6 ・再び鉢合わせ+帝王バラム 戦③
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フォカロルの身体が真っ二つ。
溺死したと思われていたアンドロ・マリウスはフォカロルの背後を斬りつけた。
アンドロ・マリウスの手にはこれまで見たことのないどす黒い刀が握られている。
「………………はぁ」
全身ずぶ濡れになったアンドロ・マリウスは、真っ二つになったフォカロルを踏みつける。
真っ二つになったフォカロルは動かない。攻撃を受けないはずのフォカロルは死んだように動かない。
マルバスの周囲を飛び回っていた流水も、床に落ちていった。
「アンドロ・マリウス……生きていたのか?」
「 」
「おい、アンドロ・マリウス?」
「…………あっ、はい?」
「よかった。生きてたんだな。アンドロ・マリウス!!」
「当然でしょう。私は普通の人間とは違うのです」
ケホケホと気管に入った水を咳き込んで吐き出す。
そして、アンドロ・マリウスとマルバスはお互いに顔を見つめ合った後、視線をフォカロルの方へ向ける。
「「こいつ、どうしてやろうか」」
────────
不意打ちで驚き、気絶してしまったフォカロル。
彼が目を覚ますと、周囲は真っ暗になっていた。
「……おい。誰か、カーテンを開けろ。まったく、今朝はどうして起こしてくれないんだよ。脱走したか?」
仕方がなく、フォカロルは自分の足でカーテンを開けるために移動しようとするが……。
すぐに彼は今の自分が寝ぼけている状態だということを理解することができた。
「ああ、そういえば。帝王の所に来てたっけ。そして、あのクソ共に出会って……」
マルバスをいたぶっていた最中に後ろからいきなり切断されたのだ。
そこまで思い出して、フォカロルは記憶を鮮明に蘇らせる。
そして、改めて周囲の状況判断を行う。
「何だここ!! ぼくの身体が液体のままじゃないか。狭いなぁ。肉体のままだと圧死するくらい狭い。まさか、閉じ込められた?」
まるで壺の中のようだ。だが、内部から割ろうにも何故か割れない。
「くそ、出せ。これは明らかに加害問題だぞ。このぼくがこんな目にあっていいはずがない。無礼だぞ。不敬だぞ。許されんぞ。このぼくを侮るな!!」
一方、壺を見ながら嘲笑っているのはマルバス。
「見てみよ、アンドロ・マリウス。この壷、なんか震えているぞ。気絶してた奴が目を覚ましたようだな。ハハハハ!!」
マルバスは壺を持ちながら、壺を眺めて笑っている。
先程まで、自分たちの命を狙っていた敵が今ではこんな小さな壺の中。
そのギャップがなんとなく、マルバスにとっては愉快なものだったのだ。
「その壷は馬車に積んであった荷物の1つ。中からは簡単には壊せれないようになっている。つまり、フォカロル。お前は終わりだ!!」
マルバスは手に持った壺を柱の影に隠した。すぐには見つからない位置に置いておけば、フォカロルを助ける者たちへ対する時間稼ぎにはなる。
その間に帝王から玉座と聖剣を奪い取れば、全てはマルバスたちの計画通り。
「さて、もういっか」
マルバスは壺を隠した場所をもう一度眺めてみる。その場所は立ち位置からはわからない場所だろう。
だからこそ、フォカロルの発見を遅らせて、その隙に帝王を叩くつもりなのである。
「よし、行くぞ。アンドロ・マリウス!! これできちんと帝王との戦いに挑める」
「ええ、もちろんですとも!!
いいですか、マルバスさん。ここからが本番ですよ」
いつの間にかアンドロ・マリウスの持っていたはずの黒い刀は消え去っていた。マルバスはそのことに気づかず、彼女とアンドロ・マリウスはその場で握手を交わす。
さて、フォカロルの襲撃にも対処して、今から向かうのは帝王のいる玉座の間。
帝王がそこで聖剣を手放してから、武器のない帝王を襲おうという作戦である。
だからこそ、アンドロ・マリウスとマルバスは今から玉座の間へと向かわなければいけない。
しかし、反対方向にあるお祝いの場から一人の女がこちらへとやって来た。
「やる気に満ち溢れておるな。せっかくの載冠の儀なんだ。もっと気楽になっても良いだろうに」
マルバスとアンドロ・マリウスはその女の顔を見て、驚いてしまう。
それはこの場にいてはいけない存在だったのだ。
「なんで、お前がここにいるんだ!!」
「おかしい。あなたは今、玉座の間に向かっているはずよ!!」
アンドロ・マリウスとマルバスが見た人物。それは帝王『バラム・アーネモネ・レメゲト』。
早くも、玉座の間よりも前の地点で、帝王とマルバスとアンドロ・マリウスは出会ってしまったのである。
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フォカロルが捕らえられていたその頃、帝国内では異変が起こり始めていた。
まず、その異変を発症したのは南地区に住んでいる3人家族の父親。
「……喉渇くな」
今日は暑い日でもなく、激しい運動を行っているわけでもなく、水分補給も取っていたにも関わらず、彼は今喉が渇いていた。
男が喉の渇きに悩んでいると、妻が不思議そうに尋ねる。
「喉乾いたの? 何かを持ってきてあげようか?」
「ああ、すまない。お願いするよ」
「ねぇ、何が飲みたい?」
「うーん。お茶をお願いするよ」
「はーい」
家の台所へ緑茶を取りに行く妻。男はその姿を見送りながら再び仕事に悩んでいる。
そして、ふと窓の外を見た。ここは帝国の田舎町なので帝都グリモアールを見ることもできる。
帝都グリモアールでは今頃、載冠の儀が行われていることだろう。
「(うむ……何故か。帝都グリモアールに行かなければならない気がする)」
男は窓の外を見ながら何故かそんな気持ちになってしまった。
すると、妻がお茶を運んでくる。
「はーい。お茶を持って来ましたよ」
妻から差し出されたお茶。氷も入れてキンキンに冷えたお茶。
男はいつもの通り、そのお茶を飲んだ…………。




