9 ・呑天結界+未 戦②
十二死の未である巫女が現れた。僕らはこの神となった巫女を戦闘不能にしなければならないのだ。
僕は青き短刀を構えて巫女に突撃するつもりだ。
しかし、一歩前に立っている謎の高身長年齢上の女性が僕の前に手を出してそれを遮ってくる。
任せておけとでも言いたいのだろうか。僕はそう判断し、一歩後ろに下がる。
そして、謎の高身長年齢上の女性の真似をして、ついでにキユリーたちの前に手を出して進行を遮った。
さて、謎の高身長年齢上の女性と神となった巫女との戦闘が始まる。
「さぁて、また来てやったぜ!! クソガキ!!」
「あなたも熱狂的な信者ね。この参拝に何百回も来てくれるなんて」
「ふん、貴様の信者なんぞクソ喰らえだ。今宵こそ活動を終わりにさせてやる!!」
謎の高身長年齢上の女性はそう言って2丁の銃を構える。
狙いはもちろん神となった巫女の脳天だ。だが、彼女がそのまま2丁の銃をぶっぱなすというわけではなかった。
彼女が握った2丁の銃は詠唱もなしに一瞬で消え、そして瞬時に現れる。2丁ではなく1丁の状態で……。
「“増殖生銃オマエル”と圧救生銃アラディアの合わせ物。『増救生銃』」
謎の高身長年齢上の女性が武器を巫女に向ける。
~~~~~
一発の銃声が響き、銃弾がまるで巫女を捕獲するスパイダーネットのような配置となって発射される。6つの銃弾の中に本物は1つしかない。
なので、それを防ぐには本物を当てて逃げるか、後方に避けるしかない。
だが、巫女はその場から動くことなく立ち尽くしている。
巫女に複数の銃弾が当たる寸前。
「……アはッ」
突然、巫女の目の前にモコモコの綿のような物体が現れる。
それは毛。羊の毛のような防御物体が巫女の肉体を銃弾から守ったのである。
「これが『神の羊毛』。無敵で完璧な私の盾よ」
銃弾はモコモコの物体によって、巫女を貫くことが出来ずそのまま地面に落ちる。
しかし、そうなるのは謎の高身長年齢上の女性にも想定済みだった。
「……まだまだッ!!」
いつの間にか巫女の背後にいた彼女は、新しい武器を持ってそれを巫女にぶち当てる。
「“大超生剣ミカエル”と“野心生爆撃弾ハアイア”の組み合わせだ!!」
彼女の新しい武器が巫女の肉体に当たると、それを合図に爆発。
その威力は巫女への爆風で巫女の本殿も全壊するほど凄まじい威力であった。
だが、それでも巫女は殺せない。
巫女の防御物体は間に合うが、それでも勢いは殺せずに、巫女は吹き飛ばされてしまう。
「とっとと」
巫女は吹き飛ばされてもバランスを崩さずに着地。
そこをすかさず謎の高身長年齢上の女性が狙う。
巫女が着地した瞬間、巫女の着地した地面が爆発し、さらに下からアッパーカットのように拳が巫女の顔面にヒットしてそのまま突き上げたのだ。
「“義徳生拳アサリア”と“大地命生仕掛アリエル”。『義地生拳仕掛』。吹っ飛びな」
結果、巫女は空高く舞い上がる。
これでは巫女は自由に移動することが出来ない。つまり逃げるにも逃げ場がないのである。
「さて、ぶっぱなす!!」
最後のトドメ。
謎の高身長年齢上の女性が合図をすると、景色が一瞬にして変化した。
空は赤い。大地は赤い。そこはまるで異界。
「『呑天結界……』」
彼女はこの空間を一瞬にして作り上げたのである。巫女の対して彼女の有利なフィールドを空間ごと召喚したのである。
それは付喪人の術では到底叶わない所業。それを彼女はやってのけたのである。
謎の高身長年齢上の女性がこの空間の名を告げる。
「『……混合冥王撩乱』」
その瞬間から、空間は巫女を敵視する。
彼女の周りに突然現れるのは無数の武器たち。その数はもう数えたくないほどたくさんの数である。その武器が鰯の群れのように集まる。それはまるで武器たちで形成された巨大な槍のよう。
無数の武器の群れが空高くから落ちてくる神となった巫女に向けて放たれる。
落ちてくる巫女と衝突していく武器の群れ。
その中から聞こえてくるのは肉を切り裂き骨を刻む音と巫女の断末魔。
謎の高身長年齢上の女性の頭上からまるで雨のように降り注いでくる巫女の血。
「やった……やったぞ。ついにオレは巫女に勝った。数年の敗北からの解放。オレはやり遂げたんだ。オレがやり遂げたんだ。今回こそ勝った。勝った。勝った。勝った。勝った。
アハッ。アハッ。アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
~~~~~~~~
闘いは終わった。
「…………なにやってんだよ」
僕には急展開すぎて目の前の光景が信じられていない。
僕はただの傍観者だった。
「…………」
闘いの勝者の1人が境内を歩く足音が聞こえてくる。
僕は駆け寄ろうとも思ったが、思うように体が動かない。いや、動けないと言った方が正しいのかもしれない。
「謎の高身長年齢上の女性……」
「…………ッ」
勝者はニヤリと笑みを浮かべる。そして敗者に近づく。もう動くことの出来ない敗者にソッと近づいてきたのだ。
敗者は意識を取り戻す。そして敗者は自分が負けたことを理解する。
「ッ? オレは……」
「へぇー、これ増救生銃って言うんだね。かっこいいじゃん。それじゃあ、また来てね」
巫女が手にしていたのは。
巫女はそれを謎の高身長年齢上の女性の胸元に向けて撃つ。
もちろん、銃弾は謎の高身長年齢上の女性の心臓を貫き、彼女は死亡してしまう。
希望が絶望へと変わったような表情で謎の高身長年齢上の女性は射殺された。
何もできなかった。何もしてやれなかった。
謎の高身長年齢上の女性もキユリーも僕も最初から一歩も変わらずに動いていなかったのである。




