7 ①・爆発の檻+帝王バラム 戦④
遅れてしまい申し訳ございませんでした
マルバスとアンドロ・マリウスの前に現れた帝王『バラム・アーネモネ・レメゲト』。
彼女が出ていった方向ではない方向から彼女は現れた。
「驚いているな。そんなに驚くことでもない。余は正真正銘帝王である」
帝王は落ち着いた様子で自分のポニーテールの髪を擦るようにして2人に告げる。
一方、アンドロ・マリウスとマルバスはお互いに武器を構えて警戒態勢を維持し続けていた。
「そうだろうなバラム。オレにはあんたが偽者だとは思えない。どんなシカケかは知らないけど。来てくれたんなら好都合だ!!」
最初に行動を開始したのはマルバス。
マルバスは爆弾と剣を両手に握り、「『Mixer arms』」と口にする。すると、両手に持っていた武器が、目の前から消えて、そして新たにマルバスの手には新しい武器が握られていた。
それは2つを合わせた、爆弾剣。刃が当たると爆発を発してしまう剣である。
「行くぞ、アンドロ・マリウス!!」
「はい、もちろんです」
2人は一気に帝王に向けて間合いを詰める。手には武器を構えており、無防備な帝王の首へ殺意と共に刃を放つのだ。
「いいだろう。余が直々に迎え撃ってやろう」
一方、帝王は丸腰の状態でその場から逃げることなく、ただ2人の攻撃に対して構えを取っていた。
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アンドロ・マリウスとマルバスはお互いの武器の刃がぶつかり合いそうなのを確認した。
「「!!!???」」
いつの間にやら目の前にいたはずの帝王がいないのである。
そして、このままでは爆弾剣とアンドロ・マリウスの剣の刃がぶつかり合って爆発してしまう。そうなれば、アンドロ・マリウスの武器に傷がついてしまう。
帝王の状況は理解できないが、それだけは避けなければいけない。
マルバスはそう思って、自身の手に握っていた爆弾剣を横に放り投げてしまう。
一方、アンドロ・マリウスは動きを止めて、帝王の位置を確認する。
すると、2人が攻撃を開始したスタート地点にすでに帝王は立っていた。
「何があっ……あの瞬間にジャンプして避けやがったの!?」
「アンドロ・マリウス、ここは同時じゃだめだ」
マルバスは再び武器を拾って構える。アンドロ・マリウスも帝王をにらみつけるように構える。
「ふふふ」
そんな2人を帝王は蔑むように笑っていた。
まず、アンドロ・マリウスが攻める。どこからともなく取り出したどす黒い刀。
アンドロ・マリウスは丸腰の帝王にその刀の刃を振るう。
「次こそ!!」
アンドロ・マリウスの放つ刃が帝王の肉体に突き刺さりそうになる。
だが、帝王はその刀の攻撃を受けなかった。
「その刀、異質だな。だが、当たらなければ意味がない」
帝王はアンドロ・マリウスの刃の流れを完全に理解してしまう。それは今アンドロ・マリウスがどれだけ刀で振りかかろうとも、上下左右から刃が振り下ろされても、帝王はそれをすべて避けてしまったのだ。
「なっ、何ぃぃぃ!?」
「我が妹よ……貴様には失望ばかりだ」
そう言って帝王はアンドロ・マリウスの首を締め上げる。
アンドロ・マリウスの身体は首を掴まれた状態で足がぶら下がっており、彼女は必死に帝王の手から逃れようとしていた。
もちろん、マルバスはそれを助けるつもりでいた。
しかし、帝王はアンドロ・マリウスを人質に取っている状態だ。
そのため、マルバスは剣での攻撃を行うことができない。
「人質か…………だが、助ける」
しかし、アンドロ・マリウスを助けないわけではない。
剣での攻撃ができないなら遠距離だ。
マルバスは再度「『Mixer arms』」によって今度はまきびしと拳銃を合成。
「喰らえ!! 帝王!!」
銃弾のようにまきびしがまっすぐ帝王の方へと飛んでいく。
帝王はアンドロ・マリウスを盾にしようとしたが、アンドロ・マリウスはそれに抵抗。
そのせいで反応が遅れてしまう帝王。迫りくる銃弾のまきびし。
「ふぅ…………」
帝王は大きくため息をついた。その後、なんと掴んでいたアンドロ・マリウスの首ごと思いっきり床に叩きつけてしまった。
「グッ!?」
衝撃でうめき声にも聞こえるような小さな声を口に出したアンドロ・マリウス。
その声にマルバスは思わず、視線を向けてしまった。
「アンドロ・マリウス!?!?」
彼女が心配で視線を帝王からアンドロ・マリウスに移してしまったのだ。
そして、次にマルバスが気づいた時には帝王はまきびしの銃弾を避けてしまったらしい。しかもそれだけでなく、帝王は壁にかけられていた槍をいつの間にか手にしているようだ。
さらに、その槍を何の躊躇もなくマルバスの額めがけて思いっきり投げてくる。
投げられた槍にマルバスはとっさのギリギリ紙一重で避ける。
そして、避けたマルバスは勢いよくアンドロ・マリウスのもとへと駆寄ろうとした。
だが、帝王がそれを許すはずもない。
「自分の身を案じなかったことを後悔するがいい」
帝王はアンドロ・マリウスを再び人質にとるつもりらしい。
マルバスも帝王もアンドロ・マリウスのもとへと向かおうとする。
距離は帝王の方が数歩で届く位置としては近い。
だが、マルバスには妨害することができる武器を持っているのだ。
「させるか!!」
マルバスは再びまきびし銃を帝王に向けて発砲。狙いは頭ではない。マルバスが放ったのは帝王の足である。
「チッ!?」
帝王はまきびしを太ももに受けてしまう。背後であり、床との近距離さで気づくのが遅かったようだ。
ただ、それでもマルバスが作れる時間は秒にも満たない。
それでも、マルバスはアンドロ・マリウスを救いに行く。
一方、アンドロ・マリウスは少し頭を打った衝撃が酷かったのか、すぐには起き上がれない。顔を見上げると帝王がこちらへと向かってくる姿を確認した。
「向かっているらしい。帝王が私を人質にする気なのだろう。
だが、私はしない。私が求めるのは復讐。私は復讐を乗り越えて自分の運命を始めるんだーー!!」
すると、アンドロ・マリウスは手に持っていた何かを帝王に向けて投げた。それは爆弾剣。
爆弾剣は宙を舞いながら、帝王へと向かっていく。
帝王はその爆弾剣を避けることができない。
そして、爆弾剣は帝王へと直撃。
爆弾剣の爆発音が激しく大廊下を響き渡っていた。
帝王が爆発に巻き込まれた。
だが、マルバスは知っている。帝王はこの程度では傷もつかない。だからこそ、マルバスはアンドロ・マリウスを回収。
そして、急いで帝王から距離を取る。
「まだだ!!」
マルバスの準備はまだ終わらない。彼女は地雷とハリガネを合体させた罠を作り上げる。念には念を入れて使うことにした。
地雷ハリガネは大廊下中の壁と壁に繋がれる。それは帝王を閉じ込める鳥かごのように彼女を囲んでいたのだ。
アンドロ・マリウスはマルバスに抱えられながら、ハリガネに囲まれている帝王の状況に疑問を感じる。
「あれは……?」
「あれは、帝王を閉じ込める鳥かご。ハリガネに触れたら爆発する。少しでも動けば爆発するぞ。いくら帝王といえど何度も何度も爆発に巻き込まれたらひとたまりもないさ」




