第1話 爆死しました!
皆さんは爆死というものをご存知だろうか?
爆発に巻き込まれて死んでしまうこと?
自分が爆発して死ぬこと?
商業作品の売り上げが伸びず、商業的に失敗してしまったことの比喩表現?
全て正しい。
だが、俺が言っている爆死とは違う。
爆死とは!!
オンラインゲームまたはソーシャルゲームでイベント上位報酬またはガチャ景品を目指し、投資したにもかかわらずその獲得に失敗してしまった言えば何も得ることが出来なかった敗北者の事なのである!!
これは、そんな爆死から始まった異世界転生の物語だ。
どうも。俺の名前は双葉一樹。高校3年生にして引きこもり歴2年のニートボーイだ。
「ん? あ、起きたの。はぁーめんどくさいなぁ。えっと。私は原初の悪魔の一人バエル。あんたの命を代償に契約を果たす為、ここに呼びましたーふぁ……ねむ」
真っ白な部屋の中、唐突にそんなことを欠伸をかきながら告げられた。
バエル ? 契約 ? い、意味がわからない。
部屋の中にはケーキとコーラが置かれている長いテーブルと椅子とクッションがある。
そして悪魔と名乗った相手はテーブル越しに大きなふわふわもこもこのくまちゃんクッションでだらけていた。
ただ呆然としながら正面でだらけている悪魔の姿を見るしかなかった。
クリーム色した長い髪、大きな瞳と悪魔というより妖精のような容姿をしており、ぶっちゃけぶかぶかのパーカーを着ながらポテチを食べている幼女に見えない。。
とりあえず、真っ先に浮かんだ疑問を聞いてみよう。
「あの……バエルさん。なんで俺全裸なんですか?」
そう。俺は今、全裸である。
「それは、死んだ時その格好だったからでしょ」
「えっ? 俺死んだの?」
「覚えてないのか……まぁこれ見たら思い出すでしょ。ポチッと」
バエルはポッケっトの中からリモコンを取り出して、ボタンを押した。
大きなモニターが現れ、映像が映し出される。
いやな予感がする。何だか、今から自分の黒歴史を見せられるような、そんな予感がした。
み、見たくねぇ。そう思いながらもついついモニターを見てしまう。
そのモニターには
『あああああああああああああ !!! 爆死したあああああああ !!! 何で !?何で出ないの!? 7万も課金したんだよ!? 理不尽過ぎぃ! ピックアップ仕事しろよ!! 殺すぞ糞運営! あああああああリアルなんて糞だわ、こんな世界おさらばして異世界に行って旅に出た』
「うわああああああああああ! やめろ! やめてくれー!」
俺は耐えきれなくなって思わず叫んだ。
思い出した! コツコツ親から土下座しながらせびって貯めてきたお小遣いをソシャゲのガチャで使って爆死したんだ!
その後ヤケクソになってネットで「異世界行きかた」と調べて、偶然見つけた悪魔が願いを叶えてくれる儀式を勢いで実行したんだった!
まさか、こんなことになるなんて……
「思い出した?」
「思い出した! 思い出しましたからこの映像止めてぐだざい! おねがいじまず!」
「え、いやいやこの映像、ここからが面白くなるから」
バエルはポテチとコーラをつまみながら面白そうに映像を見ている。
こ、こいつっ楽しんでやがるっ!! なんて悪魔なんだっ!!
『えいさぁぁぁぁぁぁ〜い!! はらますこいこぉぉぉぉい!! えいさぁぁぁぁぁぁ〜い!! はらますこいこぉぉぉぉい!! エロイムエッサイム!! エロイムエッサイムゥゥゥ!!』
全裸で叫びながら血走った目で奇妙なダンスを踊っている俺の醜態がモニターに映っている。
「だっははっ!! やばいっ!! 面白すぎでしょ!! あはははは!! ひぃひぃ! お腹がっ!! 痛い!」
「うわぁぁぁぁ!! 見たくない!! 見たくない!! こんな情けない姿をこれ以上見たくなぁぁぁい!!」
やめろ! これ以上見ていたら俺の脳が破壊されるぅ〜!! 心が壊れるー!!
「しかもこの儀式、やっても63億分の1の確率でした成功しないようにしてるのに成功させるし。ねぇ、なんでその運をガチャで発揮できなかったの? ねぇ、ねぇ?」
「そんなの知るかボケェェェェェ!! 俺が知りたいわ!! なぁ!! 頼むっ!! お願いだからもうやめて……」
俺はびえーんと泣きながらバエルに頼んだ。
「えー人生どん底に落ちたら人はどうなるのかがわかる面白い映像だったのにーまぁいいや」
バエルは笑い涙を拭きながらぽちと映像を切り替えた。
モニターの映像が切り替わり誇大な草原や美しい海、そびえ立つ塔、村と思われる集落がし出される。
「転生先魔王と勇者と神様が存在している剣と魔法の世界。人間で言うファンタジーだね」
バエルはどこからかtシャツと赤のジャージを取り出し、はいと渡してきた。
ありがたく受け取り、着ながら映像をながめる。
「……いい感じだな。ちなみにチート能力とか貰えるのか?」
ここはかなり重要だ。ニートで無能ボーイの俺が異世界転生してもゴブリンあたりに無茶苦茶にされて死ぬのが目に見えているからな。
マジでチート能力もしくはチート武器が必須だ!!
「あ、そんなものはないよ」
「は?」
「だってあんたの願いは異世界で旅がしたいでしょ? チート能力は契約外だよ」
げ、マジか!? 確かにチート能力が欲しいまでは言ってなかった気がする。
異世界転生とチート能力はセットと思い込んでいた自分がいた。
いや、ここはゼロから始められることを喜ぼう。
自分の力で強くなって行くのも悪くはない。
「まぁ、代わりといったらなんだけどあんたの生前の財産を持ち込める事が出来るよ」
はいと紙とペンを渡してきた。
財産か……パッと思い浮かんだのは金だった。
しかし双葉家は金持ちでもなく宝石や高値の絵や壺を持っているわけでもない、財産と言えるものなんて持ち合わせていない。
「財産と言ってもお金だけじゃないよ? 心のそこから大切だったもの。例えば友達とか……あ、ごめんニートのイツキに友達なんているはずないか」
「い、居たしっ。俺にだって仲が良かった友達くらい3人くら居たしっ!!」
「過去形なんだよなぁ。まぁいなかったら飼ってたペットでもいいよ」
ものすごく失礼なことを言われながら友達の名前を書いてバエルに渡す。
「まぁ、かわいそうだし。見ないでおくよ。ポチとかタマとかだったら悲しい気持ちになるし」
「頼むわ……ん? なんだ? この指輪」
長テーブルにあるケーキの皿に隠れる様に魔法陣が刻まれている銀色指輪がぽつんと置かれていた。
不思議そうに指輪を手に取る。
「それはソロモンの指輪。全悪魔に絶対命令を下せたり、様々な力があるんた。まぁ、素質がないと使えないんだけど」
「へー」
ケーキを食べながらあることを閃いた。
「あのさ、この指輪を使って絶対命令したらバエルも一緒に異世界転生できるんじゃないか」
「あーそうね。私悪魔だから強いし、魔王とかワンパン楽勝だね」
バエルは俺の言葉を興味なさそうにゲームをしながら適当に流した。
「まぁ? コミュ症、ニート、童貞の人として3アウトのイツキに指輪の力が使えるとはおもえないけどね。ぷーくすくす」
こ、こいつっ!! さっきから俺のことばかにしやがってっ!!
は、腹が立つんですけど!!
でも無理矢理連れて行こうとしたら瞬☆殺されるのが見えている。
「あ、手続きは済んだから、転生したいならあそこにある祭壇から行ってねー」
ねぇ、もう明らかにゲームに夢中で俺なんか相手にしてないんだけど!!
……ああ、そうかい。そっちがそういう態度取るならやってろうじゃねぇか!!
俺はテーブルの上に置いてある指輪をはめてバエルに命じた。
「お前も一緒に来い!! いや無理矢理にでも連れて行ってやるから無駄な抵抗はするな!!」
ボコボコにされるのを覚悟の上でバエルに襲いかかった瞬間、指輪は緋色の光を放った。
「えっ!? その光……まさか!!」
バエルは動揺しながらあっさりと俺に抱えられ俵持ちされる。
「うわぁぁぁぁ!! う、うそでしょ!? か、体に力が入らないっ!?」
おお、これはもしかして指輪の力が働いているということか?
まぁいっか!!そんなことより祭壇に向かうとするか!!
「え、まって!! 本当に待って!! こんなのが悪魔の王としての資質があるってこと!?」
「ま、自分、天才なんで」
「うわ!! うっざ!! 糞うざいんだけど!! うわぁぁぁぁぁ!! ちょっと!! 何してくれてんのさ!! 嫌だぁ!! こんな明らかに地雷の貧弱クソニートと一緒に転生なんて嫌だぁぁぁぁ!!」
「これからよろしくな☆相棒っ☆!! 頼りにしてるぜっ」
「いやぁぁぁぁ!!」
涙目でオロオロしながら滅茶苦茶に慌てふためいているバエルを見て愉悦に浸りながら祭壇へ登り、白い光に包まれた。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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