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第2話 店のおじさんも案外ナイスガイ

「やっと見つけたぞ、小僧!お前だな、さっきオレの店のりんご食ったやつは!」


冷汗が溢れ、身体が凍りつく。ジタバタしても、おじさんは強い。


しかも、さっきは伏目がちに隠していた赤い目を、しっかりと見られてしまった。


これはまずい。赤目族とバレてしまっては……


「ーー小僧、顔つきからしてもしやと思ったんだが、やっぱり赤目族か」


終わった。人生終了のお知らせだ。

ーー黒目族は、赤目族を罵り、暴力を振るう蛮族だ。

さっき罵られた。次は暴力だろう。


エドは、思い切りぐっと目を閉じた。後悔が波のように押し寄せてくる。どうしてこんなところに来てしまったのか。どうしてもっと詳しく父に相談しなかったのか。


覚悟を決めようと、でも決められず、弱く拳を握る。涙が溢れる。


殴られるか。蹴られるか。殺されるか。


目を閉じてぐっと力む。早く、早くこの時が過ぎ去ってほしい。怖い。殴らないで。死にたくない。ごめんなさい。ごめんなさい。許してください。……


長い後悔と懺悔を続けていたが、いつまで経っても、おじさんからのアクションがない。


気付かぬうちに殺されたのかと思うほど、時間が経った、気がした。


片目ずつ、そっと目を開くと、おじさんはとても優しい目をしていた。


店のおじさんは、こちらの首元を締めるその手を、そっと緩めた。


ストンと足から落ちたが、ぜんぜん痛くない。全身の力が抜け、そのまま腰が砕けて、尻もちをついてしまう。


「おじさん、どうして……」


「それより小僧、さっきお前が食った、赤いりんご、うまかったか?」


「うっ、うん」


「そうか、何よりだ。つくり甲斐があるってもんよ!まずいって言ってたらぶん殴るところだったぜ!ハハハハ!」


「ええ、はっ、はい……」


おじさんはしゃがみ、目を細め、穏やかに深い目つきで山肌を指差して、


「小僧、お前は黒目族がどれだけ赤目族と違うか、見に来たんだろ?」


堅くなりつつ、こくりと頷くと、おじさんは「やっぱりそうか」とわらった。軍曹のように鋭い目つきと体格には、とても似合わない顔つきだ。優しそうに目尻に皺を寄せている。


「ーー」


エドは、複雑な感情だった。嵐の前の前触れというか、おじさんの急な態度の軟化は、なにか悪い出来事の前兆のように感じた。


果たして、目の前のおじさんは、何を考え、こちらをどうしたいのか。


わからない。


と、おじさんが手を伸ばしてきた。


ーー殴られる!


ぐっと握りしめた拳はそのままに、唇をぎゅっと縛った。


「ーーっ!?」


おじさんは、こちらに手を伸ばし、そっと頭をぽんぽんとしながら、「怖がらせちまって、すまんな、小僧」と言っている。


おじさんの意外な姿に、エドは呆気を取られていると、おじさんは、


「いいか小僧、よく聞け。オレはお前と同じように、この山肌を駆け上がり、何度か赤目族の区域に足を運んだことがある」



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