第14話 いってらっしゃい
うっかり転送され、光が消え、見えたのは天をも貫きそうな巨大な樹だった。
す、すごく大きい。
あまりの大きさに腰を抜かしてしまった。
(ば、バエル……あれは?)
(あれは世界樹だね。)
おれ達がいるのは世界樹の根っこ部分で周りには全体的に和の雰囲気が漂っており、平地が少なく、狭い土地に建物が密着している。
村の頂上には何やら紅く染まった半球体の結界のようなものが張られており、中の様子がいまいち分からない。
や、やってもうた。俺も一緒に転移してしまった。
「え? イツキさん? どうして?」
リリスが面を食らった様にぽかんとしていた。
でしょうね!! や、やばい……どう説明しよう。
「えっと、ほ、ほら! ドワーフと鬼神族のみんなが襲われてしまったって言っていただろう? だったら俺の持っているポーションで助けられないかなって思ってさ……それでその、つい。」
その場で考えた理由を吐き出したら二人ともなるほどと頷いてくれた。
よ、よかった。なんとか誤魔化せたみたいだな。
「それじゃあ早速、みんなを助けに行こう。ズングリット案内頼む」
「わ、わかった!」
俺たちはズングリットに案内されて村の上層へと走り出した。
上層に辿り着き、周囲を見渡すとそこには背丈が低く筋肉質な体の髭を蓄えたドワーフと見た目は人となんら変わらない鬼神族がたくさん倒れていた。
全員がひどい傷でもはや風前の灯だった。
3人ですぐさま手当たり次第に回復薬を飲ませる。
だけど、誰一人傷が治ることはなかった。
「な、なんでだ?」
(これは……みんな呪いに侵されてるね。しかも強力なやつ)
(バエル!?)
(ポーションが無駄なわけじゃないけど、それはあくまで死ぬするまでの時間稼ぎみたいなものだよ。これは呪いを発動させている奴を倒さないと消えないタイプだね。)
ポーションじゃあ根本的な解決にはならないってことか!
「が、がはっ!?」
一人、ズングリッドがポーションを飲ませていた鬼神族の男がかろうじて目を覚ました。
「だ、大丈夫ですか!?」
リリスが目を覚ました鬼神族の元に駆け寄る。
「あ、ああ。ズングリットか、助けを呼んできてくれたんだな。」
「そうだよ!! 今って一体どうなってるの!?」
「みんな、裏切った黒鬼にやられてしまって、奴の呪いに……がはっ! それで、若頭は呪いを解除するために一人で蒼鬼に戦いを……」
目前の階段を登り切った先にある紅い結界を指差しながら息を切らし貴親族の男は言った。
「あれは黒鬼による腐蝕の結界だ。中に入った敵を容赦なく腐蝕による呪いで腐り落としてしまう。若頭は唯一の対抗できる神器生命の腕輪を持って行かれた」
状況を整理すると、ここにいるみんなは裏切った黒鬼って奴により腐敗状態になってしまった。その腐敗は俺が今持っている回復アイテムでは直せなくてせいぜい延命処置の効果しかない。
で、元に戻すには黒鬼を倒さないといけない。そうするために鬼神族の若頭が黒鬼に戦いを挑みに行ったと。
そして目の前にある結界は万物を腐蝕させてしまう呪いの結界。
「……イツキさんとズングリット君はこのままみんなに回復アイテムを飲ませてあげてください。私があの結界に入って黒鬼を倒します」
リリスがそんなことを言い出した。
「待ってくれ!! あの結界は入ったら一貫も終わりなんだぞ!?」
そんなところに行くなんて、自殺行為だ。
思わず声を荒げてリリスを止めてしまう。
「大丈夫です。私の持っている剣があれば結界の中でも無事なはずです。それに私って結構強いんですよ?」
少し軽口を交えながらリリスは言った。だけどリリスの顔を見ると彼女は覚悟を決めた表情をしている。
その瞳は一才の曇りがなく、その瞳を見ていたら何も言えなくなってしまった。
確かにこのままじゃあ何も変えられない、むしろ状況は悪化するだけだ。
今はリリスを信じるしかないのだろう。
少なくとも今の俺よりかは強いのだから。
なら俺は今出来る事をしなくては!
「分かった……俺とズングリットはここでみんなの介抱をする。リリス、あまり無茶はしないでくれよ」
「はい」
リリスは腐蝕の結界に向かって階段を登っていく。
「リリス!!」
俺の呼びかけに不思議そうに振り向いた。
今の俺にはこんなことしかできないけど……せめて背中くらいは押してやりたい。
「いってらっしゃい」
そういうとリリスは嬉しそうにはにかみ見ながら
「いってきます」
と答えて結界に入っていった。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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