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第132話 分断



拠点を守るように世界から集まった強者たちは魔物の大群と戦っている。


今、最高戦力たちが魔王軍幹部との命をかけた激闘が繰り広げられようとしているからだ。

たくさんの人、ドワーフ、鬼神族達の協力で創り上げられたこの拠点の中で。



「さて、まずはあいつらを分断させるところからだな」



グランドマスターとしての正装を身につけた黒田コウヤが双王に向かって歩き始める。



「さっさと準備しとけタコ助どもチャンスは一度きりだ。ヘマすんじゃねぇぞ」



「……は、はい!!……よろしくお願いします!」



リリスが頭を下げ、リリスとルイとリンは姿を消した。

どこかにテレポートしたのだろう。


そうオキニスとクォーツは予測した。



「おいおい……なんだよー怖くなって逃げちゃったか〜?」



双王オキニスはがっかりした様子で腕を組みながら言う。

せっかく楽しくなってきてギアの上がってきたところなのにと警戒を解く。

理由は一つ。

警戒する必要がないからだ。

双方の距離は30メートルほど。

それは何をされても絶対に対処できると言う自信の現れだった。



「……あなたは……確かグランドマスターの」



そんなオキニスとは対照的にのんびりとしながらも愚者クォーツは警戒を解かなかった。



「ああ……別に忘れてくれていい……どうせお前らはここで死ぬからな」



それは笑いに似たような表情。

口元を釣り上げて、黒田コウヤは疾走した。

渦巻く突風。

狙うのは双王クォーツ。

嘗めている奴なら一撃を確実に与えられる。


それは確実に当てなくてはいけない一撃。

ミスは許されない。


たったひと呼吸、いや、それにも満たない間に距離を詰めてきたコウヤに双王は驚愕する。


黒田コウヤの体を乗っ取っている原初の悪魔ウェサゴは自身の力の約10%の力で疾駆した。

だがそれでもその力は到底人間の体には耐えられるものではなかった。


踏み込んだ右足の骨が砕けだ。

木っ端微塵だ。

それに筋肉も繊維が断裂する。


しかし、その顔は痛みによって歪められてはいなかった。

むしろ、笑っているように見えた。



「さぁ、始めようか」



躱しようのないタイミングで稲妻めいた右拳がオキニスの体に容赦なく放たれる。



「は?ー!!」



双王オキニスは瞬間反応だけで防御するが、その拳の威力、あまりの衝撃に弾丸のように吹き飛んでいった。


拳が砕け散る音がした。

それは原初の悪魔の力に人間が耐えられていない音だった。



(恐ろしく速い!! 反応は出来たが、見えなかった! なるほど……)



「やるじゃねぇーの!?」



追い討ちをかけるように圧縮させた空気の塊が高速回転しながらオキニスに突撃する。



「エアブラスト」



それはコウヤが駄目押しとして放ったエアブラストだった。



「っー!! 後ろはー!?」



オキニスが突風となって吹き飛ばされながら見えたのは大きなゲート。

双王オキニスは拠点にあった八王城へ繋がる転移ゲートに吹き飛ばされていたのだ。



「……なるほどね。受けて立ってやろうじゃねーか」



そう双王オキニス笑みを浮かべ、そのまま無抵抗でゲートを潜り、八王城へとワープした。




「……さて、どこか辺境の地に飛ばされちまったかと心配したが、ここ……黒王の城じゃん!! 懐かしー!」



「ええ、それと……あなたの墓場になるところよ」



八王城を見て懐かしんでいるオキニスに賢者リンが話しかけてきた。

賢者リンだけではない。

勇者リリス・賢者リン・剣聖ルイ・聖女ユメ。

勇者パーティ4人が揃っていた。



「いらっしゃーい」



聖女ユメはいつもと変わらないゆるい感じで手を振った。

その変わらない様子が3人にとっては心強く感じる。


キャメロット王国と拠点をつなぐ中間地点である八王城に転移させることにより双王を完全に分断させる。

第一王女エレナ・フォン・キャメロットと勇者パーティとグランドマスターで考えた策の一つだった。



「……なるほど〜さっき姿を消したのはここに転移してたってわけかー」


「あなたはここで……私達が倒します!!」



リリスはそう言って月光を反射させながら聖剣を抜いた。



「いいねぇ……それじゃあ……やってみろよ!」



勇者リリスの宣言に対して双王オキニスは不敵に笑う。

緩やかに体を揺らし、ごうっという旋風を払いながら敵を全滅させる為に一気に踏み込んだ。

その50メートルある距離を一瞬で詰めるかのように。



(来る!!)



4人全員が目の前の敵に集中する。



「行くわよ!」



賢者リンは魔力を足に溜め、力強く踏みつけた。

魔力を送り込むことによって大地の破壊エレルギーを呼びさます。

地響きと共に向かってくる双王オキニスに対して岩槍を一直線上に噴射させた。


グランドバニッシュ。


土属性の上級魔法だ。


疾駆する双王オキニスの迎え撃つは大地の噴出。



「おっと……!!」



奔る岩槍を受け流す。

双王クォーツは体を捻らせ、最小限の身のこなしで速度を落とさず岩槍を右側に避けた。



「はぁぁ!」



ところを勇者リリスは聖剣を斬り込み、オキニスの右腕が飛ぶ。


リンは魔法でオキニスの動きを回避という行動に制限させたのだ。

そして、右に避けるか、左に避けるか。ある程度はどのように避けるのかが予測できる。


リリスはオキニスの回避方法を予測し動きを先回りしていた。

右腕が斬られ血を噴き出すオキニスに追撃を加える為に反対側からすでに聖剣ルイが剣を振り払おうとしていた。


狙っているのはリリスが斬ったことによって防御がガラ空きになった右側。



「残念♪」



オキニスはまるで後ろにも目があるかのように右脚で精密にルイの腕を蹴り上げた。

そして両腕を上げらさせたことによって生じた大きな隙をオキニスは不敵な笑みを浮かべながら刈り取った。



「がっ……はっ」



剣聖ルイの鳩尾に深々と拳が刺さり、彼女の体を50メートルの離れているであろう森の木々へと吹き飛ばしす。


森から木が衝撃によって折れる音と倒れている衝撃音が止まらない。

オキニスはその動作を一瞬にも満たない速度をやり遂げた。



「次はお前だ♪」



既に次の一手へと行動を起こしていたリリスに放たれたオキニスの拳はまさに閃光だった。

視認さえ許されない。


頭部・心臓・鳩尾


絶拳が放つは全てが急所となりうる三連弾。



「ー!? っぐ!!」


リリスの体は竜巻のように回転し勢いよく吹き飛び城壁へと激突する。

欠けたセメントをパラパラと落としつつ、どさりと落ちた。



「さぁ……もう半分も減っちまったなぁ?」



双王オキニスは賢者リンと聖女ユメに向かってそう言った。



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