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第172話 神獣





「……なんか、やばいことになってるね」



天にも届きそうな海流の嵐をソウスケとキョウヘイは見ていた。


二人は戦いの後、カナに体を治療してもらっている最中に災害による異変に気づき、即行動。避難誘導の指示や逃げ遅れた人の救助などを行った。


そして現在、闘技場地区にとどまっているのは二人だけだった。



「おー本当にいた」



二人の前にリーシャが現れる。



「僕たちがいくら探しても見当たらないなと思ったら……どこいてたんだよ」


「あー……マスターのとこ」


「リーシャは相変わらず、イツキにべったりだね」


「通じ合ってるから、私たち」


「リーシャさん、答えになってないっすけど」


「マジっすか」


「さて、ここもいつ崩れるかわからない。リーシャは早くここから離れた方がいい」



キョウヘイの言葉にリーシャは不思議そうに首を傾げる。



「二人はここから離れないの?」


「冗談、イツキとユウヤたちがまだ戦ってんのに僕たちだけ離脱なんて出来るわけないだろ?」



ソウスケの言葉にリーシャはぽかんとする。



「え、めっちゃぼろぼろじゃん。二人」


「……確かに俺たちのコンディションは最悪だ。いくらカナに治癒魔法をかけてもらっていたとしても……ね。それでも俺たちはいつだってボロボロでも意地張って、歯を食いしばって戦ってきた」


「……ふふ、何それ」



ソウスケとキョウヘイの言葉を聞いてリーシャ笑う。



「……マスターの言ってた通りになった」


「イツキの? あいつ何言ったんだよ」


「あいつらはきっとボロボロの状態でも戦うだろうから二人を手伝ってくれって」



そう言いながら前に歩き出してリーシャは剣を抜いた。



「手伝うって……なにを?」


「これから始まる戦い」



瞬間、海流が強大な渦を生み出し、その中心地から水飛沫を撒き散らしながら巨大な海竜が姿を現した。



「キィィィィ!!」



その甲高い方向は海を荒らす。その姿はまるで海の慟哭。



「……ナニコレ」


「……んー多分、ここの神獣的なやつ」


「……なるほど、どうしてそんなものが目覚めたのは置いておいて……今はこいつを相手しないといけないみたいだね」



キョウヘイとソウスケが構える。


二人にとって重要なのは一つ。このまま神獣を野放にしてたら、確実にオルティシエの被害は尋常ではないくらい拡大する。


闘技場地区ではなく、全ての地区が水没し、都市オルティシアは崩壊して、全員死ぬ。


なら、自分たちの役割は一つ。神獣と戦い、オルティシアにこれ以上の被害を出さないこと。



「キィィィィ!!」



海竜の咆哮と共に、巨大な大津波が発生した。



「それ、私のマネ? なんだか……気に入らないね」



パン! とリーシャが手を叩いた瞬間、大津波は真っ二つになった。


リーシャ・ミカエルは双葉イツキとの戦いで神域を展開し続けている。


それはすなわち、この空間はいまだにリーシャの支配下にあるということ。



「はい、それじゃー浮かしまーす」



リーシャは自分とソウスケとキョウヘイを浮遊させる。

その直後、3人がいた足場は崩壊し、海に沈んでいった。


それを見越しての浮遊魔法だったのかはリーシャ本人のみぞ知る。



「それじゃ、やりますか!!」



ソウスケは杖を構え、出来る限りの魔力を杖に込める。

射出速度にも魔力を込めて、最速で海竜のもとへ届くように込める。


力一杯凝縮された魔力は青白い閃光となる。


閃光が一瞬の溜めを音もなく拡散し、縦横無尽に空を切り裂くのように円孤を描きながら海竜へと襲いかかり、爆散する。


海竜が怯んだ瞬間を見逃さず、空気を蹴って一気に加速したキョウヘイは一撃を放ち、水竜を海に向けて叩き落とす。


水竜はすぐさま、怒りの咆哮を上げながら海の中から昇竜し、身をひるがえしながら3人まとめ尻尾を使って振り払おうとする。



「ざーん」



リーシャは海竜の尻尾を斬撃で一刀両断する。



「キィィィィ!!」



その咆哮は怒りからか痛みからかはわからないが、一瞬で海竜は自身の尻尾を再生させた。


そして2つの巨大な水球を生み出し、そこから無数の水竜が3人に向けて放出した。


まるでレーザーのように襲いかかる水竜。食らったら体に無数の穴が開く。それでほど威力を持っている。



だから



「ブリザード」



ソウスケは水球も水竜も全てを凍結させ、リーシャは斬撃を使い、粉砕した。



「さすが、神獣様、頭しか凍らないし、多分一瞬で溶けるだろうけど……それでお前は十分だろ? キョウヘイ」



「ああ、もちろんだとも」



キョウヘイは海竜の首下へと潜り込み、拳を握って空へ向かって突き上げた。


粉砕する海竜の首。


無数の氷塊となって、再び海へと落ちておく。



「こんだけやれば流石に……」



ソウスケの言葉は虚しく、海竜は新たな首を再生させて、3度目の咆哮を上げる。



「……なるほど、海のマナを使って自己再生しているのか」


「……おーまじか」


「八王みたいにってこと?」


「それとは比べ物にならないくらい膨大で尋常じゃない回復量と速度だね……神獣は自身の魔力ではなく、海のマナを使っているんだ。不死身とは言わないが……海竜にガス欠はほぼないとみていいだろう」


「……キョウヘイ? つまりどうゆうこと? もっとわかりやすく言って? 僕たちはそんなに無茶なことをしようとしてんの?」


「わかりやすく言うと、この海竜を倒すことは俺たちはこの世界の海水全部を飲み干そうとしていることと同じくらい無茶ということさ」


「はは、それは無理ゲーだ」


「おそらく、召喚者をどうにかしない限りこの神獣は力尽きることはないだろうね」


「じゃ、イツキがどうにかするまで……僕たちが踏ん張らないとだね」


「あーそれじゃ、いっちょ頑張っていきますか」



リーシャの気の抜けた言葉に二人はくすりと笑い、再び目の前の水竜と対峙した。




各自が激闘を迎えている最中、イツキを閉じ込めている海流の頂きで、この災害の元凶たる覇王プライド・ノアは戦況を見ていた。



「さて、今回は結構頑張ったし……コーヒーでも飲みながら待つとしますかね〜」



優雅にコーヒータイムを決め込みながらプライド・ノアは思考する。



(今いことイツキ少年と霊王をタイマンにできたし、救援に向かおうとした神崎ソウスケと一ノ瀬キョウヘイも俺が呼び起こした海竜で足止めできた。そして後は……)



「……なんだ。意外と早いじゃん」


プライド・ノアは入れたばかりのコーヒーを一気飲みした。



「おかげでのどが大火傷だよ。なぁ? 原始の悪魔たち」



海流の頂きにバエル・アガレス・ウェサゴ・カミジナが姿を現す。



「……なるほど、初め見る顔だな。名前は?」



ウェサゴの思考が予想から確信へと変わる。



「うーん。とりあえず、覇王とだけ言っておこうかな?」


「へー覇王なんて、前の世界にはいなかったんだけどな?」


「……つまりそういうことでしょう」



アガレスとカミジナの言葉を聞いて、バエルはため息をついた。



「さて、できたらここで私たちに倒されてくれないかな? この世界のループの元凶」


「……はぁ、バレちまったか。それに今回は俺の知らない悪魔もいるじゃん。骨が折れそうだ」











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