第124話 魔剣
砦生活3日の夜
俺はチユに魔力の纏化の練習を付き合ってもらっていた。
3日連続で出会うことってあるんだなぁ。
何故か、チユとは夜中に砦の外でよく出会う。
今日も出会い頭にうわ……とか言われたが俺は気にしないし何も言わなかった。
……結構嫌ような顔だったことなもはや何も言うまい。
チユ曰く
「……まぁ、そこそこ形にはなって来たんじゃないですか?」
らしい。
自分ではわからないけれど、一応出来てはいるのか……
「……正直、もう二度と出来ないと思ってた」
「人というのは一度出来たのなら何回でも出来る。あとは少しのコツを掴めばいいだけ」
「そういうもんかー」
「わたしは部屋に戻ります……あなたも寝るように」
「ああ、ありがと」
実際、明日はいよいよ拠点に移動する日だ。
決戦の日は目前。
気を引き締めなくちゃな。
俺も部屋に戻ろうかと思った瞬間、チユの足元にバッタのような昆虫が飛び込んできた。
「っ!!?」
チユは青ざめた表情で体勢を崩した。
あ、まずいっ……!! このままだと転ぶ!
そう思った瞬間、自然と体が動いていた。
彼女の腕と腰に手を伸ばし、触れた瞬間
体内から剣を貫かれたような激痛が身体中に走った。
その激痛は俺の意識を刈り取るのには十分だった。
「……あ、?」
いたい……どうして……? 身体中が……痛い……
そう思いながら瞼を開けた……
「ーれ?」
体の痛みを感じながらも横たわった体を起こす。
「おはようございます」
隣で座っていたチユがそう言いながらポーションをくれた。
とりあえず、いただいて飲む。
「まぁ、気休め程度ですが」
「いや……助かる……えっと、俺、なんで気を失ったんだ?」
確か、転びそうになっているチユを掴もうとして……それで……
「魔剣による呪いです」
呪い……?
『彼女の力……魔剣は万物を問答無用で破壊する力があってね。とても強力な力なんだけど、ある呪い付きなんだ』
『全身が以上なほど激痛に蝕まれてしまうんだよ』
『その呪いは使い続けるほど、強くなっていき、今では何もしてなくても呪いの力が彼女を蝕んでいる』
ああ、思い出した……チユの力は呪いの魔剣……でもそれはあくまでチユ本人にしか発動しないんじゃなかったけ?
「私の体は呪いに蝕まれしまい、今では触れた者にもその呪いがかかるようになっています」
俺の顔を見て察したようにチユは言った。
つまり、触れた者に激痛をもたらしてしまうってことか?
「まぁ、この呪いの力が他人まで影響が出るようになったのは最近ですが……不本意とはいえ、すいー」
「……悪かったな」
チユが何かを言い切る前に俺は彼女に頭を下げて言った。
顔を上げるとチユは何を言っているんだ? と言いたげな顔をしていた。
「……は? あなたに謝ってもらう筋合いなんてないんですが」
その声色は少し感情的になっていて苛立っているように聞こえる。
「……傷つけたのは、俺だからさ」
「意味がわからない。お前を傷つけたのは私です」
「いいや、違う。逆なんだ。俺がお前の心を傷つけた」
「ーは?」
「目が覚めて、お前の顔見たらさ、ちょっと泣きそうな顔っていうか……悲しそうな表情してた。それはきっと、呪いの力によって俺の事を傷つけてしまったからじゃないのか?」
「随分、自分勝手な解釈ですね……この力は契約した者を容赦なく傷つけ、孤独にする……全て覚悟の上で私はこの力を振るってきた」
そう言ってチユは自分の部屋に帰って行った。
次の日の夜
転移ゲートを使い、俺たちはみんなが作ってくれた拠点へと転移した。
昼から夜にかけて砦内でリリス達勇者パーティとエレナと俺たちグランドマスターでミーティングを行い、双王との戦いの流れを話した。
ある程度決まって
ちなみに騎士王が着ることはリリス達には話していない。
彼女達には双王に集中してもらいたい為……とのことだ。
ユウさんに騎士王が来る攻めてくる位置を教えてもらった。
ちなみにチユに対しては嘘の情報を話たようだ。
だから、まぁ……騎士王とチユが戦うことはないだろう……
俺が騎士王と一対一で戦う。
この事を知っているのはユウさんとコウヤさん……ウェサゴ、そしてエレナの4人だけだ。
みんなが拠点で戦うための準備をしている中一人黄昏ていた。
……騎士王との決戦が近づく。
心臓がうるさいくらいに高鳴った。
『勝てないかもしれない』
そんな不安が頭をよぎる。
「ったく……何考えてんだよ……馬鹿か?」
そんな事を一人で呟く。
何を約束した?
お前は誰に約束したんだ?
そんな弱音、吐いている場合じゃねぇだろうが。
だから、この手の震えを止めろ。
「……イツキさん?」
ああ、くそ……なんでこんな時に限ってー
「……リリス」
振り向くとそこには赤いマントをたなびかせながら勇者としての正装を着て聖剣を持ったリリスが居た。
その顔は少し安心しているようだ。
「エレナ様が探してましたよ? もう!! あの人どこいってるんですかー!!って」
「………………」
「イツキさん?」
「いや、なんかその格好いいなって思ってさ……」
誤魔化すように言った。
「そ、そうですか? 一応、勇者の正装なんですけど……ちょっとは勇者っぽく見えますかね? えへへ」
少し照れ臭そうにマントをひらひらさせるリリスは可愛かった。
「エレナにはあとちょっと休憩してから行く〜って伝えといてくれないか? 」
そう笑顔で、いつものようにふざけながら言った。
少し、今の姿は見られたくない。
「……大丈夫ですか?」
そう言って手を握ってくれた。
初めて握ってくれたあの時のことを思い出す。
「大丈夫です」
そうリリスは俺に言ってくれた。
「いざとなったら私がイツキさんをも守りますから!」
そう笑顔では言ってくれたけど、その手は震えていて。
ああ、そうだ。リリスは普通の女の子なんだ。
戦いが怖くて当たり前で……けれどこんなにも自分を奮い立たせている。
それなのに俺は……情けない!!
しっかりしろ双葉イツキ!!
「……ありがとう。気合い入ったわ!」
そう言った瞬間、拠点をも持っていた結界が破られた。
「こんにちは」
聞いたことがない声、驚いて声の方向を向くとそこには見知らぬ男が立っていた。
「私はクォーツ、少しお邪魔しにきた」
その男は確かにそういった