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第118話 好きの時間





「……取り敢えず。今回はここまでにしておきましょうか」


「あ、ありがどうございまじだ」


結局、動作予知できたのはさっきの1回だけで、その後エレナと打ち合いしてもぼこぼこにされただけだった。


俺って才能ないのかな?

やっぱり、さっきのはただのまぐれだったんだぁ。


「だ、大丈夫ですよ。一度は出来たんですから、いづれちゃんと使えるようになります!」


肩を落とし、ため息をついて落ち込む俺を励ますようにエレナは言った。



「……ほんとかな?」



なんて、つい彼女の言葉を疑ってしまう。



「本当ですよ!! むしろ1日で1回とはいえ予知できたのは凄いことです!」


「そっ……そうかな!?」



凄いと言う言葉についつい反応してしまう。


俺、凄い?


ほんと?



「そうです。イツキさんは才能ありますよ!」


「さ、才能!? えー!! エレナししょーにそこまで言われたら信じちゃうなー! うん! 動作予知をちゃんと使いこなせるように精進しなくちゃな!」



むふー!! いつまでも落ち込んでいられないもんね!!

俺だってやるときはやるっちゃ!



「……イツキさんって本当に扱いやすいですよね」



なんか、エレナにすごく失礼なことを言われた気持ちがするが、ま、いっか!



座り込みながらエレナと一緒にレモン水を飲む。


「しみる〜!!」


「ですね〜」



リリスから貰ったレモン水を見ながらふと、先程の……リリスとの出来事を思い出していた。


リリスに勇者だったことを告白されたまではよかったんだけど……それに対して自分の思いを打ち明けたら……その、いきなり『好き』と言われてしまったのだ。



「なぁ……エレナ。好きってなんなんだろうな」


「なんですか? その気味の悪い質問は?」



えぇ……若干ひきながらこちらを見つめるエレナ。


エレナさん……それは少しひどくないですか?



「……まぁ、お子様のエレナちゃんには難しい話だったか。ごめんねぇ〜? エレナちゃんにはまだ早かったねぇ〜?」



その反応に腹が立ったので煽るように肩をポンと叩いてふっと笑いかけてやると



「む、馬鹿にしないで下さい! 好きくらいわかりますっ」


「ほーん? そこまで言うのなら聞こうじゃないか」


「いいでしょう……」


エレナはこほんと咳払いをしていいですかと語り始める。

なんだ、エレナさんもノリノリじゃないですか〜



「まず、好きっていう感情はたくさんの種類があると思うんです」



ふむふむ。



「まずは友達としての好き。です。ありのままの自分で緊張も遠慮もせずにいられる。その人いると居心地良く感じる。どちらかというと相手への信頼を表す感情です」



なるほど



「次に憧れとしての好きです」


「憧れ……」


「自分より優れた人に対して感じる好意と羨望、目標意識が憧れとしての好きです。例えば、この人のようになりたいとか」


「なるほど、エレナが俺に抱いている好きって事だな!」


「あとは母性本能としての好きでしょうか?」



こいつ、無視しやがった。



「相手を守ってあげたい。頼りない! 人を見るとどうしてもお世話したくなったり……」



おい、なんで頼りないってところで俺を見た? 

なんで強調するように言った?



「恋愛感情の好きと性質が似ているので混合されやすいですが母性本能の好きには相手と恋人になりたいとかはないと思うんです。簡単にいうと親が子を思う気持ち……でしょうか?」



あーなるほど。なんとなくわかった気がする。



「私がイツキさんに抱いている気持ちですね!」


「あの、普通は逆じゃない? 俺、君より年上なんですけど?」


「最後は恋愛感情の好きなんですけど」



き、きたか!?

ドクンと思わず鼓動が高まった。



「恋愛感情の好きとそのほかの好きとの決定的な違いは恋人もしくは夫婦になりたいという願望があることだと思うんです」


「相手に幸せになってほしい。喜んで欲しい。支えたい。といった奉仕の気持ちとそして何よりいつも側にいたい。相手を独り占めしたい。自分だけを見て欲しい。そう言った独占欲もある。そういった感情のことではないでしょうか?」


「嫉妬とか……?」


「まあ、そうですね。あとは……まぁ、キスとか……その、色々と心も身体も繋がりたい……とか」


「つ、つまり! エッチなことをしたい、もしくはしてもいいってことですか!?」


「もう!! せっかく濁したのにはっきりと言わないで下さい! エッチなことじゃなくても……例えば! 手を繋いだり、頭を撫でて欲しいなと思ったり、触れ合いたい! 触れ合えて嬉しい! と思えるかどうかなんです!」



顔を赤くさせ、ぷんぷんに怒りながら言うエレナを俺は感心していた。



「なんか、エレナってあれだな。年の割にしっかりとした考えてを持ってるんだな。すごいと思う」



俺がエレナの年の時なんて、男同士うんことかちんことか言いながら爆笑してたのに。


なんだか、尊敬するな。

第一王女となれば色々な付き合いもあるだろう。

良い出会いも、悪い出会いも。

そうやって、エレナはしっかりとした恋愛観を持っているのだろう。



「まぁ、全部本の受け売りですが……」


「いや、本なのかよ!……いや、でも納得出来た部分もあったから良しとするか」




「そうだ。こちらもひと段落着きましたし、ほかの方々と交流なさってはどうですか?」



せっかくの交流会なんですし、とエレナは両手を合わせながら言う。



「そうだな。せっかくだから、そうするか」


色々な人がいるんだから、色々な技術を教えて貰おう。

例え、それが勝利に繋がらないとしても勝利が1%しか上がらなかったとしても俺はその1%を妥協したくない。



「どんな知識や技術が覚えたいとかありますか? 私が紹介しますよ?」


私、結構色々な伝手があるんですよ? と自慢げに薄い胸を張るエレナ様。



「あーそうだなぁ……魔法の知識とか……かな?」



正直、俺自身遊び人なのに何故か魔法を使えるんだけど、魔法に対しての知識が0だからな。

魔法に詳しいやつに色々と教えて貰いたい。



「なるほど……分かりました。ついてきて下さい」


エレナはそう言いつつ、俺の手を握り歩き始める。


エレナの表情はなんだか張り切っているように見えた。


授業参観で親の前でいい格好を見せたくて手をあげて発表する子供のように。


多分、エレナが俺にこんなによくしてくれるのは母性本能の『好き』とかじゃなくて、ただ単に自分を見て欲しいからだ。


いや、もちろん。一緒に未来を変えるために手を貸してくれているのもあるだろう。


でもその本質は誰かと関わりたい、誰かに必要とされたい。頼られて、繋がりを感じたいんだ。


ーそれはエレナが長い間、寂しい思いをしてきたことを表している。


そういえば、父親である国王とも忙しくてあまり話してないとか言っていたな。

母親も……すでに他界しているらしいし……


多分、周りの人たちもエレナに対して第一王女として接してしまうから、心の距離を感じてしまうのだろう。


心の距離を感じてしもうような接し方をされるのは結構寂しくて、きついものだ。

……俺もエレナと同じくらいの年は寂しい思いをしてたしな。


だから、あの夜も神託を受け入れて、俺の前でも第一王女としての言葉が先にでてしまったのだろう。


第一王女とか言って無理矢理背伸びしているけど、その正体は13歳の寂しがり屋の女の子……それがエレナ・フォン・キャメロット。


俺はそう思う。


だから、そんな彼女を……



「……? なんですか?」


「いや、母性本能の好きってこういう感情なんだなぁと」


「?」


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