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11②・“緑”の『アルテリオン・バルバトス』+追撃の弓矢

 時系列は数分前。

帝都グリモアールにある高層に建てられた建物。その建物全てが彼の所有している別荘だ。

時計塔よりも高い高さの建造物の最上階にはプライベートプールが建設されている。

そして、今、そのプールにて数人の男女が真夜中のナイトプールを楽しんでいた。


「アハハハハ!!」


カクテルを味わったり、お互いに水をかけあったり、泳いでいる水着を着た6人の美女たち。

そんな彼女たちとは離れた位置に夜景を眺めている1人の男がいた。

そこは火の灯りも当たらないくらいの日陰で、美女たちからはベンチの上に座っている影の姿しか見えていない。


「ねぇ~ねぇーマスター。何してるの?」

「せっかく私たちを指名してくれたのに、なにもしないの?」

「夜景ばかりみないで、マスターも遊ぼうよ」

「マスター、構ってくれないから。寂しいよ」


美女たちは遠くで夜景を眺めている男に声をかけて手招きを行う。

しかし、男は彼女たちの方に目を向けることもなく、視線を景色に向けながら誘いを断ってしまう。


「わりぃ、急な仕事が入っちまってな。今夜は交ざってやれねぇのよ。

まぁ、お前らはまた指名してやっから。今宵はオレちゃん抜きで楽しみな。

そうさな~。次は国外旅行にでも連れてってやるさ」


「「「「「「国外旅行!?!?」」」」」」


男からの発言に美女たちの目の色が変わる。

彼女らをご指名するだけでも相当な金額がかかるというのに、更にその上で旅行にまで連れていってくれるのだ。

これに目を輝かさない者もいなかろう。


「ほんとに!?」

「いいの!?」

「ありがとうマスター」

「マスターってすごいお金持ちなのね」

「マスター最高 !! マスター最好!!」

「私、マスターに会えてよかった!!」


「だろだろ?

オレちゃん最高だろう?

もっと誉めてくれ。もっと讃えてくれ。

オレちゃんはお前たちの声援で頑張れる。正義のヒーローちゃんなのさ」


気分が高揚したことで美女たちの顔を見たくなったのか、男はベンチから立ち上がると、火の灯りが当たる位置まで歩いてきた。

その手には大きな弓と数本の矢が握られている。

男はようやく灯籠の火の近くまでやって来た。


その男、髪の毛は前髪を下ろしたオールバックで赤茶色の髪色で、目は大きい。

服装は上半身は筋肉を見せびらかすように裸だが、半身を守るようにして緑色の鎧を着こなしている。他の虹武将のように刀を持ってはいないが、腰には大量の矢を入れるための筒が特注品のベルトに備え付けられている。


「だから、お前ら。オレちゃんの正義のお仕事の邪魔はしちゃダメよ?

オレちゃんは正義のヒィーロー『虹武将“緑”。追跡の『アルテリオン・バルバトス』』だからよ」


そう言って、男は美女たちにカッコつけるようにニヤリと笑った。




さて、こうして美女に念を入れたバルバトスは再び元いた日陰のベンチへと戻っていく。

そして、男はベンチの上に立ち上がる。


「さて、始めますか」


彼は夜景に向けて弓を構える。矢を持ったまま弦に手を添えて、弦を引き絞る。

そして、バルバトスは的もなにもない夜景に向けて矢を発射。


「ヴァスターの背中を射よ」


────ヒュ!!

放たれた矢は広き夜空に向けて飛び立った。

だが、矢は一定の位置まで飛び立つと、そこから更に自分自身で方角を変えて、家々の影に消えていく。

これこそがバルバトスの付喪人の能力『弓の付喪人』だ。

狙撃手の標的に向けて放たれて刺さるまで止まらない自動追撃の矢。

この矢の射程距離は無限大。標的が地の底まで逃げていたとしても、この矢はどこまでも追いかけるのだ。




 ただし、矢を射ってから数秒後。


「さて、今回の矢は当たらずか……」


バルバトスは一発目の矢が失敗したことを感じ取った。手応えがない。

普段、狙いが成功した時は冷たい血を触ったような感覚を感じる。

この触感はバルバトスにしか感じられない。

おそらく、弓の付喪人であるがゆえの能力なのだろう。

矢が当たった時、矢が突き刺さった時、まるで矢先が自分の指のような意識となる。一瞬だが、矢先が触れたものに自分も触れている最中のような感覚を得るのだ。

そして、今回感じた触感は固い木のような物に触れた感覚。

つまり、今回は失敗した。

じつは、この無限の射程距離を狙撃できる弓の付喪人の能力にも弱点があるのだ。

矢は可能な限り障害物を避けて飛んでいくが、急に現れた障害物などには対応できず突き刺さって元の矢に戻ってしまうのだ。

例えば、標的が箱の中にいる際は、箱の外側にばかり矢が刺さってしまうので標的には届かない。

このような弱点はあるものの、そこは狙撃手の判断力でカバーしなければならない。

さて、1発目は失敗。1発目で仕留められたらそれは幸運な方である。

そのため、2発目は必需。再び彼は2発目の矢を発射する。


「ヴァスターの足を射よ」


2発目の矢は夜の闇に向けて放たれて、そのまま視界から姿を消した。




 触感を待つ間、彼は次の作戦を考える。


「ああ、めんどくせぇな。だが、これが決まれば動きが出来なくなるはずだ」


そう思いながら触感を待つ数十秒間後。

彼は再び、自分の指が木材を触っている最中のような感覚を味わった。


「あー、また外れかよ」


2発目も外れ。背中も足もダメだった。そして2回とも木材を触ったような感覚を味わっている。


「ん? 木の箱にでも隠れているのか?」


そして、3発目の矢を放とうと、バルバトスは空に弓を向けた。


「ヴァスターの目を射よ」


バルバトスは今度は目を狙えば、標的に刺さると考えたのだ。

彼は3発目の矢を夜空に放つ。

放たれた矢は夜の闇に消えようとする。

だが、ここで一度バルバトスは得られた触感を整理してみた。


「1発目と2発目は触感が到達する時間が違った。

木の箱に隠れて足で移動しているなら、距離は短いはずだから時間はあまり離れない……。

さらに、木に突き刺さった位置はおそらく少し距離がある。木の木材の大きさは大きい。

そして、矢先が木材に触れた際に感じた気流の流れは勢いがいい風が横から吹いている。つまり移動はしている」


矢はこれまでと同等に再び標的を追撃するために飛び去っている。もう3発目の矢に命令をするのは不可能だ。

しかし、ここからが彼は違った。これまでの状況から判断したのである。


「乗り物か? 木製の乗り物に乗っているのだな!!

つまり、これは馬車ッ!!」


そうと決まれば、火で乗り物ごと焼き殺してやればいい。

彼は美女たちに灯籠を持ってくるように伝える。


「おい、灯籠を持ってこい!!!」


その命令を大声で伝えた時、彼は自分の指が木材に触れたような感覚を得た。今は灯籠に構っている暇はない。彼は感じる触感に集中した。

どうやら此度も失敗。しかし、これまでとは違う他の触感を感じた。


「響いている。物が崩れて落ちる。振動……これは足音か?」


異常ほどの触感を察知する力。

そういう加護か。 いや、呪いか。

バルバトスは自分の異常な察知する力に微笑みながらも4発目の矢を放とうとする。


「至急、ヴァスターの目を射よ」


こうして、バルバトスは4発目の矢を標的の目に向けて放ったのであった。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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