1③・★+宣教師
……というわけで僕たちがやって来たのはこちら。“人気のない場所”!!!
宣教師の僕が出会ったばかりのオレッ娘女子に連れていかれたのは人気のない2人きりになれる場所。
だが、ここで興奮してはならない。気合いをいれているのだ。
・ここで行われる可能性があるのは3つ。
①「私あなたのことを一目惚れしちゃったの。お願い。私のために毎日神話を聞かせてくださらない?」などという愛の告白。一目惚れだよ。
②「お前の荷物を渡しな!!! 追剥だぜ。安心しろ魂は神の所に逝くんだろ?」などという金目の物を狙った犯行。まぁ、オレッ娘強盗か~。
③「貴様は怪しい奴だ。布教など許さん!!」などという異教徒反対論者であるという衝撃の事実。これだけは否定せざる終えない。
確率が高くあってほしいのは①だが………現実的には②だろう。
実際、こんな簡単に一目惚れなんて起きるわけがない。
夢物語じゃないか!! いや、もしかして起きるのか?
僕は①を選んでほしい。
こういう体験をしてみたいのだ。リアルで体験したい。現実がいい!!
僕の頭は今混乱している。でも、こんな人気のない場所に女性に連れられたのだ。不安と期待で頭がおかしくなっているのは理解してほしい。元からアホではないということはきっちり把握しておいてください。
とりあえず冷静になりつつ、彼女に話を聞いてみることにした。もちろん、言葉遣いは冷静だ。
「あの……いったい何をする気ですか?」
告白であってください。告白であってくれ。強盗は嫌なので告白でお願いします。
心の中で必死に手を合わせて僕は拝む。
さぁ、答え合わせの時間だ。彼女の口から出てきた答えは……?
「なぁ………俺から見てあんたは怪しい存在だ。いとも簡単に子供たちを話術の虜にしてこの町で何を企んでいる?」
③だったかぁぁぁぁぁぁ!!!!
彼女は急に静かになった僕を心配して声をかけてくれている。
「おい、どうしたんだ? なんで真っ白になってるんだよ?」
だが、その声は僕の耳から耳へと出て行って脳で聞き取れていない。燃え尽きたぜ、本当に燃え尽きた。
まだ②でないだけマシだったかもしれないが、①を選んでほしかった。
でも、あんなに感想を述べてくれた彼女が異教徒反対論者だったとは……僕は君の中にルイトボルト教信者の素質を感じたのにとても残念だ。
「そっかそっか。君は残念な奴だな」
「ハァ? お前はオレのことを何だと思ってんだ?」
「そりゃ、美……おっと。
君は国主のように僕が布教活動している事に不満を持っているのだろう?」
「馬鹿か? 国主が何だ!! お前が手柄でも立てて国主を見返してやればいいだけじゃん」
「そんなこと言われても僕はただの宣教師だ。それによそ者の僕が手柄を立てるチャンスなんてあるわけがない」
「チャンスは落ちてるもんじゃない。見つけに行くものだ。……ってオレはなんで人生相談なんてしてるんだ。オレのうつけ野郎ゥ!!!!」
あれ?
確か、彼女からの話を聞きに来たのに、僕の悩み相談に移っている。
しかし、こうやって言ってくるという事は彼女は異教徒反対論者ではないのだろうか。
とりあえず、彼女の話を最後まで聞いておくのもよい判断かもしれない。
「なぁ、君が残念な奴だって言ったことは謝るよ。でも、僕に何を聞こうとしているのさ?」
一応、先ほどの無礼を謝罪する。すると、彼女も調子が悪いと感じたのか、おでこをトントンと2回ほど叩いてから本題を話し始めた。
「オレも悪かった。
なぁ、あんた…………服脱いで」
うんうん、初対面の相手に服を脱いでほしかったのか。
それなら仕方がない。と言われた通りに僕は上着を脱ごうとする。
そうか服を脱いで裸になってほしいのね………変態ッ!?
いや、そういう趣味の持ち主なのだろう。人のフェチを否定はしちゃいけない。
だが、僕に当てはまる項目は零!!!
「そういうのはその………知り合いに言った方がいいんじゃ?」
いきなり出会った相手に裸を見せてと頼まれるのは、なんだか僕も不安になる。
本心としては見せてあげても構わない。僕の裸なんて全然問題はない。例え逆で…………何でもないです。忘れてください。
まぁ、それでも理由くらいは知りたいんだ。
でも、声を出すとすぐに余計なことを口走ってしまいそうなテンションなので、僕はただ熱い目で彼女に訴えかける。
「ああ、オレのことを誤解しないでほしい。ちゃんとした理由ならあるんだ」
「なんですか? 宣教師の体がそんなに見たいんですか?」
「あんたは【闇星】って聞いたことあるか?」
僕からの質問は華麗にスルー。
それにしても闇星とはいったいなんだろう。
星とはキラキラ光るもの。宇宙にある天体。夜空に光るロマンティックなものというのは理解できている。
しかし、闇星ってのはさっぱり聞いたことがない。僕には思わず首をかしげてしまうくらい聞いたことがない。
「いや、失礼した。動揺していないということは知らないという事だな」
「ああ、知らないよ。なんなんだその闇星ってやつは?」
「────闇星ってのはこの大陸で暗躍している組織の名前だ。黒と赤の線の五芒星のマークを背中に持っている組織。オレはそいつを追っている」
五芒星といえば一筆書きできる星のイメージだが、いろいろな所で意味を持ち、その歴史は古いといわれている。
陰陽師が使ってるとか聞いたことがあるようなないような……。
「その組織のメンバーはオレの母を殺した犯人なのさ。あれは忘れもしない6年前………」
こうして、彼女の回想が始まった。心の準備すらする暇もなく。彼女は語り始めた。
「『………あの夜、オレはトイレに行くためにどうしても母親の部屋の前を通らなければいけなかったんだ。
だが、その時起きていたことがオレの運命を大きく変えてしまった。
母の部屋から臭ってくる嫌な臭い。そこには床で血まみれになって息絶えている母上の姿と暗闇に立っている数人の姿があった。
オレは一目でそれが暗殺されている現場だと知った。だが、小さかったオレは恐怖で震えるしかなかったんだ。
その部屋から臭う血の匂いと、優しく誘い込もうとする妖気。月光が透き通るような1人の男の白い肌を照らしてた。
すぐにでも何もかも捨ててそこから逃げ出したいとオレの本能が叫んでいたんだ。
そんなオレのことに気付いていたのか。奴らはその部屋から逃げようとする前にこう言った。
「哀れな力なき仔よ。天下人になる宿命の1人よ……。この国の貴族よ。貴様らは奴隷だ。闇の奴隷。全ては1人の我が殿に集まる定め。いずれ戦場で会おうぞ」
その言葉を聞いた瞬間、オレは無我夢中で自分の部屋へと飛び込んだ。
あそこにいては殺される。これは夢だと信じたかったのだ。
でも翌朝、現場に残っていたのは母が墨汁で必死になって遺した【闇】という漢字と【五芒星】のマークのダイニングメッセージだった。』
それ以来オレは母が遺した手掛かりを追っている。
そして、近年ようやくそいつが闇星という組織だという事を知った!!!!
だから、あんたを試したかったんだ」
彼女が語る回想はこれで終わった。
なるほど、母親の仇を探しているという事か。
(しっかし、彼女の母親が闇星っていうダイニングメッセージを書くのは苦労してそうだな)なんて考えたりもした。
でも、だったら、服を脱ぐのも仕方がない。
僕着ていた服を脱ぎ捨てる。そこに恥ずかしさなどない。
僕は彼女の母親の仇を討ちたいという気持ちに感動したのだ。
それで、僕への疑いが晴れるというのなら、僕は何度でも君のために全裸へと…………。
『自主規制』
何も言ってくれない。
「よし疑いは晴れた」とか「ああ、もういい」とか一言でも声をかけられると思っていた。
でも、そんな声をかけてくれることはない。
だが、服を脱いだ僕の体に何か言う事でもあるのだろうか。
彼女は顔を真っ赤に染め上げて両手で顔を隠している。
そして、僕を叱りつけてくる。
「馬鹿!!! 背中だけでいい。背中だけ。
下も脱ぐ奴がいるかこの大うつけが!!!」
どうやら、見せるのは背中だけでよかったらしい。失敗した。大失態だ。
彼女から本気のビンタが僕の頬に炸裂。
先生にもぶたれたことない僕にとっては初めての経験だったが、これで性癖が変更されることはなかった。
【今回の成果】
・女の目的は【闇星】への復讐だったよ
・全裸になったよ




