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10①・一本+亥 戦③

 男を3つに分かれさせ、マルバスの前へと飛んできたその中身。脱皮して生まれたばかりなのに打ち上げられたロケットのごとき速さで移動してきた怪物。

その姿はまさに異形。

人間のような体格でありながら、足は1本。

化物猪の皮を全身に纏い、影になった顔の部分には尖った目が3つ。

両手には長さの違う牙で出来た刀を持っている。

あの猪だ。化物猪だ。

化物猪の体から生まれた、人外の化物だ。


「フシュュュ……………………」


生まれたて、変態したての強靭な肉体。筋肉ムキムキ。

化物猪の時よりも、その大きさは人間に近い体つきにはなっている。

そんな化物猪が両手を縛られて動けないマルバスの前に着地したのである。


「……ッ…………!?」


マルバスはその場から動けない。逃げようにも逃げられない。だから、彼女はただ黙って化物猪の様子を伺うことしかできなかった。

すると、化物猪の中身はその場で周囲をうかがい始めた。スンスンと匂いを嗅いだり、キョロキョロと顔を動かしている。


「……ドコダ…………?」


その場にいたマルバスに問いかける化物猪。

奴はその場にいただけのマルバスに問いかける。片言の発音で問いかけてくる。


「ドコダ…………『シトリー』ヲサシダセ。アノ娘ハドコニイル?」


「はぁ?

あの娘って?

シトリーって?」


だが、マルバスはシトリーの事を知らないようだ。

ということはあの日、マルバスはシトリーとすれ違っていないのだろうか。


「コノ森ニオラヌ。ムスメ。娘ガ見当タラヌ。

妻ニスベキ娘。人身御供ガオラヌノダ」


どうやら、化物猪はシトリーの事を再び探しているらしい。

森の中を探してもいないシトリーをひたすら見つけるために歩いていたということだろうか。

そして、猪としての体をやめて、別の怪物になっても奴は捜そうとしている。


「そうか。シトリーって女は知らねぇよ。オレは会ったことがないからな。他を当たってくれ」


「ナラヌ。アノ日貴様モイタ。アノ男トイッショニイタ。教エロ。隠スナ。ワレハ『亥』。【十二死】ノ亥。語ラネバ、貴様ヲ終ワラセル。貴様ノモ故郷ヲ終ワラセルゾ?」


亥という化物猪はマルバスを疑っている。彼女を疑うことをやめない。彼女が真実をのべているにも関わらず、奴はマルバスが犯人の関係者だと思い込んでいる。

そして、奴は僕といっしょにいたマルバスのことを覚えていた。だから、シトリーを連れ去った犯人である僕の仲間だと思い込んでいるらしい。

なんということだ。

マルバスはこのままでは何も発言できずに殺されてしまうかもしれない。彼女は隠し事をしていないのだ。何も知らないのだ。

だから、せめてこのまま化物猪がマルバスに対してなにもしないことを祈る。

「(くそッ……頼む。マルバス。変なことをしないで無事でいてくれ)」と僕は心の中で祈っていた。

だが、マルバスはそんな大人しい美少女ではない。その事を僕は完全に忘れていた。


「うるさいな!!

知らねぇよオレは!!

だいたい、亥でもない化物のお前が人間の娘を妻にするだと!?

バッカじゃないか?

この獣姦願望亥がぁあ!!」


ああ、何をやってるんだろう。あいつはバカなのか?

普通はこんな時に助かろうと、相手を煽るような真似はしない。下手に煽ってしまえば、相手の怒りを買って殺されてしまう可能性だってある。だが、マルバスは化物猪に向かって暴言を吐き捨てた。化物猪の怒りをおもいっきり買ってしまった。これはさすがに化物猪もお怒りに…………。


「……シュー、シューシューシューシューシューシューシューシューシューシューシューシューシューシュー!!!!!!!!!!!!」


予想通り。マルバスの暴言を聞いた化物猪は血走ったような目でマルバスを睨み付けて、鼻息と呼吸を荒くしている。一目見ただけでも怒っているなんて丸わかりだ。

このままではマルバスが殺されてしまう。

怒りを買ったマルバスが殺されてしまう。

そんなことになったら非常にまずい。

僕が何もできずにマルバスが死ぬところを見ていたなんて知れたらバティンに呪い殺される。末代まで祟られるかもしれない。

それに、この世界から美人が1人消えてしまうことにもなる。それは困る。


「ああ、くそッ。もうどうにでもなれ!!」


もう考えるのもやめた。

僕は隠れていた木々から颯爽と飛び出し、2人の前に姿を現す。

その姿を見つけたマルバスの表情はとても明るく安堵した顔になった。


「おまっ…………エリゴル生きてたのかよ!!」


マルバスは僕が死んだものと思っていたのだろう。

A級裁判も釘野郎の襲撃も生き残ったとは想像もしていなかったのだろう。

彼女は僕の登場を嬉しそうな気分で出迎えてくれた。感動の再会である。


「……お前絶対バカだろ!! アホだろ!!

お前、そういうときは相手の機嫌を取るんだよ!!

なんで、機嫌を悪くさせてんだよバーカ!!」


こんな理由での参上でなければの話ではあったがね……。

【今回の成果】


・十二死の亥はシトリーを捜してたよ


・マルバスと再再会したよ

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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