第119話 魔法の時間(応用編)
エレナと二人で仲良くいると魔法使いがたくさんいるエリアにやってきた。
それぞれ、自身の魔法に対する考えを話し合ったり、自分が取得している魔法を教えあったりと多くの人達が互いに切磋琢磨していた。
「ていうか。そろそろ手を離してくれてもいいんじゃないか?」
「あ、そうですね」
はっと気づくようにエレナは手を離した。
「なんというか、イツキさんって手を繋いでおかないとどこかに行ってしまいそうな感じがするんですよね」
俺はガキか何かかよ……
そういえば、リリスにもそんなことを言われてしまったような気がする。
そう思いながらあたりを見渡すと多くの人達に囲まれている女の子が居た。
あそこだけ人の多さが段違いだ……どうやら、魔法について色々と教えているように見える。
というか
「あれ……ってソウスケの師匠のリンちゃんじゃん」
「ええ、彼女は勇者リリス様と一緒に戦っている賢者様ですから」
ちなみに賢者というのはこの世界で最優の魔法使いに与えられた称号です。とエレナが説明してくれた。
「……まじか」
凄い人じゃねぇか……いや、冷静に考えてみれば勇者であるリリスと一緒にパーティを組んでいるのだから当然のことじゃないか。
あれ? と言うことは……同じくパーティ仲間であるユメちゃんやルイちゃんって子も凄い人なのでは?
あれれ? ということは賢者の弟子であるソウスケくんて実は凄いやつなのでは?
ふと横を見るとふて腐れながらひとりぼっちで座っているソウスケの姿があった。
何してるんだ? あいつ?
「「…………あ」」
最悪だ…目があってしまった。
うわ!! なんか嬉しそうにこっちに向かってきやがったんだけど!!
「エレナ様! こんにちは! イツキを連れてどうしたんですか? さっきまで二人っきりで仲良く特訓してたのに」
いや、別に仲良くはしてないと思うんだけど……俺ひたすらボコボコにされてただけだし……
「ソウスケさん、こんにちは。それがですね……イツキさん魔法について学びたいと言っているのでー」
「それなら!! イツキ!! 僕が魔法について教えてあげるよ!!」
エレナが言い終わる前にソウスケが俺に向かって言ってきた。
「いえ、結構です。僕はリンちゃん教えてもらおうと思っているので、失礼します」
そう言いながら立ち去ろうとするとソウスケくんは必死そうに縋り付くように俺を引き止めた。
「頼むよー!! 僕のところには誰も来なくってさ!! 隣にいるリンにさっきからずっと馬鹿にされてるんだよー!!」
そう泣きながら訴えるソウスケくんはとても哀れだった。
そりゃそうだよ……君は昔から教えるのクソ下手くそだしね……
「ウルセェ!! 俺は男よりもリンちゃんみたいな可愛い女の子にレクチャーしてもらいたいたいんだよ!」
縋り付くソウスケを必死に剥がそうとするが
「うおーん!! うおーん!! 頼むよー!! うおーん!!」
無駄な抵抗とわかりながらもそれでもソウスケは抗うことをやめなかった。
この必死さ……こういう時のソウスケはめちゃくちゃめんどくせぇ!!
「まぁ、まぁ……イツキさん。ここはソウスケさんに教えてもらいましょう? 見知った仲の方が色々と聞きやすいでしょ?」
エレナはやつの哀れな姿を見て可哀想だと思ったのか、助け船を出した。
まぁ、確かにエレナのいう通りだ。
リンちゃん相手ならわからないところがあっても聞きにくいかもしれないしな。
ここはソウスケくんにご教授いただくとしよう。
「……わかったよ。それじゃ、ソウスケ先生。魔法について教えてください」
「せ、先生!? ったく! しょうがねぇ〜なぁ!! ちなみに何か知りたいこととかあるか?」
「そうだなぁ……」
少し、考えこむ。
こいつに魔法の知識を教えてくれと言っても多分出来ないだろう。
だって馬鹿だし!!
しかも初級魔法しか使えないしな……あれ? もしかしてこいつに教わることってないのでは?
いやいや……考えろ……何かあるはずだ。
知識以外でこいつに教えて欲しいこと……あ。
「そうだ。お前のファイヤーボールを教えてくれよ。あれどうやるんだ?」
「僕のファイヤーボール?」
「そうそう……賢王と戦ってた時に巨神兵に使ってただろ? あの炎を凝集させてたやつ。あれの威力ヤバかったからさ」
キョウヘイに打ち上げられた巨神兵を一瞬で消滅させたあの凄まじい破壊力、あれを使えるようになったら騎士王との戦いだけじゃなくて今度の活かせそうだ。
「ああ!! 魔力の掌握を使った魔法ね。りょーかい。簡単だからさ。イツキもすぐ覚えられるよ」
「……え? あ、あの……」
「お、さすが先生、頼もしいですな〜」
エレナがとても困惑した様子で何かを言おうとしていたが、ここは素直にソウスケに教わることにしよう。
「それじゃあ、ひとまずはい、ファイヤーボール」
ソウスケは手のひらの上に火球を生み出した。
「ファイヤーボール」
それに続くように俺の手のひらに火球を生み出す。
「いいかい? まず、魔力をこうギュッ! とする!」
そう言った瞬間、火球は太陽のように眩しく、煌々と煌めいた極小粒の緋色した球体に変化した。
それからはすざましく膨大な魔力を感じ取れる。
下手するとこの辺一体焼け野原になるくらいの。
「あとはバッ!! と解き放てばいいんだ。簡単だろ?」
そう言いながらソウスケはファイヤーボールを消した。
????????????
すいません!!先生が何を言っているのか理解ができません!!
「……え、えと……ぎゅっとする感じって……こう?」
「違う!! もっとこう!! ぎゅーっとする感じで!!」
「はぁ!? だからそれが分からないって言ってるだろ!!」
お互いに大声でお猿さんのように叫び合う。
そんな俺たちの姿を見てエレナも困ったように笑っていた。