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第137話 双王クォーツ




撃ち漏らすことを許されない撃ち合いの中、双王クォーツは目前の敵について考えを巡らせていた。



(ふむ、あまり得意ではないが、得ている情報を整理しつつ戦っていくとしよう)



まず、エレナ・フォン・キャメロット。

彼女がこの中での主戦力、剣を使った近接戦かつ光魔法も使ってくる。

魔力・技量・速さは人間の中でもトップクラスの部類に入る。

最も警戒しなければならないのは彼女だとクォーツは感じた。



しかし



「……く」



エレナが放つ星の弾丸ミーティアがクォーツの放つ闇の弾丸トリリオンに押され始める。

一秒ごと同時に30発ほどは撃ち合っている。

人間にしては集中力も魔力も類まれなるものだとは思うが、魔力総量はこちらに分があるようだとクォーツは考えた。

そして様子を見るにあと数秒後には満足に弾き返せる限界がおとずれるだろう。


クォーツの予想通り、エレナのミーティアは何発かクォーツのトリリオンを撃ち漏らしてしまう。


しかし、打ち損じた闇の塊がエレナ達を貫通することはなかった。

まるで魔力避けの加護があるのかのように複数の闇の塊が弾かれていく。



(これは召喚獣の力だろう)



小宮リンカ。


召喚師である彼女は召喚獣を使って多彩な役割を果たしている。

後方支援、傷の回復、攻撃の防御。


今も治癒の精霊を使って黒田コウヤの足と手を治している。

召喚師の一番の利点はその多様性だ。

さまざまな召喚獣を召喚できるほど、できることが増えてくる。

攻撃魔法を使った魔法使いのような役割

治癒師のような役割


その他移動手段等小宮リンカの召喚獣のバリエーションは多岐に渡るだろう。



(……今まで戦ってきた中で同時に複数召喚できる召喚師は初めて見る)



正直、残していては一番厄介な相手だ。

しかし、安易には踏み込めない。

彼女を守るように黒田コウヤが立ち回っているからだ。


黒田コウヤ。

オキニスを吹き飛ばした時は驚異的な瞬発力、爆発力に警戒したが、その力に体がついていないようだ。

こちらに気づかれないようにはしているがおそらく、片足と片腕はもう使いものになっていないだろうとクォーツは予測していた。

しかし、それでもその力はオキニス含め自身を上回っていたことは事実。

何をしてくるかも知れない。


黒田コウヤにはそう思わせる何かがあるとクォーツは感じ取っていた。



「そこっ!!」



エレナとの魔法の激しい撃ち合いの中チユはクォーツの間合いに踏み込んでいた。



(……疾い!)



予想を超えた速度で距離を詰めてきたチユに驚きながらも体は自然と彼女の剣に対して反応していた。

凄まじい風切り音と共に振られる斬撃をクォーツは細剣で弾き、剣と細剣は火花を散らし合った。




(……反応された!!)



チユも確実に入るであろうと思っていた一撃に反応され、驚くがそのまま剣を振り切った。

彼女は今、魔力の纏化を行なっていおり、筋力も爆発的に上がっている。



(問題はない、このまま押しきってクォーツの体制を崩す!!)


二度目のチユの踏み込み。

幾重にも振るわれる剣線を防ぎ切るクォーツ。

チユの稲妻のごとく剣戟をクォーツは疾風のような捌きで受け流す。

剣と細剣が触れた瞬間、チユの一閃の重さと衝撃がクォーツの手に伝わる。

その瞬間、クォーツは力負けをすると判断して剣を受け止める動きから受け流す動きにシフトしていたのだ。

そしてそのままクォーツはチユに力の流れごと跳ね返した。

これはクォーツの剣技だ。


(!? こちらの力を利用して跳ね返してきた!?)



大振りに振っていた剣を跳ね返され、体制を崩したのはチユだった。

とどめと言わんばかりクォーツがもつ細剣の切先から白い閃光が迸る。

あと数秒後の自分の死を悟ったチユはばっと手を出した。



「!!」



クォーツは反射的に体を後退させ、チユとの距離を取った。

その瞬間、チユの姿がクォーツの前から消えた。

チユはまるで転移したかのようにエレナ達の元に戻っている。



(……これも小宮リンカの召喚獣による力だろう。まるほど、同時に3体か)




「ありがとう」


「う、ううん」


リンカに頭を下げながら、チユは考えていた。



(やっぱり……私の情報もユウさんによって知られていた……それが逆に助かった)



(……グランドマスターチユ・セルシア。彼女の呪いは触れるだけでこちらにも被害が出ると言われている。出来るだけ、接触は避けなければ)



チユ・セルシア。

魔剣の呪いによって体を蝕まれている彼女は触れただけでもダメージを与えらえることができる。

ゆえに触れるのはご法度。


もう一度魔剣の力を使うと死ぬとのことなので魔剣は使うことはないだろうとクォーツは考えていた。


しかし、その考えは外れていた。


チユ・セルシアは現状双葉イツキが呪いを半分以上受け持ったことにより、触れても呪い他人に呪いが干渉することはなくなった。



(この手を避けるように攻撃を中断し、後退したのを見るにこの呪いは他人に干渉することを知っている。今はもうそんな力はないけど、その勘違いを利用して奴の神経をすり減らす!)


双葉イツキによって生み出された情報の間違いを手札の一つとして利用する。

そうチユは考えた。



「……思っていた通り。一筋縄ではいかないようだ。ユウ・ハイゼンベルグがなかなかこちらに付かない理由がわかる」



クォーツはそう言った瞬間、夜空に花火が上がった。

その場にいる全員がほんの一瞬空を見上げる。

その花火の意味を理解していた黒田コウヤは笑い、エレナ・フォン・キャメロットは目を潤ませた。


これによってコウヤたちが描いていた筋書きは次の段階へと進む。



「つーわけだ……こいつを借りていく」


「ひぃん!?」



コウヤはリンカつ連れてすぐさま次の行動を移す。


双葉イツキは確実に負傷している。下手したら致命傷を負っている可能性だってある。

そう考えているからだ。



「……わかりました。こちらは任せてください。イツキさんをお願いします」


「あの人はきっと無茶をしているだろうから」とエレナは困ったように笑う。



それに対し「だろうな」と言いながらコウヤはリンカを傍に抱え、イツキがいる丘の上へと跳躍して行った。



「おや、どこに行くつもりー」



コウヤとリンカに向けて魔法を放とうとした刹那、それは現れた。



「神器解放」



それはこの機を狙っていたかのように。

それは突風のように。

音もなく。

弓矢のようにまっすぐに。

光の線を描きながら。


大地を貫くと言わんばかりの巨大な槍が暗愚に向かって放たれ、爆裂した。

爆裂の衝撃波がズシンと骨身に浸透するかの如く響きわたり、空気の振動があたり一体に伝わった。



「さて、約束したからにはちゃんと働かないとね」



そう宣言したグランドマスターの一人ユウ・ハイゼンベルグが姿を表した。










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