……本当によかった……


ふしゅ〜と風船の空気が抜けるように脱力感に見舞われる。

自身の体の状態を把握する。どのくらい動けるのか軽く体を捻ったり腕を回したりすると特に問題なく動くし、体を動かす際に発生する痛みもなし、うん。もう大丈夫そうだ。


けど念のため


(バエルー俺の体大丈夫そうかな?)


(全快とはいえないけど7割ほど回復してるから大丈夫なんじゃない?)


よし、バエルチェックも済んだことだし起き上がるか。


「こじょーよ。少しわしと散歩でもしないかの?」


「……え?」



ちょっと待っててのーとおじいちゃんは一瞬どこかへ行き、俺が使っていた剣と黒鬼が使っていた刀を持って戻ってきた。



「ついてきてくれーあ、重たいからこっち持ってほしいの〜」



そう言いながら剣の方を俺に渡してきた。

なんで持ってきたんだよ。と心の中で呟きつつ剣を受け取る。


おじいちゃんの言葉通り後をついて歩き屋敷の外を出ると夕方になっていた。

気のせいか夕日がいつもより近くにある気がする。


歩き出すと何人かのドワーフと鬼神族が身体中に包帯を巻いて村のボロボロにされた村の瓦礫などを拾ったりして片付けていた。


「いまだに9割のドワーフや鬼神族は意識がなく動けない状態なんじゃが、起きてるものは無理のない範囲で動いてもらっているんじゃよ〜大変じゃ大変じゃ」



体は神器で完治はしておるんじゃがの。とお爺ちゃんは付け加えた。



「黒鬼の狙いはわしらドワーフ族とわしが持っとる天命の指輪、そして3本目の聖剣じゃった。そして魔王軍に取り入り、幹部となろうとしていたのじゃろ」


階段を上がりながらおじいちゃんは語り始める。


「ねぇ、おじいちゃんその話長くなるやつ?」


「天命の指輪は今わしがつけとるものでな。これをつけたものは神器を完全に使いこなせるという力を持っとるんじゃ」



聞いちゃいないよ……ていうかその指輪チート過ぎない? だって神器って選ばれた所有者しか使用できない筈だろ? それが使いたい放題とかぶっ壊れじゃん。

じいちゃんの話を聞いていたら階段を登り切った。ここは蒼鬼と戦っていた村の頂上だ。

目の前には依然と圧倒的な存在感を放つ世界樹がある。


「3つの聖剣はそしてそれぞれ世界の原始、繁栄、終焉を司っているのじゃ。一つは勇者が、一つは王族が、最後の一つは……ここにある」



ここってことは世界樹の中に眠っているということだろうか?

世界樹の根元まで歩き、世界樹を見上げた。

暖かい風が吹き、葉ずれの音がさざ波のように寄せては返った。

その音はとても聞いていて心地よかった。


「黒鬼は鬼神族の中でも一番強くてのぉ。わしにとってドワーフにとってもも鬼神族にとっても、黒鬼は特別じゃった……」



そう言いながらおじいちゃんは黒鬼が持っていた刀の鞘を抜き、地面に刺した。



「じゃが、それだけでは足りなかったのかの」


そういったおじいちゃんの顔は見えなかった。


「…………」



黒鬼は魔王軍幹部になって何がしたかったのだろうか? 

誰かに認められたかった?

もっと特別になりたかったのだろうか?



その真意は黒鬼と共に消え去ってしまった。


再び暖かい風が吹き、葉ずれの音がさざ波のように寄せては返った。

その音はとても聞いていてどこか寂しそうに聞こえた。













「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです!


何卒よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ