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第162話 船旅と再会と




5大ギルド会議が終わって1週間後。



「うぅ……」



俺は船酔いでダウンしていた。


レギス・チェラムのみんなで水都オルティシアに行くことになったものの、オルティシアに行くには船で入国するしかない。


そう、この都市、島国なのである。


だから船に乗ってどんぶらこどんぶらこと向かっていた。


第一王女であるエレナが用意してくれた船はそれはもう豪華だった。


最初の数十分は初めての船旅だったこともあり、超ハイテンションでソウスケと一緒に走り回っていたのだが、段々と気持ち悪くなった。


そして俺はここ数日間は船室でダウンしている。吐きそうになったら海に吐きに行く。そして船室に戻るこの繰り返し。



「イツキ、待たせたね」


「キョ、キョウヘイさぁん!!」



一ノ瀬キョウヘイという俺の希望がやって来た。



「キョ、キョウヘイ……お前……俺がこんなに苦しんでるのに……どこに行ってたんだよ……」


「すまない。色々と話し合いがあってね……」


「お、俺は……もう、お前が居ないと生きていけない体に……された……のに」


「誤解を招く言い方はやめてくれないかい?」


「は、早く……し、してくれぇ……頼む」


「だから誤解を招くから!」



やれやれとため息を吐きながら魔力を操作して俺の自律神経を整える。気持ちわるさがなくなるわけではないが、気分は大分良くはなる。



「うぅ……帰りたい……」


「あと2日くらいで着くらしいから辛抱してくれないかい?」


「あと2日もあるのか……」


「そんな顔しない……なんせ今回はオルティア国王直々の依頼だからね」



そう、今回俺たちレギス・チェラムに行く理由としてオルティシア国王直々の依頼で「大魔闘演舞」に出場するということにしてある。


そのあたりの説明はエレナが上手いことしてくれているようだ。 


ちなみに今回のメンバーは


俺・ユウヤ・ソウスケ・キョウヘイ・ヒロム・カナ・後からくるリーシャ。そして

 


「レイアは……今どこに?」


「さっきは甲板で見たかな? イツキのこと、心配していたよ」


「そうか……」


「どうしてレイアも連れて来たんだい?」



キョウヘイの疑問は最もだ。受付嬢にすぎないレイアを同行させる必要がない。



「……私情と何かあった時の為。だな」


「それはどういう?」


「……それは内緒だ。ちょっと行ってくるわ」



無理矢理、体を起こして甲板に向かう。



「……イツキ」



 キョウヘイの呼び止める声に振り向かず、動く足を止めた。



「今回の依頼…… 大魔闘演舞の出場とイツキの人選メンバー何か裏があるのかい?」



キョウヘイは違和感に気づいている……多分、ユウヤとソウスケも気が付いているであろう違和感。



「……今回、カナを同行させたのは大魔闘演舞に出場させるのではなく、何かあったときに傷を癒せる治癒師が必要だから、ラクスが今回メンバーに入っていないのは、あいつにギルドマスターとしての経験を積ませるため……そんで、ラクスの代わりにヒロムを出す。この船乗る前に説明しただろ?」



「……確かに、言っていた。俺はそれを嘘だとは思っていない。だけど、何かを隠してるんじゃないのかとも思う…………何か言えないことでもあるんじゃないかってね」


「ばーか。言えないから、内緒なんだろうが」


「………………それもそうか」



納得した様子のキョウヘイを確認しながら俺は船室に出た。


こいつとの付き合いは伊達じゃない。

よほどの件じゃないかぎり、俺が一人で抱えこないことは知っている。


俺が放った一言である程度は察してくれるはずだ。


俺はふらふらになりながらも何とか甲板にたどり着いた。



「イツキさん!? 大丈夫!?」



心配そうにしながらこちらに駆けつけてくれるレイア。



「ああ、ちょっとレイアに用があって」


「え? 私?」



背中を優しくさすりながら首を傾げるレイア。

 


「……オルティシアに着いたら、ちょっと二人で出かけないか?」


「え? う、うん……いいけど……どうして?」


「……大事な話があるんだ。俺たちの今後について」


「……? ええ!? い、いいいイツキさん!? それは一体どういう!?」


「……言葉の意味だけど。俺とレイアとの今後というか、関係性というか……あ、ごめん。もう無理っ」


「あ、あえ? へ? あ、う、うん……え?」



 吐き気が一気に込み上げて来たので口を押さえ、猫背になりながら立ち去った。


呆然と混乱でピヨピヨしているレイアを放置して。



 「「おえええええ」」



溜まっていたものを母なる海に解放していると隣に同士(ゲロ仲間)がいることに気づいた。



「……シュンさん!?」


「イツキ少年!?」



「「なんでこんなところにオロロロロー」」


 あ、だめだ我慢できない!! とりあえず全部吐き出してからじゃないと!!

 俺とシュンさんはとりあえず吐きまくった。



「……そうか、ギルドの依頼でねー」


「ああ、シュンさんはツバサ一座のみんなと仕事で?」



ひとしきり吐いた後、俺とシュンさんは横並びしながら海を眺めていた。


え? 海を眺める理由? それはもちろん、いざという時に吐けるようにするためだ。



「そそ、ま、この船には俺だけしか乗ってないけどー」


「え、なんで?」


「サボりすぎて俺だけ置いてかれちゃった☆」


「なにしとるダニ〜!」


「はは、なぁ、少年。もし時間があったら見に来てくれよ……」


「え?」


「……これが、最後になるかもしれないからさ」



そう言ったシュンさんはとても真面目な声で……その厚底メガネの奥に秘めた瞳をなにを見ているのか……俺にはわからなかった。



「……もしかして、サボりすぎてクビになるの?」


「ふ、そうかもな」


そういうとケラクラと笑い、シュンさんに戻った。


え、まじなの? 冗談なの? どっちなの!?



「まぁ、シュンさんの晴れ舞台だし、行くよ。絶対に」


「ああ、彼女と一緒にな。俺にも紹介してくれよ〜? 忘れてないよな? イツキ少年?」


「………………行くよ……多分」


「それ行かないやつじゃん!!」




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