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第135話 最後の一撃






ルイは剣を構えた。

その構えはまるで居合の構えのように見える。

心臓を加圧し、全身に血液を送り酸素を胸に送り込み。



「邪魔ー」



ー加速!!



オキニスが言葉を言い切る前にルイは神速の踏み込みからの居合いの突きを繰り出した。



(見えー)



その一閃は双王の目ですら捉えられず、まるで瞬間移動でもしたのかと錯覚させるものだった。

超重突進にも見た神速の突きはオキニスの心臓を貫き、八王城の防壁にまで到達するほど押し飛ばしていた。



「がはっ!!?」


「はぁぁぁぁぁ!!」



あまりの衝撃の強さに城壁にひびが生まれる。

ルイはオキニスを貫きそのまま剣を壁に突き刺し動きを完全に止めた。

一秒でも長く、縫い止めるために。



「ちぃぃ!! 放せ!!」



オキニスの右拳がルイの腹に深く突き刺さる。



「がはっ……」



その衝撃で内部の臓器が破壊され、苦しそうに血を吐いた。

口の中が血の味がする。

もう無理だ。

終わりだ。

そんな言葉を心の中でたくさん叫んでいる。

それでも、剣聖ルイは剣を握る手を離さなかった。


その姿を見たオキニスはさらに力を込めて、ルイの体を深く貫いた。



「……ぐっ……うぅぅ……!!」



双王オキニスと剣聖ルイは互いに身体を貫いている状態になった。



「諦めな! 俺にはまだ再生能力が残っている……無駄なことなんだよ!!」


「ああああああ!!」



そう言いながら左手をルイの顔面に放とうとするが、その動きを読んでルイはオキニスの拳を掴んだ。

その手の力はとても力強い。



「絶対に逃さない!! 絶対に!!」


その目は血で濡れていたが、確かに燃えていた。

剣聖は吠える。



「っち!!」



その咆哮を聞いたオキニスは貫通した右手を抜こうと右腕を引っ込もうとするが



(……はぁ!? 腕が……抜けない!?)


「逃がさない……!!」


「っ!! テメェ! なんでだ!? なんでその手を離さねぇ!? 身体中に激痛が走ってるはずだ! 死に体のはずだ!! なのに!! なんでテメェはその剣を握ってられる!?」



オキニスには分からなかった。

ゆえにみっともなく大きな声を出す。

理解できない故の恐怖心がオキニスの心を脅かした。



「違う!! 私が今握っているのは剣なんかじゃない!! 私が握っているのはたくさんの命だ!! だから、たとえこの命が絶えようとも!! この手だけは絶対に離さない!!」



何のためにここにいる?

何のために立っている?

何のために姉リン・オルテシアは命を懸けて敵の切り札をたった一人で防いだ?

何のために友ユメ・オルソラは魔力を使い果たしてまで自分たちを生かした?


全ては……目の前の敵を倒す為!!

たくさんの村や大きな王国で生きている沢山の人達を守る為!!



「剣聖を……舐めるなぁぁぁぁぁ!!」



剣聖ルイの獰猛な目がオキニスを離さない。

身体中の血が騒いでる。

絶対に倒す。

そう訴えている。



「っ!! 離れやがれぇぇぇぇぇ!」



オキニスは咆哮を放った。

咆哮によって生まれる衝撃波で自身の腕を引きちぎり、ルイを吹き飛ばした。


その時ルイは確かにみた。


神々しく光り輝く聖剣を掲げている勇者リリスの姿を。



「ありがとう」



リリスの瞳の色は黄金色に変わっている。



「神級魔法エンシェント・レクイエム!!」



両手で垂直に大きく振り抜いた。


その輝きは敵の存在を許さない無慈悲なる光。

太陽と月と星の光を集め濃縮させ、神の力に変え、自身が敵と認知した者を完全に消滅させる神級魔法である。



「はあああああああああああああ!!」


「ああああああああああああああ!!」



双王オキニスはエンシェント・レクイエムを両腕で受け止めた。

聖剣の光によって消滅されているのを対抗するかのように再生を繰り返している。


しかしそれはほんのわずかな抵抗だと思っていたリリスは驚愕した。



(うそ……再生するスピードがだんだん速くなっている!?)



生き物には進化という現象がある。

人間でいうとそれは成長もしくは能力の覚醒だ。

成長・覚醒というものは人間だけの専売特許ではない。

そう魔物にもあるのだ。


それは竜王のように幼体から成体になるように

双王オキニスはまさに成ろうとしていた


別の何かに。



「お、オオオオオオオオ!!」



現状、勇者リリスが双王オキニスに勝つには、今ここで、迅速に聖剣を振り切る必要がある。

一刻も早くケリをつける必要がある。



(斬れろ!! 斬れろ!! 振りおろせ!! 神級魔法は一度しか使えない!! 魔力が空になる!! つまりもう後がない!! そしてもう今以外!! このオキニスを倒すチャンスは訪れない!!)



勇者リリスは今


全身が痛い筈だ。

それは外傷だけではない、身体の中だってそこら中痛い筈だ。

キツイ筈だ。

苦しい筈だ。


目の前の敵はさらに強く進化しようとしている。


心が折れてもおかしくない筈だ。


しかし



「みんながこの千載一遇を作ってくれた!! だから絶対に斬る!! 絶対に!! 諦めない!!」 



彼女の剣は決して折れることはない。

これは彼女だけの一撃なんかじゃない

これは彼女達の最後の一撃



「だから……いっけぇぇぇぇ!!」



ぼろぼろまでやってきたからだ。

限界までやって、ギリギリまで覚悟決めてここまでみんなで戦ってきたからだ。


だから、勇者リリスは聖剣を最後まで振り切れた。



「はあああああああああああああ!!」


「おおおオオオオオオオオオオ!!」




原始を司る無慈悲なる審判の光がオキニスを再生する暇も与えず、一瞬で消滅させた。

まるで天へと届きそうな果てしなく続いていく螺旋の光柱は生命力に満ち溢れていた。





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