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第13話 ドワーフを助けに行くことになりました!




「ぜぇ。ぜぇ。ぜぇ。リリズー待っでぇー」



息を切らし、鼻水を垂れ流しながらリリスを追いかけ続けるがリリスの姿を見失ってしまった。

ど、どこ行ったんだ?


一旦立ち止まって乱れまくっている息を整える。ぽたぽたと汗がこぼれ落ちる。


し、しんどい。ただ走ってるだけなのにこんなに辛いだなんて……糞!!

こんなことならこもっている時期に早朝ランニングの一つでもしておけばよかったっ!! こんなことなら!



(バエルー!! リリスが今どこに居るか分かるか!?)


(えーとねーここからちょうど西方面にまっすぐ進んで5分くらいのところだね。ここは丁度何かが落下したところに向かってるよ。)


(は? 西方面ってどっちだ?)


(…………)


(無言の圧やめてくれませんかね?)


(右向いてそのまままっすぐだよ。)


(合点承知!!)



額に浮かぶ汗を袖で拭き取って、呼吸を整え、再び走り出した。

急がねば、もう一踏ん張りだ。



「リリスー!!」



無我夢中に走っていたらリリスの後ろ姿を捉えた。

頑張って速度を上げる。あと一歩、そうもう一歩早くと走ってやっと肩が並んだ。



「え? イツキさん!? ど、どうして?」


俺がついて来たのがよほど意外だったのか驚きで目をぱちくりとさせていた。


「だって……一人じゃ心配だから」



リリスは目をぱちくりとさせたまま前を向いた。



「……ありがとう、ございます。えっともう少しで落下地点なので急ぎましょう」



えっ? そ、速度を上げるのか? もう限界なんですけど……

必死でリリスについていき、衝撃音の発生地点についた。

そこには小さなクレーターが生まれていた。


クレータの中心にはずんぐりな肌が褐色の6歳くらいの少年が身の丈に合わない剣を持ちながら傷だらけで倒れていた。


俺とリリスは血相を変えて少年の元に駆け寄る。



「大丈夫ですか!?」



リリスは少年を介抱しながら心配そうに話しかける…



「う、うぅ……」



リリスの呼びかけに応えるように少年のうめき声を出した。

よかった意識はあるようだな。しかし、傷がひどいな……あ、そういえばみんなから貰った回復アイテムを使えば!



「ちょっと待ってろよ。えーと。」


ぽんと魔法でアイテムポーチを出してごそごそと中身を確認する。

あーまぁ、これでいいかと赤色のポーションを取り出して少年に飲ませてあげる。



「イツキさん、今のポーションは一体どこで手に入れたんですか?」


「え? ああ、これはギルドにいる友達に貰ったんだよ」



確かクエストに向かう時に珍しくギルドにいたソウスケになんかアイテムくれってせがんだらめんどくさそうにくれたんだよな。



「これ、普通に買ったら10万ギルはするハイメガポーションですよ?」


「えっ!?」



ま、マジかよ!? じゅ、10万ギル!? こんなアイテム持ってたあいつ何者なんだよ……今度からはソウスケに媚びていくかぁ。


ハイメガポーションを飲ませた直後、瞬く間に傷が付いた少年の体が治っていく。



「……んん? あ、あれ?おいらの怪我は?」



目を覚ました少年は驚いたようにまじまじと自分の体を見つめている。



「おはよう。まずはそうだな……名前からだな…俺は双葉イツキ、このおねぇちゃんはリリス、君の名前は?」



出来るだけ優しい声で少年に言った。



「お、おいらはズングリット……です」


「ズングリッド、体の調子は悪くないか? 一応ハイメガポーションを飲ませたから大丈夫だとは思うけれど」


「あ、だ、大丈夫です! あ、そ、そうだ!! ここは勇者の村で合ってますか!?」


「そうですよ。ゆっくりでいいので何があったのか教えてくれますか?」



リリスも少年に落ち着かせるように優しく話しかける。


「その……おいらの村が襲われて……それで、勇者の村に行ったら誰かしら助けてくれると思って、おいらだけでもってこの剣と転移できる魔道具を持たされて……」



ズングリットは話の途中でリリスの持っていた剣を見て目を大きく見開き、彼女の顔を見た。

リリスはズングリットの目線に何かを感じ取ったかのようにコクリと頷いた。



「実はおいら、ドワーフ族なんだ」



(ドワーフ族?)


(確か、神器を作れる超高度な鍛冶と工芸技術を持った種族だったよね?)


(は? なんでそんな詳しいんだよ?)


(いや、この世界について色々とみんなが教えてくれてたでしょ? 何で私がちゃんと覚えていてマスターが忘れてるのさ。)



そういえば、この2週間、イツキ十時軍であるユウヤたちにこの世界のことを教えてもらっていたんだ。


あー色々と思い出してきたぞ。確かドワーフ族は金属などを加工し、魔力ある武器や宝を製作できる種族で、魔王軍と人間側どちらにも属していない完全に中立の立場だとユウヤが言っていたな。


それで、ドワーフが製作した魔道具や武器の中で特に強力な力を有するものを神器と呼び、それは名の通り神の力を宿すと言われている。


俗にいうチートアイテムである。


神器も聖剣同様使用者を選定し、神器に認められた者にしかその力を発揮できない。

この神器こそが、基礎的な能力に大きく上回っている魔王軍に対抗できている理由の一つらしい。


自分だけのスペシャルウエポン……ロマンしか感じない、俺のいつかは手に入れたいものだ。


で、話を戻すが、そんな強力な力を持つドワーフは魔王軍から狙われているらしいが未だドワーフの村は見つかっていないらしい。



そんなドワーフが今、目の前にいた。



「その、鬼神族の一人がおいらたちを裏切って、ドワーフや鬼神族のみんなをやられて、おいらは転移の神器を使ってここまで逃げて来たんだ」



む、また新しい単語が出て来やがったぞ……鬼神族? なんだそりゃ? そんなの習ってないよぉ!!


(バエル、鬼神族について何か知ってたりする?)


(鬼神族とは高い戦闘能力を有するこの世界最強の戦闘魔族で、ドワーフと同じく魔王軍にも人間側にも属さない中立な立場の魔族だよ。数は30人ほどで少ないけれど、たったそれだけで魔王軍と正面から渡りあえるまじでやばい奴らだよ)


(え? それマジ? 強すぎない? 話盛ってない?)


(持ってないよ。マジだよ)


(ひぇ……)


「えっと、裏切ったとはどうゆうことですか?」



リリスは俺の聞きたかったことを代弁してくれた。

そうだよ…裏切ったってどういう意味だ?


「おいら達ドワーフ族は鬼神族と協力関係にあったんだ。鬼神族はドワーフ族を力で魔王軍から守って、ドワーフ族は魔法道具を鬼神族に作って生活の支援をする形でお互いを助けあっていたんだ」



それなのに……とズングリッドは言葉を続ける。



「族長の親衛役である鬼神族が裏切って族長を人質にして籠っているんだ!! 多分おいら達を魔王軍に売ろうとしているんだと思う。このままじゃ、おいら達魔王軍の奴隷となってしまう……」



なるほど、チートアイテムである神器を作れる技術を持つドワーフ族……魔王軍がその力を欲さないわけがないというわけか。



「お、お願いします!! 身勝手なのはおいらでもわかってます!! おいら達を助けてください!!」



ズングリットは大声を出しながら己の感情を包み隠さず吐露し、藁にも縋る思いで俺達に土下座をしている。


まだ、小学生低学年くらいの子供が、一族のために必死に。



「顔を上げてください」



リリスの一言でズングリットは顔を上げてリリスを見た。

俺の大好きな太陽みたいな暖かくて優しい笑顔がズングリットを落ち着かせる。



「大丈夫。ドワーフ族のみんなは絶対に私が助け出して見せる。よくここまで頑張ったね」


リリスはやさしく、よしよしとズングリットの頭を撫でる。

泣いている子供をあやす様に、緊迫した心を解く様に。


ズングリットはそんなリリスに見惚れてしまっていた。



(なんて羨ましいっ!! ずるい!! ずるいぞちくしょう!!)


(子供に嫉妬して恥ずかしくないの?)


「イツキさん、ごめんなさい。ネルトまで送ってあげられそうにないです」



リリスは申し訳なさそうに俺に頭を下げた。


あ、そうか。俺もついて行こうとしていたけど、相手は魔王軍と正面から渡りあえるほどの強さを持つ。俺なんかが言っても足を引っ張るだけだ。



「あ、ああ、全然大丈夫。その、リリスも気をつけてくれな」


そうだ。ここででしゃばっても足を引っ張るだけなんだ。リリスを信じて見届けるのが最善なんだ。



「今から、魔道具を使っておいらの村まで転移する。リリスさんは僕の手を繋いで。そうすれば一緒に転移できるから」


「わかりました」


リリスは右手でズングリットの手を握った。

「イツキさん、行ってきますね」



「ああ、行ってらっしゃいリリス。」


笑顔のリリスに出来るだけの笑顔を取り繕って見送る。

光が生まれ、転移が始まろうとしていた時、不意に目線を左下に下げるとそこには僅かだが、確かに震えていたリリスの左手が見えた。



「……あ」



それを見て気がついたら俺はズングリットの左手を掴んでいた。

その直後俺たちはドワーフの村へと白い光に包まれて転移した。










「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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何卒よろしくお願いいたします!


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