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第114話 原初の悪魔



「……本題って?」



ユウさんが去り、俺とコウヤさん二人だけになったこの部屋でピリつくような緊張感が流れていた。



「お前が言ったんじゃねぇか。あんた……本当に人間なのか?ってな」


そうだ。

俺が言ったんだ。


そしてその言葉は俺がこの人に対して聞きたい事だった。


あの日感じたこの違和感はいまだにこの胸につっかえたままでいる。


コウヤさんの正体はある程度の予想はついている。

しかし、その予想はあまりにも突飛押しもないものだ。


コウヤさんの目を見る。

その真意を探る。


しかし、その考えは、その感情は欠片も読み取れない。



「この身体は転換者である黒田コウヤだ。だが……」



鼓動が高鳴る。

そんな俺を見てニヤケるようにコウヤさんは言った。




「俺はウァサゴ。原初の悪魔の一人だ」



その瞳は悪魔のように赫く尾を引いていた。

原初の悪魔……それはバエルとアガレスと同じ。



(バエル……)


(本当だよ。あいつは原初の悪魔であるウァサゴ。今は黒田コウヤと言う人間の身体を乗っ取てるみたいだけど)



「バエルが言ってるんだ。信じるだろ? 双葉イツキ」



こいつ、バエルとの会話も聞こえるのかよ。



「それにしてもあんまり驚かないんだな。まぁ、薄々感づかれていたとは思っていたが」



ウァサゴはつまらなさそうにそう吐き捨てた。

奴の言う通り、初めて出会っていた時から感じ取っていたからだ。


もしかして転換者じゃなくてその魂は悪魔なんかじゃないかって。


確証も理由も何もかもなかったけど。ただそう感じた。確信を持っていた。



「……なんとなく、直感で……」


「まぁ、それはお前の身体が順調に王へと近づいているってことか」


「どういう意味だ? それ?」


「ちょっと、そこまでにしてくれない?」



バエルが自発的に姿を現し、俺の横に座りながらウァサゴに言った。


え、珍しい。


こいつ、俺のベッドでだらける以外は滅多に姿を表さないのに。

どうして?



「くくっ……」



そんなバエルを見てウェサゴは面白おかしく嗤う。

なぜ笑っているのかその真意はわからないが、バエルは感じ取っているようでちょっとイライラしていた。



「お前が人間に懐いてるの初めて見たわ。小宮リンカでさせ心開いてなかったのにな」


「ちょっと!!」


「リンカ? リンカって同じグランドマスターのリンカだよな? なんで彼女の名前が出てくるんだ?」


「あ? なんだ。お前もあの女も何も言ってないのかよ。いつも側にいるくせに何してんだ?」


あの女? 


………………



「まぁいい……これ以上余計なことを言ったらめんどくせぇことになりそうだからな」



コウヤ……ウェサゴは話を少し前に戻すぞ。と言った。



「エレナ姫は神託で四大天使とやらにこの戦い絶対に死ぬって言われてたんだよな?」


「あ、ああ。そう言っていた」


「そりゃ嘘だ」


「……へ? なんでそんなことわかるんだよ」


「俺はこの世界の未来を知っている。あらゆる可能性のな」


「それがウァサゴの能力か?」



ウェサゴは少し言いにくそうに明後日の方向を向いた。

しばらく沈黙し。


「いや、俺の力はまた別だ」


「はぁ? あ、もしかして転換者である黒田コウヤの能力ってことか?」



それなら辻褄は合う。

まぁ、乗っ取った人の力も使えるのは知らないけど。


「ああ、まぁ……そんな感じだ」


その言い方……絶対に違うだろ。

軽くあしらわれた感じがひしひしと伝わってくる。

まぁ、肝心なのはそこじゃないしいいや。



「大丈夫だよ。未来に関しての話だけは嘘じゃない」



バエルがウェサゴをフォローするように言う。



「まぁ……バエルがそう言うのなら」



とりあえず、ウェサゴの話を信じることにする。


「あのおっさんを味方につけなきゃ完全勝利は不可能だ。だから、お前が騎士王を倒すのは絶対条件なんだよ」


「なんせ、あのおっさんが裏切る未来は半分くらい死んでるからな。あと、チユ・セリシアに関しても……相手が騎士王の場合100%死んでる」


しかしとウェサゴは言葉を続けた。

逆にここからが大切だとやつの表情を見て思った。


「俺はエレナ姫が生き残る未来を数多く見ている。クソ天使の予言はブラフだ」


「なんでそんな嘘を……」


「……決まってんだろ。この世界の神にとってエレナ姫は生きていては困る存在なんだよ。だから死ぬように誘導してるんだろ」


「だから、なんでなんだよ。エレナは王族なんだぞ?……王族は神の血を引いているんだろ? 何にどうやったら生きていて困る存在なんかになるんだよ?」


「んなこと知るか。これから神の不利益になってしまうことをやるんじゃねぇの?」


「えぇ……」


知らないのかよ……


「ふーん。ウェサゴがこんなに動くなんて初めてじゃない? どういう風の吹き回し?」


「……ああ? まぁ、こいつがこの世界の流れを面白くしてやがるからな。いい加減俺も飽きたんだよ。この世界には」


「………………ふーん」


バエルはそう言いながら俺の体の中に戻っていく。



「……いつもならもっと遠回りな言い方をするはずだ。それほどストレートかつ断言させ、死ぬことを強制させているとなると」


「……クク、おい。双葉イツキこの戦い。おもしれぇもんが見れるかもな」


「面白いもの?」


「まぁ、四の五の言わずにお前は俺の言う通りにすればいいんだよ。そうすれば繋がる。お前の目指す最高の未来ってやつにな」


「………………」


「この戦いの筋書きを決めるのはあいつら じゃねぇ。俺達で決めるんだよ」


そい言って立ち上がり、俺を見下ろして言った。


「まぁ、お前が騎士王を倒して、この戦い……誰も犠牲になく終えることができたら契約してやるよ。そんで俺の知ってること全部教えてやる」


「絶対だな」


「ああ、だから、せいぜい足掻いてみろ……双葉イツキ」



そう言ってウェサゴは部屋を出て行った。







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