表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/280

13 ①・裏切り者のマルコシアス+蝕の集合体への対処

 裏切り者と遭遇。『虹武将“橙”。正直者の『フォルセティミス・マルコシアス』は僕らを裏切ったのだ。

出会い頭に遭遇した僕らはお互いに武器を握りしめ、相手を抑えかかろうとする。

戦闘経験ではもちろん僕が叶うはずもない。だが、距離的にも運的にも僕の方が尽いていたようだ。

僕は、マルコシアスの一撃を避けて背後へと回り込む。そして、彼の背中に青い短刀の刃を当てた。


「やぁ、裏切り者。ひさしぶりに会ったな」


「裏切り者とは心外な。もともと僕はこちら側です。あなた達に着いていたのもベリアルの監視が故。僕にとってはあなた達こそが敵なんですから」


お互いに隙を見せない状況だ。僕は青い短刀の刃をマルコシアスに向けているが、いつ彼に反撃を食らうかわからない。

突き刺す前に攻撃を食らうことだってあり得る話だからだ。

だからこそ、僕らはしばらく会話を行う。少しでも相手が隙を見せたら攻撃ができるようにするためだ。


「じゃあ、敵なら戦闘不能になって欲しいな。僕らは今、忙しいんだ。僕には時間がないんだよ」


「そうなのか。虹武将にこっぴどく殺られて逃げてるのか?

お前らみたいな帝国への反逆者にぴったりな話だね」


「虹武将に恐怖など抱くものか。僕だって1人倒したんだから」


「へーー。嘘はいけないよ。正直にならないと。それより、他の連中はどうしたんだい?

君は見捨てて逃げてきたんじゃないのかい?」


そんな台詞を口にしたマルコシアスは冷静な態度を取っているが、少し動揺を見せた。

そして、彼からの返答に僕も少し動揺を見せた。

見捨てて逃げてきた?

それは、たしかに、そのとおりかもしれないのだ。僕は、マルバスに甘えて見捨てているのかもしれない。

そんな中、僕の耳にフレンドちゃんが囁く。


「ねぇ、フレンド。さっさと殺しちゃいましょ。時間の無駄ですよ。裏切り者には死を。早めに殺しちゃいましょう!!」


いつもより殺意マシマシな発言を耳元でしてくるフレンドちゃん。何か焦っているのだろうか?


「あなたのためです。こいつの運命はそういう運命なのです。

さぁ、フレンド。殺しちゃってください……」


たしかにフレンドちゃんの言うとおりかもしれない。どうせこいつは虹武将だ。僕らの敵だ。

今、僕がやるべきことはベリアルを探すことだ。ベリアルを探し出して、アンドロ・マリウスの中にいる蝕の集合体を何とかしてもらう。

そのためにはこんなところで道草を食っている場合じゃないのだ。時間を無駄に使っている場合じゃないのだ。


「…………」


フレンドちゃんの言うことは正しいかもしれない。

このまま、マルコシアスに時間を使っていたら無意味だ。

ベリアルを見つける時間が足りない。マルバスを助ける時間が足りない。アンドロ・マリウスを救い出す時間が足りない。

今は一分でも一秒でも、時間が惜しい。

マルコシアスをさっさと殺して、ベリアルを早く捜しに行かないといけないんだ。

マルバスを死なせたくない。アンドロ・マリウスを連れ戻したい。

できるだろうか?   いや、しなきゃいけないんだ。

そうじゃないと、僕の心が不安に押しつぶされてしまう。







 でも……。それじゃいけないんだ。


「…………なぁ。マルコシアス。相談があるんだ」


フレンドちゃんからの囁きは聞こえない。僕は青い短刀の刃を下げて、マルコシアスに頼むことにした。


「えっ、何をしてる。僕は敵だぞ?

この剣で君の首を切り落と……!?」


マルコシアスは驚きで思わず、口を閉ざした。

だって、僕は信じることにしたからだ。裏切り者を頼ることにしたからだ。

僕は頼った。僕はマルコシアスに向かって土下座を行ったのである。


「お願いです。どうか、アンドロ・マリウスを救ってください」


「きっ、君。さすがに。いや、いやいや。お前らは帝国を脅かす存在なんだ……」


「アンドロ・マリウスを救わないと、帝王も危険なんだ。帝国への呪いが蝕の集合体となってる。

まだ顕現したばかりだけど。これ以上、成長すると誰も勝てなくなってしまう」


蝕の集合体と帝王家への呪いが合わさったことで、帝王家を滅ぼすまで止まらない呪いと化してしまったアンドロ・マリウス。

そんな暴走した彼女を止めるには、今のうちにしかないのだ。

僕らにとっても帝国側にとっても危険な状況なのだ。

だからこそ、今はお互いに協力し合うしかないと僕は頭を下げている。

だが、マルコシアスは慌ててはいるものの、すぐに返事を決めきれないらしい。彼は自分の中で葛藤している。


「たとえそうだとしても。僕は君を救わない。だって……だって、裏切り者だぞ」


「アンドロ・マリウスを救ったら、殺しに来ても構わない。それまでの同盟だ。

僕らは帝王を討つ、君らは僕らを殺す。その流れに修正するための協力だ」


「それを口にするのか。

その覚悟が君にはあるのか?

僕は、すぐさま君を斬り殺すかもしれないぞ。僕は君の目の前で、救われたアンドロ・マリウスを斬殺するかもしれない。それを君は見ていられるのかい?」


仲間が死ぬ未来。救い出した仲間が殺される未来。

そんな未来がいつか来るかもしれないなんてわかってる。


「わかってる。それでも僕は未来に進む。

今のままでも過去のままでも、僕は嫌なんだ。僕は未来に進みたい。

大切なのは、未来に挑むことなんだ。だから、僕はこんなところで立ち止まるわけにはいかないんだ!!」


でも、何もしないまま後悔する今の方がつらい。

仲間が死ぬ未来なんて不安はない。

だって、仲間が死ぬ未来を変えることだってできる。予知すればいいんだ。

僕が未来を変えればいい。僕は未来予知ができるんだ。

せっかく見えた不幸な未来を現実にさせるつもりはない。

そのために、今がむしゃらに行動しないといけないんだ。

だって、今をどうするかで未来なんていくらでも変えられるのだから。


「だから、僕に協力してください!!」


「はぁ…………」


マルコシアスがため息をつく。


「僕は正直者なんだ。同じ正直者はその声質でわかる。今の君は、正直だ」


「それじゃあ…………?」


「虹武将にもベリアルにも言うなよ?

正直言うと、僕が手柄を獲て、帝王様に褒めてもらいたいからね。

帝国を影から救った英雄になるのさ。

ああ、安心しなよ。蝕の集合体ってのは知ってる。たぶん僕のほうが強い。

能力には、相性ってもんがあるらしいしね」


そう言って、彼は剣を収める。

アンドロ・マリウスの中にいる蝕の集合体を対処できるまでの短い期間だが。

再び、マルコシアスを味方にすることができたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ