第104話 ご飯に呼ばれました!!
「………なぁバエル」
「なぁーに?」
昼飯を食べ終わった後、満腹になった俺は自室のベットで大の字になって寝転んでいた。
バエルは実体化し同じベッドで寝転びながら携帯機ゲームで一人遊んでいる。
「みんなが自分の役割を全うしようとしているのに俺は今、こんなところでだらけていてもいいのだろうか?」
何もせず、怠惰な日常を繰り返しているとふと我に帰り、このままではいいのか? と思ってしまう時がある。
いや、やらなくちゃいけないことはたくさんあるんだ。
ギルドマスターの書類とか本当に色々と。でもなぜか体が動かないし、やる気が出ない。
あー提出期限が近づいているのにーこの世界の重力がーくそー
「そう思うなら今すぐにでもクエストを受けてこの街の繁栄に貢献してきなよ」
ゲームに意識を向けたままバエルは流すようにいった。
「いや、今日は体がだるい気がする。クエスト中に倒れでもしたらパーティに迷惑がかかっちまうだから明日から頑張るよ」
「ニートの言い訳じゃん。ていうか働く気ないなら聞かないでよ」
「いや、ここはいいんだよって俺の事を肯定してさ、俺の気持ちに共感して欲しかったのよ」
「めんどくさ、女子かよ」
そんなことを話していたらトントンと扉を叩く音がした。
ああ、これはレイアだな。
この時間にここにくるのは大抵がレイアだからな。
何か用だろうか?
「イツキさーん。レイアだけどー」
あーやっぱり、レイアだったか。
「はーい?」
「イツキさんにお客様が来てるよ?」
えー誰だよ全く。俺は今超絶に動きたくないのによー!!
「あーちなみにどなた?」
これでどうでもいい奴の名前が出てきたら居留守を使わせてもらう!!
「えっと……アリスさんって女の人」
「すぐ行きます!!」
リリスのお母さんじゃねぇか!! おい!!
こんなところで寝転んでいる場合じゃねぇ!!
すぐ立ち上がり、くしゃくしゃな髪と服装を整える。
隣でバエルがえぇ……みたいな顔をしているがそんなの関係ねぇ!
いっけー!! 双葉イツキ!!
「うぉぉぉぉぉ!!」
ダッシュで部屋を出て階段を駆け下りる。
「……イツキさん!?」
その姿をレイアが驚いた様子で見ていた。
「あ、あんなに機敏に動くイツキさん初めて見た……」
「はぁ!はぁ!どこだ!」
階段を降り、リリスのお母さんであるアリスさんの姿を探す。
「……あ! イツキくん!!」
!!
声がした方向を見ると優しい笑顔でアリスさんが俺に手を振っていた。
「す、すいませんっ!!お待たせしてしまって!!」
息をゼエゼエと吐きながらアリスさんのもとへと駆け抜ける。
「あ、ごめんなさい。忙しかったかしら?」
申し訳なさそうに話すアリスさんに向かって精一杯首を振る。
なんならめちゃくちゃ暇してました!!
「全ッ然!! そんなことないです!!」
「そう? ならよかった。聞きたいことがあって来たのだけれど」
聞きたいこと? なんだろう!?
「今日の夜って何か予定ある?」
今日の夜、夜……記憶を探る。
うん……特にない!! いつものことだけど!
「何もなかった筈です」
「本当!? じゃあ今日の夜なんだけど、うちにご飯食べに来ない?」
……なん…だと。
「え……いいんですか?そんな……」
「もちろん!! 前に約束したじゃない? ご馳走するって」
ああ、確かに。
村が魔王軍に襲われた時そんな約束してたな。
「何かリクエストとかある?」
「か、唐揚げと、ポテトサラダ。あとエビフライ。とか?」
「なるほど……あ、よかったら今からうちに来ない? 昼ごはんも一緒にどうかしら? リリスも喜びと思うんだけど」
まじか!! リリスもいるのか!!
しばらく会えてないからなぁー
……行かなきゃ!!
「是非ー」
「おーい。マスター」
悪魔の囁きが聞こえた気がした。
この声はリーシャだ。
今、俺とリーシャは二人だけでパーティーを組んでいる。
いわば、相棒関係にある。
ヒロムがカナのパーティに加わる時にリーシャが俺との二人パーティをギルドに申請していたのだ。
もちろん、俺への相談は全くなかった。
そのリーシャが声をかけてきたということはー
「クエストいこーよ。めっちゃむずいやつ。ていうか受けたから」
「え……いや……あの……」
それは全てを覆す魔法の言葉。
そう、パーティでいくと受注したクエストは俺も行かなくちゃいけない。
「パーティだから。私たち」
袖を掴んで、くいくいと引っ張る。
これは早く行こうという意味だ。
「あ、ごめんなさい。クエストに行くところだったのね。頑張って!」
アリスさんが笑顔で応援してくれた。
ああああ!! くそ!! リリスにあいてぇのによぉ!!
「夜には絶対に伺いますから!!」
「ほら〜ごーごー」
リーシャは俺の手をガシッと掴み、クエストに向かう。
俺の体がズルズルと引っ張られる。
「絶対! 絶対! 7……8時までには伺いますから〜!!」
アリスさんはそう叫んでいる俺に笑顔で頷きながら手を振ってくれる。
リーシャに引きづられながら俺はクエストに出発した。
夜
「うおおおおおおお!!」
勇者の村で俺は全力疾走していた。
今は午後7時前なんとか約束の時間までには間に合いそうだ。
「おっ見えてきた。」
リリスの家が見えてきたのでペースを落とし、小走りで向かうと
「………ん?」
リリスの家をじっと見つめる者がいた。
ボロボロローブを纏っていて顔と身体が見えず性別も分からない。
怪しいと思いながらじっと見ているとこちらに気づいた様子で周りをキョロキョロとみながらこちらに向かってくる。
え……えっ!!
なんかこっちにくるんですけど!!
めっちゃ怖いんですけど!!
身構えていると謎の人物はこちらには何もせず通り過ぎただけだった。
あ、あれ?
何かされるのかと思った……自意識過剰だったか?
少し恥ずかしいと思いながら歩みを進めようとした瞬間
「ま、待って!!」
いきなり声をかけられた
「……えっ」
振り返ると通り過ぎた筈のローブを纏った謎の人物がこちらを向き俺の左手を握っていた。
「……………」
「……………」
沈黙が生まれる。
どうしてこんな事に……
「えっと…何か御用ですか?」
この沈黙に耐えきれず、思わずこちらから話しかけた。
「ぁ……えっと……その……」
次の言葉が出てこない。
言いたくても言い出せない、そんな雰囲気だった。
ふと以前アガレスに見せられたあの最悪の夢を思い出す。
勇者の村の人たちが虐殺され、燃え盛る村の中を走り抜けていたあの少女の姿が。
そして、壊れてしまったようにその場に座り込み、無表情で自身の母親の首に両手を差し伸べていたあの姿を。
何で……何であの夢の事を思い出す?
……はぁ。
あー!!もう!!
「ゆっくりでいいぞ。今日は夜風が気持ち良い。少し歩こう。」
「………え?」
呆気にとられた声で少女は言った。
「ほら、さっさと行くぞ。」
そんな声を無視して俺はさっき歩いていた道を引き換えした。
「あ、ま、待ってください。」
少女は俺の後を小走りで俺の後を着いてきた。
しばらく適当に歩いているとリリス達と遊んだ公園に着いた。
前に来た時と違って子供達の遊んでいる姿はなく、誰もいない無人だった。
まぁ、夜だから当然なんだけど……
お、ブランコがあるな、ちょうど歩き回って足が疲れていたところだったんだ。
ブランコに向かって歩き、ギィコと音を鳴らしながら腰を下ろす。
ローブを纏った少女はブランコの鎖部分をギュッと握りしめた。
まるで、懐かしんでいる様に。
「………で? あんた誰?」
その言葉を聞いて、少女は少し躊躇するが、やがて観念するかの様に言った。
「………私は、みんなに勇者と呼ばれていた者です」
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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