5①・姉様が好きな妹様+バティン談①
『ナベリウス・ラピス』さんに初めて会った次の日。
僕はこのキンスリード宿屋で今日1日居残りを命じられてしまった。
マルバスとバティンは朝から外出。
僕は1人部屋の中で暇を潰していた。
「2部屋借りて僕だけ1人部屋だからな~」
今日は11日。
僕がナベリウスさんに爆弾の解除を求めにいく時間まであと14時間。
それまでが暇だ。
このまま僕は暇な時間を過ごしつつ、2人のために留守番しておかなければいけないのはツラいが……。我慢するだけである。
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私は『バティン・ゴエティーア』。
我が姉様の忠実な妹であり、しもべ。
好きな者は姉様。嫌いな者は姉様と私の間に入ろうとするゴミ。
近親愛。姉様が好き。異常なほどの姉様依存。
神に私を姉様の妹に生まれさせてくれてありがとうと感謝し、神に私を姉様の妹に生まれさせてくれたことを恨む。
もしも私が姉で姉様が妹様だったら私が姉様(妹様)をめちゃくちゃ愛することができるのに……。
とにかく、姉様が死ねと言われれば死に、生きろと言われれば生きる。姉様に絶対服従の妹。それがバティン・ゴエティーアである。
「しかし、姉様……。本当に今日も行くんですか?」
姉様と私は昨日もこの道を歩いた。
目的地は中間層と富裕層が住むように分けられた場所の間に建てられているお城に向かうのだ。
確かに、姉様と2人きりでこうして町を歩いているのは幸せな時間を過ごせていて嬉しい。
しかし、私はこの国の国王が嫌いだ。初対面の印象が仲良くなれそうになかった。
『エリゴル・バスター』よりは嫌いではないが……。最悪首を斬りたい。
「私はこのまま姉様と2人きりで観光がしたいです。昔のように……」
せっかく昔のように2人きりの状況なのに……。そう付け加えようとしてたのだが、姉様のお声を遮りそうだったので思わず口を閉じる。
「ああ、今日も行かなきゃいけない。それがオレ達の仕事だ。父上に頼まれたんだからな」
此度の旅行は父上からの仕事を達成するついで……。
そんなことは私もちゃんと理解しているが、やはり姉様との時間を増やしたい。
エリゴルはこのまま置き去りにして、二泊三日でもいいから高級ホテルで姉様と2人きりの時間を過ごしたい。
そして夜はホテルを買い取って…………
「姉様、あなたのためだけに用意させました」「バティン。ホテルを買い取るなんて。さすがに高かったんだろ?」「いえいえ、姉様の笑顔を見れるならこんな買い物安い安い。いくらでも買えますよ(キメ顔)」「バティン。お前って奴は本当にかわいい奴だな!!」「いえいえ姉様には遠く及びませんわ」「…………バティン。ずっと隠していたんだ。実はお前にプレゼントがあるんだ。この超高性能レーザー刀を受け取ってほしい……。そしてオレのことも」「ああ、いけません姉様。プロポーズは私からさせてください」「バティン……」「姉様……」
……(以上バティンの妄想)
「……では姉様。父上に命じられた仕事が無事に終わればその時は私と…………あれ?」
私の側にいたはずの姉様が横にいない。
「おーい、お前大丈夫か? 何してるんだ?
立ち止まっちゃって。何かあったのか?」
ああ、どうやら私は途中で足を止めて妄想に浸っていたらしい。
私としたことが不甲斐ない。
「申し訳ありません姉様。ただ今すぐに……」
私は急いで姉様のもとへと走る。
妄想で2人きりを味わうよりも、今は貴重な2人きりの状況を味わう方を優先すべきである。
妄想の姉様は私を常に愛してくださる。
現実の姉様は私の愛を気づかぬまま頼ってくださる。
私にとってはどちらの姉様も最高に等しいのである。




