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10③・愚か者+クロケル 戦③

 石化した赤羅城の殻の内部が揺れ始めた。内部で人としての原型も留めていない彼が再び人の姿になろうともがいているのだ。

そして、5分後。

石化した赤羅城の殻がピキピキと砕け始め、中から人の形となった赤羅城が姿を見せた。


「ひでぇな。悪魔だなんて。俺は悪魔じゃねぇ、俺は人間だよ」


裸の姿でクロケルの前に現れた赤羅城は髪の毛をかきあげながら言う。

そんな彼にすっかり恐れをなしてしまったクロケルは腰が抜けたまま返事をする。


「───あのような芸当ができる者が人であっていいはずがない。お前のような虐殺魔が人であっていいはずがない」


「俺は人だぜ。己の欲望を持ち続け、他者に対しては己の心のために接する。そんな俺は人間だ。

俺がやってきたことは他の奴らと変わらない。

人間とは、欲望だ。そこに善も悪もない」


赤羅城は腰の抜けたクロケルに手を差し伸べようとするが、クロケルはその手を弾き返す。

そして彼の言い分を否定するために大声で語り始めた。


「ちがう。お前は、お前は悪魔だ。我らが正義だ。

見ろ。誇り高き載冠の儀に、大陸を治める帝王様の命を狙う貴様らの行動を。

これを悪と言わずして何と言う。

お前らは悪だ。平穏を壊す悪党だ。

私たちはみんなが幸せになれるように、悪を滅っさなければならない。この正義に誓って……だっ」


その最中、彼女自身が今そのようなセリフを語るにふさわしくない体勢なのを思い出し、彼女は立ち上がった。

そんな彼女を小馬鹿にするように赤羅城は悪口を吐き捨てた。


「フッ……。

正義。幸せ。平穏。

そんなに民衆、救って楽しいか?

民衆どもを救えて楽しいか?

褒められたい。頼られたい。助けてあげたい。感謝されたい。構ってもらいたい。

欲望が叶って良かったな。

じゃあ、もう素直に言えばいい。我慢することはねぇ。私の欲望を満たしてくれてどうもありがとう。ありがとう、あなた達のおかげで私は生きていけます……と!!」


クロケルは否定せずにはいられない。少し怒りをあらわにしながら、クロケルは彼の発言を否定する。


「貴様、我らの正義を愚弄する気か?

我らの活躍こそが正義だ。この大陸を治める帝国だからこそ、我らが潔白であり、欲望を持ってはならないのだ……」


「…………前々から思ってた。虹武将や帝国の誰もが帝王の言う正義のために戦っている。

辺境の何の関わりのない国のためにもな。

名も知らない国を救うために兵士や武将を派遣して、自国の兵士で死人を出して。謝礼を貰い、ゆうゆうと虹武将の手柄になって帰ってくる。

自国の兵士を金や平穏に変えて、欲望を叶える気分はどうなんだい?

───まぁ、上が上だし仕方がない。

帝王こそが自国の民を救えぬ愚か者。遠くばかりを見て近くを見れずな哀れな愚か者。

そんな奴の下につくお前ら虹武将は兵士のことなど考えるはずもないか!!」


赤羅城の挑発は続いた。明らかに挑発なことくらい、クロケル自身もわかっている。けれど、自身の正義と王家を侮辱されたことに、怒りを感じないわけがない。

彼女にとってはこの居場所が救いだったのだ。虹武将という居場所も帝王様に仕えることも、彼女にとっては自身を救ってくれた大切な物だった。

その居場所も信念も吐き捨てるように告げる彼に、クロケルは突っかかっていく。


「貴様ごときが……愚想を語るな。

お前に帝王様の何がわかる。私たちの何がわかる。

あの方は私たちに居場所をくれた。呪いで忌み嫌われる我らに居場所をくれた。それは貴様も同じはずだ赤羅城。

それでも帝王様の行いを侮辱するか。あの方のおかげで救われた民はいるんだ!!!!」


怒りに身を任せ、クロケルは再び宝石刀の刃を赤羅城に突き刺した。彼の心臓付近に突き刺した。


「ヘッ」


しかし、不死身である赤羅城は死なず、そればかりか彼はクロケルの胴に自身の右腕を伸ばして彼女が逃げられないように固定する。


「貴様ッ!!」


クロケルは彼の腕を解こうと刃を突き刺すが、一向に彼の腕は外れようとはしない。


「───だったらよぉー」


すると、赤羅城はチラリと自身の石化した抜け殻を見返す。そして、その中に向かって左手に持っていた火を点火したマッチを投げ入れようとする。

その行動の意味をクロケルは視線で知った。

赤羅城の石化した抜け殻の中には大量の爆弾。彼はその爆弾目掛けて火のついた投げ入れたのである。


「…………救われぬ民はどうなんだ。

こちとら、人種職種年齢男女平等主義者だ。俺はいつまでも待ってんだ。今から人間一人残らず殺し回っても構わない。この命の終わりまで俺は止まらない。

それを止めれる力もねぇのに。

自分たちを最強だと思い込み、向上する気なしの飼い犬、虹武将。

無理に外へと手を伸ばし、自身は玉座を離れることを恐れる帝王。

愚かにもいずれ来る終わりから目をそらす。貴様らこそが、欲望に塗れた悪党だァ」


彼は感情を込めた大声でクロケルに語ると、彼女を腕で抱えたままに石化した抜け殻へと後退する。

それは道連れである。

赤羅城は爆弾の爆発をクロケルを道連れにして、受けきるつもりだ。

不死身の赤羅城だからこそできる奥の手である。


「や、やめろ赤羅城ォォォォ!!!!」


「さて、連れてってやるよ。前時代の終わりへとな!!!!」


瞬間的に抜け殻の中にある爆弾が光を発し、クロケルと赤羅城の体はその光の中に隠される。

赤羅城はクロケルを道連れにしたまま、その光に身を任せた。

─────こうして、大きな爆発音と衝撃が第3中庭に響き渡ったのは、秒にも満たない時間であった。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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