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20・二刀流と大太刀+赤羅城 戦②

 突然の出来事に兵士も革命軍も困惑した。

音もなく現れた1人の女侍が赤羅城の心臓を刀で突き刺したのである。

彼らは目の前に忽然と現れたバティンに視線を向けながら、とある事実を悟った。


「赤羅城が死んだ…………」


「赤羅城が殺されたぞ!!!!!(数人)」


これまで感じていた死への恐怖心が一気に無くなる。兵士も革命軍も今は敵味方関係なく赤羅城の暗殺を喜んでいた。

バティンはその歓喜溢れる光景について無関心のまま、赤羅城体から自身の刀を抜き取る。


「ふっ…………なんとか気づかれずに済んだな」


この場の全員にとって敵であった赤羅城はバティンの突きによって心臓を刺されて死亡。



……したかに見えた。



 バティンが赤羅城の体から刀を引き抜いた後、地面に落ちそうになっていたはずの赤羅城の死体が起き上がる。

確かに心臓を貫通して絶命したはずの赤羅城が起き上がったのだ。


「…………フゥゥ。久々に味わったぜ。久しい暗殺だ」


「バカな。貴様の心臓を貫通させたはず……」


ザワザワとこの場にいる者達の中でざわめきが起こる。

みんな目の前にいる赤羅城が死んでいないことに驚いているのだ。

そんな彼らに赤羅城は鼻で笑いながら、声を上げる。


「あんなすぐに終われるわけねぇだろ?

まだ死にきれねぇよ。俺はまだ闘い足りないのに、呆気なく死ぬなんてできるか……」


赤羅城は自身の頬をパンパンと叩き、しっかりと眼を覚まさせると、バティンの顔を見た。


「ああ、お嬢ちゃんの一撃。よかったぜ。

気配を感じさせることなく、音を極力出さないようにして……。速やかに手軽に無駄もなく。いい一撃貰っちゃった。最高だ!!」


赤羅城は満面の笑顔でバティンのことを褒め称える。

そんな彼の鎧にはいまだに刃が貫通した後がくっきりと残っている。

だが、先程まで出ていた出血は止まっているようであった。


「どういうことだ?

お前はなぜ生きているんだよ!!」


バティンは赤羅城との距離を取りつつ、鞘から刀を取り出す。

そして、赤羅城の大太刀がすぐには届かない距離に到達すると、刀を構えて彼に問う。


「…………ああ、やっぱ聞いちゃう?

いいぞ。教えてやらぁ!!

カッカッカ!!」


赤羅城はそう言ってご機嫌に笑うと、大太刀を肩に乗せて一言呟いた。


「俺はな……。“不死身”なんだよ」


「不死身……?」


「不死身だ。

俺はどんなに傷ついて死にかけても死ねない。

そういう加護? いや、呪いか? う~ん。

まぁいいや。俺は生まれながらにして死なねない男だったのさ」


赤羅城はそこまで言うと、大太刀を構えてバティンに狙いを定める。


「さぁてと、お喋りはもう終わりだ。早く殺り合おうぜ!!

俺を殺せるものなら殺してみろよ。お嬢ちゃん……いや、女侍ィ!!」


赤羅城が声を上げる。ギザギザとした彼の歯がまるで彼女を噛み砕きたいと言わんばかりの猛獣のような牙に見えてくる。

バティンは「はぁ……」とため息をついた。

彼女自身を名指しで指名されたのだ。

マルバスに指示されなければ絶対に闘いたくない敵と闘うことになってしまった。

もしもバティンが赤羅城の不死を知っていれば、他の方法で暗殺していた。

それほど、赤羅城との接近戦を回避しようと考えていたのである。


「仕方がない。姉様のためだ。私が対処してやる」


しかし、赤羅城をもう一度暗殺することは不可能になってしまった。

直接赤羅城を倒さなければならなくなってしまった。

それなのに、バティンは赤羅城を前にしてニヤリと笑ったのである。




 赤羅城とバティンとの戦闘が開始する。


「「退け!! 邪魔だ!!」」


2人は息ぴったりに周囲の人間に向けて叫ぶと、すぐに闘いを始めた。

周囲の人間は今が戦闘中にも関わらず、バティンと赤羅城の前から急いで離れる。

2人の戦闘に巻き込まれるわけにはいかないと、彼らは2人の距離から遠く離れた場所へと逃げていく。

こうして2人の周囲には誰もいなくなった。

死体が邪魔ではあるが、2人はおもいっきり闘うことができるようになった。

大太刀と刀がぶつかり合う。

激しい刀と大太刀のぶつかり合いは、金属音を鳴らしていく。

お互いに気を抜けない激しい戦闘。

何度も何度も赤羅城は攻めるが、バティンは必死に防御していくのだった……。


頭上からバティンの脳天めがけて大太刀を振り下ろす赤羅城。

バティンはそれをどこからか取り出した2本目の刀で受けきる。


「……うぐっ」


「ほぉ、二刀流も出来るのか?

おもしれぇ。おもしれぇ!!!」


そして、すぐに赤羅城は大太刀を横に大きく振り、バティンの胴体を狙う。

バティンはその攻撃から身を守るために数歩蹴りながら移動。

この距離なら届かぬであろう距離を計算しながら避けていたつもりだったのだが……。

予想以上に大太刀の長さが長く、ギリギリ避けることになってしまった。

だが、赤羅城の突きから斜め上からの斬りつけ。

これにはたまらずバティンは横へと逃げる。


「おいおい、女侍。避けてばかりじゃ終われねぇぞ?」


赤羅城はそう言ってバティンに挑発を仕掛けてくるが……。

バティンにとっては迂闊に近づくことこそが危険。

攻撃を仕掛けてもカウンターで地面に叩きつけられるかもしれない。

距離を取っても突きで体を刺されれば、突き刺したまま振り下ろされるかもしれない。

バティンが赤羅城に攻撃を仕掛けるには彼の間合いに入り込み、攻撃するしかないのである。

しかし、そんな隙が赤羅城から生まれるわけもなく……。


「死ぬまで傷付け合おうぜ!!

俺はお前を気に入った!!」


斜め上から振り下ろされる大太刀。

それを防御しながらバティンはもう一本の刀で赤羅城に突きをお見舞いしようとするが……。


「なに!?」


赤羅城はわざと自分の体にバティンの刀を突き刺させて、動きを一時押さえた。

その後、赤羅城は痛みを感じる様子もなく、横に勢いよく大太刀を振るう。


「この…………化物め」


「お前もな……ここまで生き残っている相手は久しぶりだ。だから楽しいのさぁ!!」


バティンを褒める赤羅城であったが、すぐに攻撃を再開する。

だが、バティンもここからは負けてはいなかった。

バティンは大太刀の攻撃を鎧が壊れるスレスレで避ける。そして、がら空きになった胴に向かって2本の刀を突き刺した。


「ゴグッッ……!!」


その痛みに思わず顔をしかめる赤羅城。

そして、バティンの連撃が始まる。

赤羅城の胴から刀を抜き、手を止めることなく鎧の隙間に突き刺す。


「死ね化物ォォ!!!」


無数の剣筋。無数の攻撃。

二刀流のバティンの攻撃は赤羅城の体を斬りつけていく。

それは殺意に満ちた視線。

だが、斬られて大量の血が出ている赤羅城はそんな状況下でもニヤリとこの状況を楽しんでいるようだった。




 最後にバティンの強烈な突きが赤羅城に向けて放たれる。

今までで一番強いバティンの突き。

赤羅城の体はバティンの一突きによって石垣へと激突してしまった。


「ハハハハハハハ。おもしれぇおもしれぇ!!」


全身から大量に血を流していても、赤羅城は興奮気味にこの状況を楽しんでいる。

そんな様子の赤羅城にバティンは思わず、引き気味になる。


「…………貴様。ハァハァ。

そんなに元気だと私の努力が無駄みたいに思えるだろうが……。ハァハァ」


体力を使いすぎたバティンは息をきらしながらも赤羅城に刀を向けた。


「いやいや、最高。こんなに血を流したのは久しぶりだ。良い戦闘になった。

だがな……女侍。体力を使いすぎたお前の負けだ。俺様の切り札。使ってやるよ」


赤羅城は再び大太刀の刃先をバティンに向ける。

そして、彼は一歩前に踏み込むと自身の武器を軽々と振り回しながら、バティンに向けて攻撃をしかけた。


「『不死風花ふじふうか』」


赤羅城の激しい大太刀による連続攻撃。

振り回され続ける大太刀にバティンは防御しきれないまま、攻撃を受け続ける。

止まらない連撃がバティンの体を傷つけ続ける。


「……!?!?!?!?」


バティンにはこの攻撃を判断する隙も与えられない。

まるで流れる風のように連撃はバティンの全身に放たれる。

上下左右斜め。

バティンはただ頭を刀で守るしかできない。

バティンの着ていた鎧は攻撃のあまりの強さに砕け始める。

こうして、全身を大太刀の連撃が襲った後。

赤羅城が最後に放つ一撃。

大太刀を引き、力をためて強烈な突きを正面に向けて放つ一本突き。


「ッ……………!?」


バティンの体は地面に突き飛ばされ、そのまま起き上がれなくなってしまう。

大太刀による激しい連撃と強烈な一本突き。

これこそが赤羅城の切り札であり必殺技。

『不死風花』である。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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