13・お手紙+条件
「姉様?
どういう事でしょう?
革命運動に手を貸してもいい?
父上がそう指令されたのですか?」
バティンはマルバスの受けた指令に驚きを隠せないままマルバスに問う。
実際、バティンもナベリウスさんも僕も彼女の受けた指令に驚きを隠せなかった。
バティンが一番気にしていた僕の革命運動参加による被害…………両国間で戦を起こすキッカケになるかもしれない事。
モルカナ国が革命運動に手を貸すということは戦にも近い行為のはずである。
「ああ、お前らの言い分は分かってる。
だが、同盟の交渉は決裂。アナクフス国は敵側に付いた。我が国とはすでに敵対していると父上は見たのだ」
マルバスはそう言って机の上に数枚の折り畳まれた紙を置く。
それは手紙であった。
モルカナ国国主ヴィネからマルバスへの指令の手紙である。
『やあ、私のかわいい天使たち。
同盟は失敗したようだね。残念だよよ。
まぁ、あちらが敵側に付いた事は理解した。
それならば……と私は考えたのさ。
新国家派? 新国王派?
呼び名は分からないけど、ここでは革命軍とでも呼ばせてもらうよよ。
革命軍、君たちには戦力が足りないんじゃないかな?
そこで私のかわいい2人の天使とそこにいるエリゴル君を派遣してあげるよよ。自由に使ってくれよよ。断るのなら彼女たちは即帰還さ。
まぁ、国を滅ぼすにしても悪霊退治にしても2人は力になるはずだよよ。
ただし、こちらにも条件がある』
「条件……?」
『君たちの勝利した際には、我がモルカナ国との同盟を結んでもらう。魔王国に対抗するための同盟さ。
大事な戦力を送るんだ。ちゃんと利子は返してもらわなきゃね。
利子は同盟+資金援助+兵力の援助だ。
【打倒!!魔王国・資金50億・戦時に貴国の兵士を要求する数】
これが条件だよよ』
マルバスがここまで手紙を読むとナベリウスさんが物申す。
「ちょっと待ってください50億!?
資金援助に50億ですか!?!?」
この世界の金銭感覚についてはよくわからないが50億ってやはり高いのだろう。
たしか、物価が元の世界の10分の1と考えればよかったから……。
「えっと…………50億×10だから……」
僕は指で計算しようとしたが指の数が足りなくて諦める。
とにかく、これはヴィネからの無茶な要求であった。
ナベリウスさんからしても戦力は多い方がいいだろうし、モルカナ国後ろ楯があると考えれば心強いのかもしれない。
だが、今の現状にまで落ちているアナクフス国に金があるとは思えない。
ヴィネさんもボランティアという形で革命運動に協力する気は絶対にないのであろう。
僕だって命を握られていなければ絶対に参加しない。
「姉様姉様。魔王国でも受け取った契約金の合計30億でしたよ」
「待て待て2人とも。続きがある」
マルバスは1枚目の紙を2枚目の紙の裏に敷き、2枚目を読み始めた。
『きっと相手は資金援助に驚くかもしれないね。
魔王国より高いじゃないかと……。
きっと相手さんは調査が得意な人なのかもしれないね。
素直にハイと言わないんだから国について知識はある。
だけどね。今すぐ払えと言うわけではないんだよよ。
数ヵ月に分けて払うも良し。一気に返済するも良し。
しかし、無理ではないんじゃないかな?
新しい国ならばね。
それに魔王国から受け取った30億を足しにすれば不可能ではないと思うんだよよ。まぁ、いくら残っているかは分からないけど……。
さて、そろそろ手紙を書くのも疲れてきたよ。
それでは選びたまえ……。
今その国と戦いみんなと一緒に滅びるか。
我が取引に応じ、未来の自分達に賭けるか。
今この手紙を見ている君が決めるんだお嬢さん』
マルバスは2枚目を読み終える。ヴィネさんからの手紙はこれで最後。
「私が決める…………」
全てはナベリウスさんの判断に託された。
ふとナベリウスさんの方を見ると、彼女は顎に手を当てて下を向きながらどうするべきか考えている。
深く考えている。
そんな彼女を元気付けるように僕は彼女を励ます。
「ナベリウスさん……。どっちを選んでも僕はあなたの革命運動に協力しますよ!!」
どうせ、この条件を呑まれなければ僕は死ぬのだ。
ナベリウスさんから離れてしまえばこの首輪爆弾が爆発してしまう。
なのでまだナベリウスさんと別れることはできない。
ナベリウスさんの判断には僕の命も乗っているのである。
「さぁ、ナベリウス殿。選んでくれ。モルカナ国はあなたの判断に従う」
マルバスの発言の後、全員の目がナベリウスさんに向けられる。
3人の目線を感じてもナベリウスさんは考える。
そして10分後。ナベリウスさんは深く深呼吸をして顔をあげる。
どうやら彼女の選択は決まったようだ。
「…………迷いはありません。分かりました。必ず契約金はお支払します。なのでよろしくお願いしますお2人共」
彼女は椅子から立ち上がり、マルバスとバティンに向かって深く頭を下げた。
こうして正式にモルカナ国が革命運動に協力することとなったのである。




