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6 ・予知+異端なるモノ

 僕がキユリーとのスキンシップ……コミュニケーションを終えた頃。

部屋の窓からフレンドちゃんが僕らに向かって声をかけてきた。


「ねぇフレンド。自称天才が言うことでは、もうすぐ出発らしいですよ」


どうやら、もうすぐ出発らしい。目的地は夢の中の国で神となった巫女のいる場所。

目的は神となった巫女の戦闘不能化。

……それが今のところ分かっている事だ。

けれど、ちゃんとした作戦も考えずに本当にうまくいくのだろうか?

神となった巫女っていうのは、あの謎の高身長年齢上の女性よりも強いらしい。

あの謎の高身長年齢上の女性の強さがどれくらいかは分からないが、きっと彼女も強い方の部類にはいるのだろう……。

そんな事を呑気に考えていた僕であったが、突然呑気なことを言ってはいられない状況がやって来た。

突然、地鳴りのような音が地面を走ったのだ。


「なんだ地震か!?」


僕はキユリーを守るためにキユリーを庇うように抱きつく。強く抱きつく。

けれど、さいわい、地震は起きなかった。


「フグヴグフグ?」


「抱きつきすぎて何言ってるかわからないけどかわいいじゃんキユリー」


「フグヴグフググ……プハッ!!

このまま殺す気ですか!!」


さすがにキユリーを庇うにも時間が長すぎたか。

それよりもいったいあの地鳴りのような物はなんだったのだろう?

夢の中の国なのに地震は起きてしまうものなのだろうか。


「…………派手にやってますね」


ふと部屋の窓からフレンドちゃんが呟く。何かが見えているのだろう。


「なんだフレンドちゃん。なにか見えるのかい?

見えるのなら僕にも教えてくれよ」


「…………フレンドの頼みならいいですけど。

西の方の大地がヤバイですね」


「そんなに遠くがよく見えるねフレンドちゃん。それで何がヤバイですねなのさ?」


「西の方の大地にあった山が1個消し飛んでます。しかも一撃。さすがですね。あの女性……」


「へー、山がね。は?」


山が消し飛んでます!? しかも一撃!?

正直、フレンドちゃんが言ったことを信じられない。

フレンドちゃんの口振り的には、おそらくあの謎の高身長年齢上の女性がやらかしたのだろう。

人を平気で撃ち殺す化物かと思っていたら、まさか山1つ消せる化物だったなんて……。

どういう方法で山1つを消し飛ばしたのか分からないが、おそらく消し飛んだ山も“神の鐘”とかいうので音が響けば元通り。

だから、彼女は山を練習台として消し飛ばしたのだ。

どうやら、僕らはとんでもない奴を味方にしているのかもしれない。

そう思った僕がホッと安心したのもつかの間、とある言葉を思い出す。

それは今注目している謎の高身長年齢上の女性がプルフラスに向かって発した言葉だ。

「簡単だと……!?

プルフラス、貴様は忘れているのではあるまいな。

オレでさえ数年かかっても倒せないあのクソガキだぞ!!」

その言葉がふと頭の中をよぎる。

つまり、山1つを消し飛ばした謎の高身長年齢上の女性が数年かかっても倒せない相手こそが……神となった巫女だ。

ああ、戦う前から戦意喪失しそうになってきた。





────

 “左目が疼く”

周囲を見渡すと、プルフラスが険しい表情で空を眺めていた。


「エリゴル君。すまない。天才の僕のミスだ。この際、謝っても謝りきれない。巫女を侮っていた。まさかここまで君の存在が巫女にとって大きかったのかを知らなかった」


「──────」


プルフラスの視線の先には空に巨大な黒雲が渦を巻くように広がっている。ただの黒雲というよりは深淵のような見た目だ。

そんな謎の黒雲が渦を巻くようにどんどん僕らの頭上を覆っていく。国中を覆っていく。

目を凝らして見ると、黒雲の中央付近には1人の少女……。おそらく、あれが神となった巫女なのだろう。

神となった巫女の体はまるで死体のように動くことなく、空へと昇っていく。

そして、その周囲には巨大な五色の未のような怪物が巫女を囲むようにまわり昇っていく。赤色青色緑色黄色茶色の五匹の未。巫女の周りを円を描くようにぐるぐると回っている。


『蠖シ繧画ー励∪縺舌l縲ょヵ繧画ー励∪縺舌l(彼ら気まぐれ。僕ら気まぐれ)』『ケテルセプルス縺ョ蟲ー縺後h繧薙〒繧九h(ケセルセプスの峰がよんでるよ)』『讒阪′辟。縺咲、セ縺ォ髯阪j遶九▽(槍が無き社に降り立つ)』

『蛯吶∴迚ゥ縺ォ縺ッ螂ス縺ソ縺後≠繧後h(備え物には好みがあれよ)』

『逡ェ蜿キ縺ッ邇九&縺セ縲ょスシ繧峨′邇九&縺セ(番号は王さま。彼らが王さま)』

『蜃コ莨壹▲縺ヲ蟋九∪繧狗焚遶ッ縺ョ荳也阜(出会って始まる異端の世界)』

『謇峨h髢九¢縲ゅケテルセプス縺ョ驕薙h(扉よ開け。ケセルセプスへの道よ)』


空の黒雲からこの世のものとは思えない声が大地へと落ちてくる。

その声を聴いたプルフラスは真剣な顔で僕に教えてくれた。


「降臨が始まる。異端ヘレシー……。それはこの世界では外れた異端なるモノ。思想を騙り自己で正そうとするモノだ。

君も知っているはずだ。ルイトボルト教の物語に出てくるだろう? 永乖の章での異端なるモノの存在……。これはその来訪の儀式さ」


異端。たしかアナクフスの書庫かどこかで見たような気がする文字だ。


「プルフラス。もうダメなのか?」


「ああ、どうにかできるモノでもない。神の助けでもないかぎりはどれも無駄に終わるのさ。もう全てが終わるのだよ」


プルフラスですら諦めている。

誰もが滅びへと向かう空を眺めている。

反抗することなく、誰もが静かに来訪の儀式を眺めているだけだ。


「…………ふざけるな」


絶望的な変えられない未来の中、僕はまだ反抗したいという意思を持っていた。

夢の中の国が終わるのを受け止めきれない。

異端が現れて全てが終わる?

そんなもの納得がいくわけがない。

僕には使命がある。僕には約束がある。僕には夢がある。

異端なるモノなんかに、全てを終わらせられてたまるか!!

巫女だって、救ってやらないと……。


「異端なんかに負けてられるか。まだ何か手が」


時間切れ……。




 巫女と5色の未は黒雲へと消え去り。

黒雲から大地へと光が射し込む。

さらに黒雲に現れた大きな1つ目。そしてその瞳の奥から涙のように1粒の液体が地上へと落ちてくる。

1粒の液体は地面に落ちていく最中、まるで赤子のような形へと変貌し、そのまま地面に激突。

1粒の液体が水溜まりのように広がると、そこから手のような物が出てきた。


「なんだ。あれは?」


プルフラスにも分からないナニカ。

ナニカは完全に形作り、立ち上がる。

そして、ナニカは一言。僕らの言語で一言呟いた。それが僕が聴いた最後の言葉となった。


『この地、6柱の王に捧げます』
















────







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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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