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8 ・天山エーインヘリュル+未 戦①

 天山“エーインヘリュル”。

それは夢の中の国にあるとされている山のことである。

その頂上は雲よりも高い位置に達しており、神々のいる空に最も近いとされている。永遠に続くように思えてしまう階段を一直線に上っていくと……。

神となった巫女が暮らしている山の頂上に到達できるのだ。


「何をしてるんっすか!! 早く早く。置いていっちゃいますよ」


「そうですよ。フレンドちゃんの言う通りです。2人とも遅いですよ」


若者2人。フレンドちゃんを先頭にして、その後ろをキユリーが歩く。

2人は何度も振り返りながら、僕らとの距離が離れすぎないようにと注意してくれているのだろう。

そんな2人よりも600段ほど下。

そこで僕らは必死に足を上へ上へと進めていく。


「ガキどもは、元気がいいな。羨まよ」


「本気でわかる。ほんとにそれな」


キユリーとフレンドちゃんを見上げながら必死に追いかけているのが僕と謎の高身長年齢上の女性。

先程登山を行う前に、プルフラスはフレンドちゃんと少し話をした後、どこかへ立ち去ってしまった。おそらく闘いには参加しないのだろう。まぁ、プルフラスがいなくなった理由を考えるつもりもない。

僕らの目的は神となった巫女を再起不能にすること。そして元の世界に戻ることである。


「なぁ、謎の高身長年齢上の女性」


「年齢上……そう言われるとなんかめっちゃ年取ってるみたいに思われるかもしれないがオレは20代なんだからな」


「知ってるさ。なぁ、あんたは元の世界に帰ったら何がしたいんだ?」


この質問を彼女にする理由も意味も僕にはないのだが。

これがもう謎の高身長年齢上の女性との最後の会話の機会だ。目的が達成されたら僕はもう謎の高身長年齢上の女性とは会えなくなる可能性が高い。

最初は彼女のことをヤバイやつだと思っていたから、距離をとって避けようとしていたけれど。

それでも、今後会えなくなると思うと最後くらいは良い関係性を持っていたいと思ったのだ。

だから、話題の見つけにくさも理由にあり、僕はこの質問を行ったのである。


「フッ、そんなことか。良いだろう。

オレにはな……野望があったんだ。その野望を叶える。

世界に、天下に、オレの名を拡げる。オレはあらゆる物の上に立つ。

そして、ちゃんと見てもらうんだ。オレの努力ってやつをな」


「その野望を叶えるための仲間を待たせていたから。早く合流しようとあなたは一生懸命闘い続けたってことか」


「ああ、そうだ。オレのたった1人の自慢の妹なんだ。オレは妹のお陰で今も前に進めている」


「なるほど、妹ね……」


ふとその話を聞いている最中に、謎の高身長年齢上の女性とマルバスの姿が重なったように感じた。

決戦前に愛する人のことを思い出すなんて初めての経験だ。

きっと僕はマルバスに会いたがっているのかもしれない。

帰ったらマルバスにプルフラスや謎の高身長年齢上の女性の話をしてあげよう。

……なんて思ってしまった。僕らが生きて帰れる保証もないのに。


「なんだ。貴様、オレとの別れが恋しくなったのか?」


「なッ!?」


「急に質問などするからだ。

オレとお前は目的が一致しただけの関係。くだらん感情など持たぬことだな」


「別にそんなの持ってないぞ!!

ただ気になっただけだ。ほら、何度も挑む理由とかあっただろうからな」


「まぁ無いならよい。その感情を持って挑むと返り討ちだぞ。戦闘中はオレをいつ切り捨てても構わぬ。どちらかが巫女を殺せばよいのだ。本番ではくだらん感情をオレに向けてくるなよ」


「今も向けてない。本番も向けない。わかってる、わかってるよ」


僕の感情が謎の高身長年齢上の女性に見透かされていたことが恥ずかしくなってきた。

なので、僕はプルフラスからもらったフード付きのローブを深く被り、彼女から離れるようにペースをあげて階段を上る。

このフード付きのローブはプルフラスと別れる時に「顔を隠しておきなさい」と言われてもらった物だ。

正直、こんな風にプルフラスからのローブが顔を隠すのに役に立つとは思っていなかったが……。

まさか、この時のためにプルフラスはフード付きのローブを与えてくれたってわけじゃないはずだ。





────────────────

 キラキラ、ピカピカ、ゴーンゴン!!


山の頂上では星空が輝いていた。

ほんとうに美しい星空である。雲ひとつない一面の星空だ。

その星空の下に建てられていたのは神社。僕らが足を踏み入れたのは神社の境内である。

僕らが足を境内に踏み入れた瞬間、神社の本殿の扉が開く。本殿の中には1人の人影。


「ハッピーニューデイ!!」


本殿の中から姿を見せた人物は自分自身を大きく見せるように体全体で大の字になって叫ぶ。

まるでテンションが上がりきっている子供だ。ハイテンション笑顔の謎の人物。

だが、あの人物から流れ出てくる匂いは十二死の匂いだ。


「今日は私のために参拝に来てくれてありがとうー!!

今日も盛り上がろうねー!!」


そう言って現れた少女は試着していた七つの目が描かれた黒いローブを脱ぎ捨てる。

その人物は黄色い瞳を持ち、それ以外は全身が真っ白。髪の毛も肌も真っ白だ。

だが、それは彼女を人間として見た話。人間として違う点は羊のような角が頭に2つ生えていることである。


「さて、久しぶりの参拝ライブが始まるわ。辛抱した甲斐がありました。さて、参拝の主役はこの私『十二死の未』!!

鐘を鳴らすその時まで!!

さぁ、今宵の夜宴を楽しみましょーー!!」


十二死の未は叫ぶ。それは星空の下で行われるライブ会場に立っているアイドルのように見えた。

そんな少女のことを少し見覚えがあるような気がしてきた僕だったのだが。もしかしたら、これはただの気のせいなのかもしれない。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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