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第175話 最後の一撃




「……ふん、愚か者め。バカの一つ覚えのように。芸がないな」


「それはどうかな!」



こちらに向かって駆けてきたイツキの姿が突如消える。



「……!? 後ろか!?」



先ほどまでに居たところにあえて終焉の聖剣を刺したままにしていたイツキは座標を聖剣に設定して逃げるを使い、テレポートした。



「これで……!!」


「……甘い!!」



霊王がはめていた指輪は猛々しく光る。



「!!」



その瞬間、イツキがいる空間ごとぐにゃりと歪み、結界のように包み込んで黒い球体となった。



「……対象を空間ごと封じる神器だ。心配するな魔王様の元までそのまま運んでやる」



これで、双葉イツキを完封した。あとは北条ユウヤのみ。



「うおおおお!!」



咆哮を上げて、放たれたユウヤの獰猛な一撃は凄まじい風切り音と共に霊王ザラフの身体へと斬り落とされた。



「がはっ……!」



凄烈な一撃に霊王は初めて血を流す。


途方もない衝撃とスパークしそうな苦痛に表情が歪む。



「このままー!!」


ここでユウヤはある異常にきずく。


(剣が……動かない!?)



「バカが!! 芸がないと言っただろう!」



放たれる手刀にユウヤは身体を捻る。


全能力を回避に費やす。


即座に剣を手放したのが功を奏したのかギリギリのところで躱した。


窮地を脱したが、ユウヤの額には汗が浮かんでいた。


ー武器がない。


霊王に一撃を与えるための武器が。


双葉イツキは言った。


必ず隙を作ると。


これまで何度も共に戦ってきた親友だ。そのイツキが隙を作ると言ったんだから、隙は必ずできる。


必ずー!!



「お前にはもう武器がない!! これで終わりだ!!」



霊王ザラフがユウヤを仕留める何かを創り出そうとしたその瞬間。


パリンと、何かが割れる音がした。


「……な」



振り返った霊王が見たものは……粉々に崩壊している双葉イツキを封じた神器だった。


振り切ったイツキの指には赤い光を宿した指輪があった。


その手に握っているのは赤き魔剣。


使うたびに破滅に向かうその呪われた力は万物をも破壊する。


双葉イツキは魔剣を使って神器を空間ごと破壊した。



「それは……まさか呪われた魔剣か!?」


「もう一度!! 力を貸せ!! 魔剣レーヴァテイン!!」



再び、魔力が猛り狂う。

その熱が指を容赦なく、灼いていく。


色濃い緋色の光を纏った一閃が霊王ザラフに放たれた。



その寸前で、魔剣は自戒した。


「!!」


「神器を無効化する神器だ!! 残念だったな!! お前の切り札は完全に封じた!!」


「……俺の最後の切り札はそこにある」


「ーな、に」



双葉イツキが指さした先には、終焉の聖剣を握った北条ユウヤの姿。



(問題ない! また身体を鋼鉄のように!! さっきよりも強靭に!! イメージしろ!! 十分間に合う)



「いけ。北条ユウヤ」


「うおおおおおおおおお!!」



終焉の聖剣は普段、鞘に収めた状態である。


刃を持ったその鞘は……あらゆる魔法や能力の干渉を受け付けない。


故に


裂泊の気合いと共に放たれた北条ユウヤの一撃は銀光を放ちながら、霊王ザナフの心臓を貫いた。



「な……? がはっ!! ベリアル様……申し訳ございませ……」



ピキっと身体中に亀裂が入り、粉砕した霊王ザラフは、塵となって元魔王ベリアルの体と共に消滅した。



海風と共に舞い散る様子を二人はただ、黙って見ていた。



「……勝ったな」


「ああ」


ユウヤがイツキに終焉の剣を渡しながら言った。激闘の後の疲労か、二人は今にも倒れそうなくらい疲労してた。


程なくして、二人を閉じ込めていた海流が消えた。


イツキが送り出した原始の悪魔たちの戦いがひと段落ついたのだろう。



「……あとは助けが来るの待つだけか」


「多分、キョウヘイとソウスケとリーシャが来てくれるんじゃないかなーあー!! 疲れたー!!」


「ああ、ひとまず、ひと段落ついたな」


イツキは空を見上げる。


先ほどまで曇天だった空が今はこんなにも天青だ。


見上げる蒼穹は遠く高く。



「………………いや、まだ始まってねーよ」


「……イツキ? どうかしたか?」


「俺がここで待っていたのは、お前だ。北条ユウヤ」



ユウヤはその言葉に驚きを隠せないまま振り返るとイツキは終焉を剣を地面に突き刺して拳を握り、構えた。



「やろうぜ。ここから先は双葉イツキと北条ユウヤのただの喧嘩だ。そういう約束だっただろ?」



そう、イツキが言っているのは「本気の喧嘩をする」という前夜に二人で交わした約束だった。



「……く、くく、はははっ」



ユウヤは心底嬉そうに笑みを噴き出しながら大剣を地面に刺し、拳を握り、構えた。



本気だと認め合う。男と男の約束。



あの時の二人の熱は確かにここにあった。



本気で心ゆくまでぶつかり合いたい。ただそれだけのために二人は今から久しぶりの喧嘩を始める。







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