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2③・禁忌の森+禁忌の森

 禁忌の森。

一度入ったら簡単には抜け出せない遭難の森。動く森。

そんな普通は入ってはいけない森に、僕は今無許可で侵入している。

一人きりというのもなかなか寂しい。

一刻も早くこの森に入っていった子供たちを助けて帰りたい。

はぁ、キユリーが僕に着いてきてくれていたらなぁ。

でも、あいつはまだ子供だから危険な目には会わせるわけにはいかない。

年上である僕が動かなければいけないのである。

不安で不気味で異界で怖い森。

ガサガサザワザワと風によって木々が揺れている音が響く。


「おーい。誰かいるか?

助けに来たぞぉぉ」


そういえば子供の名前を聞いていなかった。

助けるべき目的の子供の名前がわからないのはキユリーも同じだったから。

そもそも助けるべき人物がどこの誰の子供かも分からない。

キユリーはただ見ただけだ。

大人と一緒にこの森に入っていく子供を見ただけだ。

これだけでは誘拐の疑いは皆無である。

しかし、あの国民があれほど忌み嫌っていた場所だ。

遭難者が自分の子供であるかもしれないのに、無関係だと逃げ去っていくほどの場所だ。

そもそも、入ろうという人はいないのではないか?

つまり、それでも入るということはただ事ではない。

誘拐ではないにしても、怪しいことにはかわりない。


「おーい。誰か返事をしてくれ~」


返事はない無人の森。

この森にただ1人取り残されている。

そもそも、キユリーが嘘をついている可能性だって否定できない。

だって、あいつと僕は頼り頼られた存在でしかない。


「おーい。誰かいないのか?」


それでも、本当に子供がいた場合のことを考えて僕はこの足を進める。声をあげ続けるのも決してやめない。

もしかしたら、本当に子供が遭難しているのかもしれない。

もしかしたら、本当に子供が誘拐されたのかもしれない。

その可能性を否定することはできない。

それを僕が救いにいかねばならない理由は存在しないが、誰も動かないのなら僕でも動いてやるものだ。

まぁ、もしもキユリーの見間違えで僕が禁忌の森を歩き回っていただけで1日が終わる。なんて、そんなことがあった方が僕としてはいいのである。

僕は1日を無駄にされたという事でキユリーを脅して何かしらの請求を行えばいいし、子供の親は何も心配することがなかったのだ。キユリー以外はみんなが幸せになれる。

その方が今、禁忌の森を1人で歩いている僕としては好都合なのである。




 正直に言うと、今の僕には誘拐犯と白熱した闘いを行いたいなんて感情は微塵もない。

「できることなら、無事にこの森を脱け出せたらいいな~」なんて考えている最中である。

キユリーなら「正義は勝つから大丈夫です」って言ってくれるかもしれないけれど……。正義が勝つのではなく、勝った方が正義なのではないか。

なにせ僕は弱い。身体能力もない特殊能力もない異世界転生者でもない。異世界転移者である。自分を変えられる期間がなかった。僕は頼りない。

それでも向かうのは子供が助けを求めているかもしれないからだ。

その心配する心が正義の心を動かしてくれている。

しかし、こんな薄暗く方向も分からないような森の中でどうやって子供を見つければいいんだ……。


「…………ん? 方向も分からない?」


何かに気づいたように僕は周囲を見渡す。

先程までは木の根を股がないように草の部分を歩いてきたつもりだったのだが。

既に俺の背後は木々に覆われて、先へ進むしか道がなくなっている。

そういえば、キユリーが「この森の木は動く」だの言っていたような気がする。

完全に迷ったのは僕の方であったのだろうか。このまま迷い続けて最後には誰にも気づかれることなく生涯を終えるなんてことが起こりそうだ。

いや、「入ってはいけない禁忌の森は実は人を喰らう魔障の森でしたテヘッ!」なんてオチになってほしくない。

もしそうならば、ここに放火して森ごと焼き払ってやる!!

などと威勢のいい事を言えるのは今だけかもしれない。もちろん、そんなことをする勇気も方法もないので、仕方がない。

僕はこれ以上迷うことになるというのに、更に足を進めて暗い森の中を子供を探しに向かっていった。




 あれからどれ程歩いただろうか。

時間にして1時間は経過しているような気がする。

あれほど、森を歩き回ってようやく僕は新しいものを見つけた。

広い空間に出たのだ。

これまでは木々が生い茂っていただけだったのに……。

御神木とでも言われそうな巨大な木が中央に立っていて、その周りは原っぱである。

その大きな木をなぜ御神木と言ったかというと、それほど巨大な大きな木であったというのも理由の1つではあるが、その木専用であるかのようなしめ縄が結んであるからである。


「すげー!!!」


その一言でしか言い表せなかった。

これは、この森の中で一番大きいのではないか?

圧倒されてしまう。その存在感に驚かされてしまう。

こんな、所に子供がいてくれれば目印となっただろうに……。しかし、ここにも子供の姿はなかった。

ここまでの距離だってなかなかの距離だったのだが、これよりも先に子供が行くとは思えない。子供の足で行けるとは思えない。

けれど、このときの僕はこれよりも先にはいったい何があるのだろうか?

この禁忌の森には何があるのか?

本当に気になっていたため、子供探しの目的に意味付けつつ、僕は御神木を後にドンドン先へと進んでいった。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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