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2②・挑戦状+動き出す

 十二死の亥。

それは僕が初めて出会った十二死の1体である。

禁忌の森でさんざん僕を痛い目にあわせてくれた化獣である。

最終的に、禁忌の森での一騎討ちで僕は進化した十二死の亥を倒すことができたのだが。

今はその進化前の形態だ。しかし、違う点がある。それは禁忌の森で見た時の10倍くらい大きくなっていることだ。

城よりもでかいのではないかというくらい大きい。

邪気の匂いも前以上にプンプン臭ってくる。


「おい、罪人先輩!!

ありゃなんだよ。邪気の匂いだ。ひさしぶりってことは会ってんのか?」


「ああ、会ってる。あいつは十二死だ。強いぞ!!」


「十二死ってことはあの十二死の酉みたいなもんか……なるほどなッ!!」


先攻、赤羅城が動き出した。

部屋の壁を破壊して現れた十二死の顔に向かって自身の持っていた大太刀の刃で斬りつけようとしたのである。


「ジャオラァ!!!」


赤羅城は部屋から跳びだし、宙を跳びながら十二死の亥の目に向けて一撃を……。


「フンッ!!」


「なッ!?」


だが、部屋から跳び出た赤羅城ごときは十二死の亥にとっては敵ではなかった。城の大きさの十二死の亥と人間サイズの赤羅城とでは力に差があったのだ。

十二死の亥は少しだけ首を曲げる。そして、自身の牙をバットのようにスイングして赤羅城の肉体を勢いよく弾き飛ばしたのである。

───ブッ────グジャ!!

僕の視界から赤羅城の姿が消えてしまった。


「赤羅城!?!?」


返事がない。あの鈍い音は、もしかしたら……。赤羅城が殺られた音だったのだろうか。




 赤羅城がいともたやすく殺されてしまった。

正直、赤羅城のことは心配だ。でも、今は赤羅城を気にしている暇はない。

僕とアンドロ・マリウスと姉メイドちゃんの命が危険なのだ。

2人を連れて逃げることができるか?

いや、僕が囮になって2人をここから逃がす方がいいのかもしれない。

おそらく、十二死の亥の狙いは僕への復讐だろう。

わざわざ僕のいる部屋めがけて牙を突き刺してきたのだ。

だったら、僕が囮となって2人を逃がした方がいいはずだ。


「逃げるんだ。この城はもう危険だよ」


「でも、エリゴル様。ヴィネ様やおじいちゃんが来るのを待とうよ。エリゴル様1人じゃあんなデカイブツ倒せない」


姉メイドちゃんが僕の意思とは反対に、僕を置いていかないように袖を握りしめてくる。

僕も一緒に逃げようということだろう。


「アンドロ・マリウス。任せたよ」


「…………」


アンドロ・マリウスに姉メイドちゃんのことを頼む。

2人だけならきっと安全な城外まで逃げていけるはずだ。

僕が囮として何分稼げるかは分からないけれど、アンドロ・マリウスには目的があるんだし……。生き延びるべきなのだ。


「さぁ、早く行ってくれ!!」


アンドロ・マリウスと姉メイドちゃんに頼み込む。十二死の亥の動きを見るために2人の顔を見ることはできないが、どうやらアンドロ・マリウスは僕の意思を汲んでくれたのだろう。


「ちょっ客人!! あたしを担ぐな!!」


姉メイドちゃんの困惑する声が聞こえてくる。たぶんアンドロ・マリウスに担がれたまま暴れているような気がする。正直、その様子は僕も視界で見たかった。

でも、このまま、アンドロ・マリウスに連れ去ってもらおう。


「さぁ、早く!!」


アンドロ・マリウスが扉の方へと走っている。

これで姉メイドちゃんとアンドロ・マリウスは避難できるはずだ。

さて、これ以上心配する必要はないはずだ。ここからは十二死の亥とのリベンジ戦に集中しなければいけない。

だが、アンドロ・マリウスたちが退室した瞬間に十二死の亥が発した発言に意識を取られてしまった。


「……マオウ……メ」


「ッ!?」


十二死の亥が何かを口にした。片言の言葉でしっかりと発言した。

今、十二死の亥は魔王と言ったのか?




 魔王。

僕の中では魔王国というのが記憶にも残っている。

モルカナ国が同盟作りを行っている理由が、魔王国の大陸統一を阻止し打倒するための仲間作りである。

まさか、それがバレてしまったことで魔王国が敵国であるこの国を潰そうと考えたのだろうか。

だから、その指導国であるモルカナ国に十二死の亥を送りつけてきた?

宣戦布告のために?

あり得る!!

魔王国は恐ろしい国だと聞いている。それくらいしか知らないが。

しかし、十二死の亥を従えることができるとは……。


「十二死の亥。お前……魔王について何か知ってるんだな?」


「クチャクチャクチャ!!」


十二死の亥からの威嚇音。

正直、前の時よりは意思疏通ができないのかもしれないが、吐き出させてみる価値はある。

目の前の十二死の亥が前よりも強くなっているのは見てわかるが、僕だってあの時とは違うのだ。

僕は青き短刀を握る。そして、再び十二死の亥を倒すために動き出そうとした。足を一歩前に踏み出そうとした。




 しかし、結局僕は戦わずに済んだ。


「悪いなァァ!! 罪人先輩!!

もうちょっと遊ばせてもらうぜェェ!!」


どこからか赤羅城の声が聞こえてきたのだ。

十二死の亥も声の聞こえてくる方角を見る。

すると、僕の視線の先には太陽を手にして落ちてくる赤羅城の姿。

その頭は血だらけで、頭から大量に出血している。少し頭蓋が砕けているのかもしれない。

だが、赤羅城はピンピンしている。むしろ興奮状態になっている。


「ジャハハハ!!!!

ガハハハハハ!!!」


赤羅城は十二死の亥の頭に大太刀を突き刺し、そして大太刀を抜くと、そのまま十二死の亥の体を走って傷をつけていく。


「ブグギャアアアアア!!!!」


十二死の亥の叫び。十二死の亥が出血しているのがわかる。

赤羅城が生きていた。赤羅城が戻ってきた。


「「赤羅城!! 生きていたのか!?」」


声が重なる。

振り返ると、どうやら戻ってきたのは赤羅城だけではなかった。

僕の後ろには姉メイドちゃんと一緒に逃げたはずのアンドロ・マリウスがいたのだ。


「なんで!?」


「魔王という言葉が気になりまして。姉メイドちゃんは他のメイドちゃんに任せてきました。それにあなたは帝都に来てくれるんですよね?

囮として捨てゴマにはしたくないのです」


これじゃあ僕の心配や意思はなんだったんだ。呆れながらも少しうれしいのも事実だ。

罪人コンビ+aが短期間のうちに再集合。

つまり、この3人で十二死の亥を討ち取る準備は整ったのである。




 だが、現実は甘くなかった。僕がアンドロ・マリウスの方に視線を向けていた短い時間に起こってしまった。


「ガハハハッ…………あッ!?」


赤羅城の笑い声が途切れる。

バッと彼の姿を追った僕の目が見たのは……。

────バクッ!!!

赤羅城が喰われた。丸飲みだ。

十二死の亥は赤羅城がバランスを崩すように体の向きを調整した。その時、バランスを崩した赤羅城が落ちてしまう。

そして喰われた。赤羅城が喰われた。


「赤羅城!!??」


しかし、その時、十二死の亥と僕らは目を合わせてしまった。十二死の亥が次の敵に狙いを定めたのだ。

十二死の亥が近づいてくる。


「ちょっ……これはまさかッ!?」

「ヤバイ。アンドロ・マリウ 」


そして、牙で開けられた穴に十二死の亥の口が突き刺さる。

罪人コンビ+aは負けた。一瞬にして敗北した。

十二死の亥によってペロッと一飲みで3人は喰われてしまったのである。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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