第107話 運命の出会い
「それじゃ、レイア、行ってくるわ」
「本当に一緒に行かなくても大丈夫?」
「ああ、5大ギルド会議から5日くらいしか経ってないし、王城までの道もちゃんと覚えてるから問題ない」
「そっか……ねぇ……王城に着いたら手紙……書いてね?」
「お、おう……」
いや、心配し過ぎじゃないだろうか?
ちょっと、過保護というか……まぁ、普段だらけているからしょうがないのかもしれないけど。
けど! 俺だって一人で行けらぁ!!
2時間後
「ひぃーん!! レイア!! 助けて〜!!」
だだっ広い草原の中、一人ぼっちで彷徨っていた。
休憩停止後馬車には置いて行かれるわ。
財布無くすわ。
スライムに襲われるわ。
ゴブリン雌に襲われるわ。
キバイノシシに襲われるわ。
最悪だ。
ひとまず、キャメロット王国の方向へ向かって歩いている。
(ねぇなんで逃げる使わないの? そしたらすぐじゃん)
(一応、キャメロット王国は登録したけど、キャメロット王国のどこにテレポートするかわからないからな……)
俺のもう一つのユニークスキル逃げるは自分が設定した所にテレポートできると言うものだが、細かい設定までは出来ないことが判明した。
つまり、今テレポートを使ってもキャメロット王国の知らない人の民家とか、地下の下水道とか風呂屋とか訳の分からないところに着いてしまうのだ。
ただ、キッシー王との戦いの時、バエルの元にテレポートしたみたいに
自身の目に入る範囲であれば細かいところまで座標を決めてテレポート出来るんだが……
まあ、結局は逃げるを使ってキャメロット王国行くのは最終手段だ。
(ふーん、使えないクソスキルだね)
(やめてくれ……気にしてんだよ)
かれこれ歩いて何時間経っただろうか?
空は夕焼け空でもうすぐ日が沈み始める。
なのに、キャメロット王国は姿すらない。
あ、ああ……もう限界だ。
前みたいに女湯にテレポートして牢屋に入れられてもいい……!
使ってやる!
逃げるを使おうとした瞬間、馬車が走る音が聞こえた。
「!!? どこだ!?」
周りを見渡すと何人か住めるんじゃないかってくらい巨大な馬車と2匹のムキムキで大きな馬がこちらに向かって走っていた。
な、何だ? こんな大きな馬車見たことがない。
屋根が着いた、樽や人を大人数を乗せられることができるくらいの馬車を想像してほいそれの10倍くらいのデカさだ。
天井にはどうやら中に入っている人たちの荷物がたくさん乗っている。
(お、おお。すごいな、これは。)
(確かに、こんな大きな馬車は初めて見るかも。)
バエルとともにあまりの大きさに圧倒される。
いや、圧倒されている場合じゃない!!
「あ!! 待って下さい!! 待って下さい!」
馬車の方に全力疾走して気づいてもらえるように手を振って叫んだ。
ああああ!! 気づいてくれー!!
しかし、無常にも巨大宿泊馬車は俺を取り残して走り続けて行った。
「ああ……ああああ!!」
手を差し伸ばし、嘆いていたらピタっと馬車が動きを止めた。
「おっ、やっぱり居た。おーいそこの少年ーこんなことろで何してるんだ〜?」
そんなことを言いながらボサボサの黒髪に瓶底目眼鏡をかけ、髭を生やした何処か飄々としたおっさんにしては若いな。兄ちゃん? が馬車の運転席から降りてきた。
「あ……ああ!! ああああああ神様ー!! 助けてくださいー!! 馬車に置いて行かれて体と心がボロボロなんですぅ!!」
「おお……そんな熱い抱擁しなくても……っておい!! 鼻水が!! 鼻水がついてるから! 離れてくれ!! 少年!!」
「どうした? 何かあったのか?」
「だんちょー!!」
さらに馬車から出てきたのがひときわ大きな体のダンディなおっさんが降りてきた。
「こいつさ。馬車に置いて行かれちまったみたいでさ。馬車に乗せてやってもいいかな?」
「おお! それは大変だな!! よし!! とりあえず中に入れよ」
「ええ!? いいんですか?」
思わず自分で確認を取ってしまった。
とても有難いが、そんな簡単にいいのだろうか?
「何言ってんだ。困った人を助けるのは当然だし、ほっとけねぇよ」
だ、だんちょー!!
団長の心の暖かさが凍えていた俺の体と心を包み込んだ。
いかん、涙がでそうだ。
そんなこんなで馬車に入れてもらった。
「あははっは!! それはなかなか災難だったなぁ!!」
これまでの経緯を話したら助けてくれた兄ちゃんは腹を抱えて大爆笑していた。
馬車の中はキッチンやテーブル、ソファーが備わっており、巨大なキャンピングカーの様だ。
ソファーには兄ちゃんを含め4人の老若男女が座っている。
ちなみに団長は今馬車を運転している。
この人たちはツバサ一座という旅芸人の人たちらしい。
ちょうど、キャメロット王国に向かう途中だったようで俺の乗せてもらえることになった。
明日の朝には着ける予定だそうだ。
「いやーそれにしてもその流れで歩いてキャメロット王国まで行こうなんてなかなかクレイジーなやつだなぁ……ま、そういうとこ嫌いじゃないぜ? いっくん」
「? あれ? 俺、名前名乗りましたっけ?」
それにいっくんってリーシャしか呼ばれてないあだ名なんだけど……
「え……あ、あ〜いや……なんか君、いっくんぽいな〜ってね。俺、勝手に人の呼び名を決めるのが趣味なんだよ。では改めて、お名前は?」
ヤベェヤベェと小声でなんか言ってるんですけど……まぁいいや。
呼び名程度、そんなに気にする事じゃない。
「双葉イツキです」
「じゃ、イツキ少年だな。ではまだ紹介できていない我らツバサ一座のメンバーを紹介しよう」
まずはーと兄ちゃんは自分と同じ厚底眼鏡をかけた黒の長髪ツインテールの女の子に手を伸ばした。
頭には白い鳩ちゃんを乗せている。
マジック用の鳩か?
年は俺と同い年くらいだろうか。
「同じ厚底眼鏡仲間のユッキーね。ちなみにマジックを担当してもらってまーす」
「どもどもーユッキーでーす。長所は初対面の人にも気後れせず話せるところですー」
陽気そうに手をひらひら〜とさせるユッキーに俺のひらひらーと手を振って答えた。
これはあれだな、絶対に眼鏡外したら美人系女子だ。
ふむ、黒髪スレンダー美少女……鉄板だな。
「次にこいつはモナだ。生意気な糞ガキだが、仲良くしてやってくれ」
次に紹介されたのは茶髪のポニテをした鋭い眼光を持った7歳程の子供だった。
こちらを見る顔はどこか不機嫌そうである。
「よろしくな」
モナに握手をするために手を差し伸べるとパシッと払われた。
「……けっ」
そう言いながら、顔をぷいっと逸らされてしまった。
「このガキ」
「まぁまぁ」
手をあげて礼儀を知らん糞ガキをぶん殴ろうとするのを兄ちゃんが止めた。
この糞ガキ絶対後でわからせてやる。
俺は俺を懐いてくれるロリは大好きだが、俺を嫌うショタは大嫌いなんだ。
(マスターと同レベルだからすぐに仲良くなれそうだね)
(はっはは、このガキと同レベル? やめてくれよ)
「みんなー!! 晩御飯できたよー! 君もお腹空いてるでしょ? 熱いうちに食べてね!!」
圧倒的なおっぱい!!の持ち主である茶髪ポニーテールの女性ががシチューとパンとチーズを持ってきてくれた。
表情が明るく、人目引く可愛さを持っている女性だ。
「あの人がツバサ一座の副団長のマリーさんだ。一言で言うとオカンだな」
ああ、なんかわかる気がする。
この人の包容力は半端なく高い。雰囲気というか、声色というか、その優しい性格もあってのことだろう。
とてつもないバビみを感じる。
「いただきます」
シチューを受け取りいただく。
ふぅ、うまい。体だけではなく、心までも温めてくれる様な、そんな味だった。
「それで俺がシュン、ダンスとかマジックとか音楽とか全部できるオールラウンダーだ」
シュンさんはふふんと自慢げに自己紹介をした。
けれど、他の団員はそれだけじゃないと文句を言い始めた。
「よく仕事サボってどこか行く困った団員なんだよ」
「シュンは50%の確率でサボるからな」
マリーさんと糞ガキのモナによる追加説明、サボり魔かよ。
50%って半分じゃないか。
「あと、下ネタ大好きだしねータバコも吸うし、ヤニ臭いから全然モテない。」
ユッキーのリアルな性格のダメ出し、女子にこれ言われると心に来るんだよなぁ。
「ひ、ひでぇなお前ら……」
ボロクソに言われて落ち込んでいる姿は何だか、普段の俺の様だった。
「まぁ、シュンさん。元気だして。きっとあんたみたいなダメダメな男でも好きになってくれる人が世界中に一人くらい居るはずだから……な?」
(うーん、マスターが言うとすごく腹立つね!!)
「くるっぽー」
肩を叩いて落ち込んでいるシュンさんをはーちゃんと一緒に励ました。
「イツキ少年……それディスってるのと変わりないからね?」
そんな雑談で盛り上がりつつ晩御飯をツバサ一座のみんなと食べた。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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