19 ②・決意と決定+ウヴァル 戦②
少し投稿時間が遅れてしまいました。申し訳ございませんでした。
アンドロ・マリウスは天井を見上げている。彼女の脳は走馬灯のようにこれまでの人生を流してくれている。数秒の休息とともに、思考は流れ行く。
アンドロ・マリウスとしても許せないものはあった。
彼女から王座と聖剣を奪うことで、帝王の座を奪ったこと。彼女に兄殺しの濡れ衣を着せて、友達のメイドを無実の罪で殺し、彼女を追放したこと。
その時の恨みは残り続け、今も途切れることはない。
だからこそ、アンドロ・マリウスは復讐を達成しようとしているのだ。
それこそが、帝王の座を奪い返し、帝王になることである。
だが、その後帝王になって彼女自身が何をしたいか。
アンドロ・マリウスはどんな帝王としてやっていくのか。
それは、帝王に聞かれたときから心の奥底で考えていた。
帝王を超える帝王になるに……。今のあの帝王を超えられる存在になるために……。
───今の帝王にはできていないことをする。
「ああ、そうだよ。ハァ……あの野郎は正義で、私は罪人だ……。
私は……今の平和な帝国に…………波乱を生み出そうとしている」
「それがわかっていてなぜ。なぜ自覚しているのに」
「私は……帝王を超える」
「──超える?」
「甘いんだ……。帝王は……。
帝王は恐れている。これからの……災害を。
私はあの……〘二百年前の隠された歴史〙を知っている。歴代の……帝王にしか……知らされない……歴史を」
「その話はまさか」
「ハァ……他人に言ってはいけない歴史という禁忌、それを守っているだけじゃダメなんだ。だから、私が帝王にふさわしいんだ」
「それは……それは……」
「私は行動する。これまでよりも徹底した正義を!!
平和ではない泰平を。そして、帝王を超えられる帝王になる。
私が帝王になったら、巻き込んでやりたいことがある。だから、私は帝王になるッ!!」
アンドロ・マリウスは全身を奮い立たせる。普通だったら、スターちゃんの全体重を載せている馬乗りから逃れることはできない。だが、スターちゃんは強化デザインされたベイビーであった。人間としては、普通とは違うのである。
スターちゃんは見誤っていた。普通の人間としてアンドロ・マリウスを見てしまっていた。
それが彼女を動揺させてしまう。その隙をアンドロ・マリウスは見逃さなかった。
そして、その瞬間スターちゃんを突き飛ばす。
アンドロ・マリウスの一瞬の隙をついた行動で、スターちゃんからの馬乗りから逃れることに成功。
「私はここで死んではいけない。
確かに、ほんとうにモルカナ国には迷惑をかけて申し訳ないと思ってる。
でも、ごめん。私は帝王になるよ。
私は帝王になって、正義をより徹底する」
アンドロ・マリウスの決意は固い。
彼女はハッキリとスターちゃんへ理由を伝えた。
自分が帝王になる理由を、帝王にならなければならない理由を。
だが、それをスターちゃんが認めるはずもない。
「ウヴァルちゃん。やっぱりあいつは殺すしかないよね」
「そりゃぁ、ダメだよ。あーしは、反抗的な態度を叩き直してって言ったよ〜」
「でもさ、あいつ。ウヴァルちゃん!!」
「はぁ、スターちゃんにはまだ難しかったようだね。残念だねぇ〜。しかたがないよぉぉ。相手が、前の仲間だったから、ちょっと遅くなっちゃったかな?」
「待って。ちゃんとやるから。やつがれ、ちゃんとやるから。すぐ殺るから。
やつがれに仲間なんていないから!!」
スターちゃんがウヴァルの足元に駆け寄って、彼女の足に抱きつく。
ウヴァルはまったく嫌そうな顔をしないまま、スターちゃんの頭を撫でてあげている。
「それじゃあやってくれるかな?」
「もちろん。やつがれに任せて!!」
そう言って、スターちゃんはウヴァルの足から離れて、再びアンドロ・マリウスの前に立つ。
そんなスターちゃんに向かって、アンドロ・マリウスは短刀を握りしめ、その刃をスターちゃんに向ける。これは敵対宣告であった。
「スターちゃん。私、進むね。あなたとの日々は楽しかった。でも、今ではもうその洗脳は解けない。だからといって、恩人を見捨てるつもりもないけれど。
私は私の責任を果たすよ」
「わかったわ。あなたとはもう絶交よ!!」
お互いがお互いを敵対する存在として意識した。もう甘いことを考えている場合ではない。アンドロ・マリウスは例えば相手が洗脳されてしまった仲間だとしても、立ちはだかるのならば戦うつもりなのだ。
だが、こうして、戦闘が始まろうとする最中……。
「「「……???」」」
スターちゃんとアンドロ・マリウスとウヴァルは不思議な物を見た。
それらはスターちゃんの近くの床に現れた。黒い影のような穴から這い出てきたのは4人の人間。
「『つちの』ちゃん。メッでしょ?
絶縁なんて言葉をお友達に使うんじゃありません」
「元気に登場!! ウム、つちのよ。心配するな。やつがれに任せろガオォだよ!!」
「ねぇ、どうでもいいけど。早く終わらせて。
広い部屋に行きたいですわ。ここでは走り回れなさそうですもの。時間がないですわ」
「眠い……おなかがなります」
それは、スターちゃんにソックリな人間たち。ところどころ特徴が違うが、顔や髪型や服装などがソックリなのである。
「お前ら、『みずの』『きの』『かの』『ひの』!!」
何故か、この場にスターちゃん5人衆が勢ぞろいしたらしい。その目的は不明だが、4人はつちのばかりに視線を向けている。
どうやら4人はスターちゃん(つちの)に用があるらしい。
そして、4人は一斉にスターちゃん(つちの)に向かって言葉を吐き捨てた。
「「「「せーの。『つちの』、あなたを処分します!! 」」」」




