第18話 大丈夫
「……っ!!イツキさん」
体に走っていた激痛が消え、私は脇目も降らず。黒鬼と相打ちになったイツキさんのところに駆け寄った。
倒れ込む、イツキさんを受け止めて、そっと寝かせる。
心臓の音を聞くと僅かながらに心拍音が聞こえてきた。
大丈夫、まだ生きてる。よかった。本当によかった。たまらず、涙だ出てしまった。
「応急処置くらいならできる」
呪いが解けても重症なのに若頭さんがイツキさんを懸命に治癒魔法で処置をしてくれている。
「どうやら、黒鬼を倒してひと段落ってわけではなさそうだ」
「え?」
若頭さんは上に向かって指さした。
釣られて上を見ると未だに黒鬼が張った腐蝕の結界は未だ残っていた。
どうして? 黒鬼を倒したのに……むしろ結界の濃度が高まっているような気がする。
「こいつは使用者の死後強まる呪いらしい。おそらく脱出不可能なほど、強固になっているだろうな」
「それってこの結界に閉じ込められたってことですか?」
そうなるなと若頭は苦い顔をして答えた。
そんな……どうすれば……はっと黒鬼の言っていたことを思い出した。
『本来の力が使えるのであればそもそも俺の作り出す呪いの結界などとうの昔に破壊できている』
私が聖剣の本来の力を解放すればこの結界を破壊できるってこと?
「どうやら考えてることは同じらしい。」
若頭の言葉にコクリと頷く。
この状況をなんとかできるのは私だけ。
目を閉じた。
お願いっ!! 聖剣よ。力を貸してください!!
祈るように聖剣を両手で掲げた。
しかし、何も起きない。聖剣は何も答えてくれなかった。
私が、私がやらないと、じゃないと大切な人が、大好きな人が私の元からいなくなっちゃう。
こんなんじゃ誰も私の傍にきてくれないよ……なのに……なんでできないのっ!? 何も起こせないの!?
……やっぱり私じゃダメなの? 私は、私は……
焦り、苦しみ、恐怖、寂しさ、様々な負の感情が蠢きあって手が震える。手が段々冷たくなっていく。
なんて情けないのだろう。自分が心底嫌いになる。
私じゃあ、どんなに頑張っても……何もっ! 誰か……お願いだから誰か、私に−
「大丈夫だよ」
優しい声がした。直後、暖かい感触が私の握る手を包んだ。
「……え?」
目を開けると目の前にはちだらけで満身創痍のイツキさんが居た。
「リリス……手が震えてたからさ。」
今にも力尽きそうな掠れた声。
「リリスが俺にしてくれたようにさ。手が震えていたら止まるまで手を握るよ。怖いなら、怖くなくなるまでずっとそばにいるよ。絶対に一人になんかさせやしない。だから……大丈夫なんだよ……」
泣きたくなるような優しい笑顔でイツキさんはそう言ってくれた。
まるで太陽みたいに……
イツキさんの言葉が心に落ちていく、冷たかった体は温度を取り戻した。
なんでだろう? すごく安心した。
大丈夫、大丈夫。私は一人じゃない。
そう感じて自然に口元が綻んだ。
その瞬間、聖剣から眩くも神々しい光が生み出された。
「これは……」
まさか、これが聖剣の……
その光は腐蝕の結界を容易く破壊し、大きな光の柱になった。まるで天へと届きそうな果てしなく続いていく螺旋の光の柱は生命力に満ち溢れていた。
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