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5④・99.9%+A級裁判

 「我々が調査をしようとした初日に家族ごと消えた。家はもぬけの殻。家具もまったくない。人が住んでいたとは思えない場所だった。

だから、この裁判は目撃証言だけが証拠となっている」


いや、いやいやおかしいだろ。

目撃証言だけが証拠になるなんておかしい。

記録がないのなら、簡単に捏造だってできるじゃないか。

証人を買収して好き勝手言わせることだってできるんじゃないか?


「そんなのめちゃくちゃだ!!

目撃証言なんて誘拐犯の証拠にもならない!!」


僕は怒りのあまり声を張り上げる。

冗談じゃない。こんな裁判、デタラメだ。

すると、検事役であるバティンが僕に近づいてきて、胸ぐらを掴みながら僕にハッキリと聞こえるように衝撃な事を話し始める。


「お前、なにか勘違いをしているのではないか?

誘拐犯という犯罪を犯した。確かにそれも大切だが……。問題は貴様が禁忌の森への侵入だ」


「禁忌の森への侵入……?」


「禁忌の森への侵入はA級犯罪者となる。言っただろう? この裁判で死罪かを決めると……。

お前の無罪は99.9%あり得ないんだよ!!!!」


じゃあつまり、僕は誘拐犯だからこうした罪にかけられているわけではないということか。

禁忌の森に入ったことが一番大事な問題で誘拐犯であるという疑いは二の次か。

あんな木々が動くような森にそこまでの価値があるとは僕には思えない。

あんな不思議で奇怪な森に……。


「…………あの禁忌の森になにがあるって言うんだよ!!」


僕がそう叫ぶと、バティンは僕の胸ぐらを更に強く締め付ける。彼女の腕に力が入る。

しかし、少し冷静になったのか。

彼女は僕の胸ぐらから手を離す。


「あの森に入ることは許しがないと大罪なんだよ。だが、お前が死罪になるのは貴様があの森で“干渉を受けたか与えたか”。大罪になるか死罪になるか。それが違いだ」


あの森で“干渉を受けたか与えたか”……?

それが大罪か死罪かの区別になる。

それならば、僕は胸を張って言える。僕は干渉を受けたり与えたりはしていないはずだ。

僕があの森で出会ったのはシトリーと化物とマルバスだけだった。

それ意外にはなんの干渉もしていないしされていな…………。


「まさか……」


それがこの左目だとしたら……。その干渉を受けた結果、僕の左目が何事もなかったかのように復活していたとしたら……。

あの時、左目を失った瞬間に聞こえた声が森からの干渉とすれば、僕は干渉を受けていることになる。

この左目があの森でのナニカとの干渉の結果で未来が見える左目になったとすれば、僕は干渉を受けていることになる。

左目が復活して未来が見えるようになった。

それはまさしく禁忌の森のナニカからの干渉ではないか。

冤罪ではない。有罪だ。


「なんだ? どうした? 何か思い当たる節でもあるのか?」


言えない。言えば死罪が確定してしまう。

正直に干渉があったなんて言えない。

黙秘権だ。黙秘権を有効活用するのだ。下手にしゃべったらボロが出てしまいそうな気がする。黙秘するのだ。これ以上は黙秘する。

クソッ、バティンが近くにいるせいでどんどん不安になっていく。


「…………」


だが、黙れば黙るほど僕は追い詰められていく。

バティンは僕が急に口を開かなくなった事を不審に思っているようだった。


「おい、どうした? 急に黙って?

先程までの威勢はどうしたんだ?」


言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。言えない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。


「なぁ…………もう認めちゃえよ」


すると、僕の不安をかき消すようにバティンは僕の耳元でささやく。誰にも気づかれないように……。僕にだけ聞こえるように……。


「安心しろ。認めさえすれば減刑はされる。死罪にはならない。なぁ、お前を守る逆転の手はもうないんだよ。隠してもどんどん死罪に近づいていくぞ。死罪にはしないから……。安心しろ。これ以上、傷つきたくないだろ?」


甘い誘惑。

そのバティンの言葉がどれ程僕の心に響いたか。一筋の逃げ道のように思われた。死罪という死の圧からの逃げ道。

言えば、もうこれ以上苦しむことはないのか。

このまま、逃げられるのなら……。


「ぼっぼっ僕は…………」


認めさえすれば、楽になれる。

この裁判からも解放される。

このまま、「僕がすべてやりました」と言えば終わる。

そうだ。後からちゃんとした証拠が見つかるのを待てばいいのだ。

僕が今死罪にさえならなければ、逆転の手はある。

今はこの死の圧から解放されたい。

重い。楽になりたい。この理不尽な裁判を終わらせるんだ。僕が僕自身で終わらせるんだ。


「異議があります!!!」


「……!?」


僕は自分の冤罪を認めようとしか考えられていなかった。そんな中でキユリーだけがまだ諦めていなかったのである。

【今回の成果】


・死刑か減刑かだよ


・追い詰められたよ

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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